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~第四章~
71.サバスside ~魔術師育成学校3~
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期末試験の結果が掲示板に張り出された。
「あ!サバス!君、またトップだよ!いや~~凄いよね。入学してから一度だってその順位を下げたことがないもんな~~~」
「俺からしたらお前が十位以内っていうのが不思議だ」
「え!酷い!これでも地頭はいいんです~~~」
遅刻はするし、授業はサボる。
なのに成績は良い。
こいつの事だ。地道にコツコツやるタイプじゃない。予習や復習だってしないだろう。
「お前が本気を出して勉強すれば俺なんて直ぐに追い抜くさ」
「いやいや。ムリムリ」
「無理じゃないだろう?」
「……すげぇムチャぶりを言うねぇ……」
「そうか?」
「僕の魔力量知ってるでしょう?」
「ああ」
「知ってて言う?」
「ちょっと少ないだけだ。問題ない」
「問題、大有りだよ」
「……?」
「魔術師って何だかんだ言ったところで結局は魔力の多さがモノを言うんだ。人より少ない魔力量の僕じゃあ、頑張ったところでトップなんて取れっこないよ。精々五位くらいが関の山じゃない?」
世の中、『天才』という者は存在する。
俺の知る限り、その枠に居るのは『弟』だ。
だが、今まさにもう一人『天才』の枠に入る男がいる。
それがエヴァンだ。
生まれ持った『天賦の才』。
持たざる者の気持ちは彼等には永遠に分からないだろう。努力して努力して努力を積み重ねてもなお追いつけない距離。高すぎる壁。
ここに来る前。
俺は自由奔放だった。やりたい事だけやって。やりたくない事はやらない。母上との衝突は絶えなかった。弟は俺の反対で、『良い子ちゃん』だった。だから余計に反発したのかもしれない。今思うと、俺はそう振る舞っていたに過ぎなかった。
本当の意味で「自由奔放」だったのは弟の方だった。
皆から頼られてた。
嫌な言い方をすると接取されていた。
仕事を押し付けられていた。
傍目からは利用されているようにしか見えなかった。
だが本当は違う。
弟は、サビオは、苦に思ってなかった。
出来ない奴らに任せるよりも、自分がやった方が数倍早いことを知っていた。
出来ない奴らが仕事をするよりも、自分で全てやった方が遥かに効率がいい。
忙しいが、大したことじゃない。
逆に出来ない奴らは邪魔でしかない。二度手間させられるのはゴメンだと。
はっきりと聞いた訳じゃない。
それでもそんなニュアンス的な事を言っていた。
考え方が違うのか。
それとも能力の違いなのか。
俺は無意識に実力を発揮していく弟に虚勢を張っていただけだった。
最初から負けていた。
そして俺は無意識にそれが分っていたんだ。ただ認めたくなかっただけで。弟に対する劣等感を。
これが才能の違いって事だ。
良くも悪くもそれが今までの俺の人生の集大成で、ここに来て身に沁みて理解した。教師も生徒も俺を「天才だ」と持て囃す。本物を知らないからこそ言えるだけだ。知っていればそんな言葉は出てこない。
本当の『天才』は良くも悪くも他と一線を画す事を――――
「あ!サバス!君、またトップだよ!いや~~凄いよね。入学してから一度だってその順位を下げたことがないもんな~~~」
「俺からしたらお前が十位以内っていうのが不思議だ」
「え!酷い!これでも地頭はいいんです~~~」
遅刻はするし、授業はサボる。
なのに成績は良い。
こいつの事だ。地道にコツコツやるタイプじゃない。予習や復習だってしないだろう。
「お前が本気を出して勉強すれば俺なんて直ぐに追い抜くさ」
「いやいや。ムリムリ」
「無理じゃないだろう?」
「……すげぇムチャぶりを言うねぇ……」
「そうか?」
「僕の魔力量知ってるでしょう?」
「ああ」
「知ってて言う?」
「ちょっと少ないだけだ。問題ない」
「問題、大有りだよ」
「……?」
「魔術師って何だかんだ言ったところで結局は魔力の多さがモノを言うんだ。人より少ない魔力量の僕じゃあ、頑張ったところでトップなんて取れっこないよ。精々五位くらいが関の山じゃない?」
世の中、『天才』という者は存在する。
俺の知る限り、その枠に居るのは『弟』だ。
だが、今まさにもう一人『天才』の枠に入る男がいる。
それがエヴァンだ。
生まれ持った『天賦の才』。
持たざる者の気持ちは彼等には永遠に分からないだろう。努力して努力して努力を積み重ねてもなお追いつけない距離。高すぎる壁。
ここに来る前。
俺は自由奔放だった。やりたい事だけやって。やりたくない事はやらない。母上との衝突は絶えなかった。弟は俺の反対で、『良い子ちゃん』だった。だから余計に反発したのかもしれない。今思うと、俺はそう振る舞っていたに過ぎなかった。
本当の意味で「自由奔放」だったのは弟の方だった。
皆から頼られてた。
嫌な言い方をすると接取されていた。
仕事を押し付けられていた。
傍目からは利用されているようにしか見えなかった。
だが本当は違う。
弟は、サビオは、苦に思ってなかった。
出来ない奴らに任せるよりも、自分がやった方が数倍早いことを知っていた。
出来ない奴らが仕事をするよりも、自分で全てやった方が遥かに効率がいい。
忙しいが、大したことじゃない。
逆に出来ない奴らは邪魔でしかない。二度手間させられるのはゴメンだと。
はっきりと聞いた訳じゃない。
それでもそんなニュアンス的な事を言っていた。
考え方が違うのか。
それとも能力の違いなのか。
俺は無意識に実力を発揮していく弟に虚勢を張っていただけだった。
最初から負けていた。
そして俺は無意識にそれが分っていたんだ。ただ認めたくなかっただけで。弟に対する劣等感を。
これが才能の違いって事だ。
良くも悪くもそれが今までの俺の人生の集大成で、ここに来て身に沁みて理解した。教師も生徒も俺を「天才だ」と持て囃す。本物を知らないからこそ言えるだけだ。知っていればそんな言葉は出てこない。
本当の『天才』は良くも悪くも他と一線を画す事を――――
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