67 / 94
~第三章~
66.宰相(アンハルト王国)side
しおりを挟む
最悪だ。
自国の王女の結婚式だ。主だった貴族達は殆ど出席している。その中で醜態を晒すとは……。予定していた披露宴は当然、取りやめになった。
王女を有無を言わさず王宮に運び込んだが、自室で泣き叫ぶ。
「離してちょうだい!どうして邪魔するの!?彼が!サビオが私を助けに来たのに!!」
いや、サビオ殿は助けに来た訳ではない。その前に王女殿下がサビオ殿だと叫んだ相手は全くの別人だ。
「どうして愛し合う私達の邪魔をするの!!」
いや、愛してない。そんなものは過去も現在も未来にだってない!一人で騒いでいるだけではないか! しかし王女は止まらない。
「邪魔さえ入らなければ今頃私は……サビオと一緒になれたのに!結婚できたのにっ!!」
結婚?出来るか!馬鹿王女が!
勝手に結婚式の招待状をブランデン王国に送り付けただけで問題だというのに。その事を全く理解していない。
「サビオに会わせなさい!」
「それは出来ません」
「何故!?」
「何故?それはこちらがお聞きしたいですよ。王女殿下。何故、サビオ殿に会わせられると思うのですか?精神を病み廃人寸前の王女殿下は本人と認識できない状態なのですから」
「私は精神など病んでいません!」
「そういう事になっているのです。精神状態のおかしな王女殿下が結婚式の最中で錯乱した。それで、話はまとまっているんです」
「私は正常だわ!サビオは私を助けに、」
バキッ、バサッ!
思わず近くにあった文箱を蹴っ飛ばした。しかし、そのお陰で王女が「ひっ!?」と悲鳴を上げると大人しくなった。
「いいですか、王女殿下。よく聞いてください。殿下がサビオ殿と認識した男性はサビオ殿ではありません」
「嘘よ!!」
「本当です」
「彼はサビオよ!間違いないわ!私が愛する婚約者を見間違えるはずがなもの!!」
「……何をもって彼をサビオ殿だと認識したのでしょう?」
「だって!黒髪だったじゃない!!」
この王女は自分の婚約者だったサビオ殿を髪色で判断したのか?!なんて浅はかな。馬鹿げている。そもそも人を髪色で判断するのおかしいだろうが!
「王女殿下、確かにサビオ殿は黒檀のような黒髪ですが、王女殿下がサビオ殿だと思い込んだ相手は黒みを帯びた褐色髪の男でしたよ」
「そ、そんなことは……」
「瞳の色もそうです。サビオ殿は黒髪同様に夜のような漆黒の色。褐色髪の男は何色でしたか?茶色の目をしていた筈です」
「……」
「そもそも、自分を貶めた相手を愛する筈がないでしょう。会う事も不快に感じる筈です」
「そんなこと!」
「あります!」
そこで絶句する王女の思考回路が理解できない。
自分を殺そうとしたも同然の相手を愛する?何の冗談だ。よくもまぁ、そんな妄想ができるものだ。
「王女殿下、これ以上、恥を晒すのはおやめください」
私は溜息をつき、護衛に王女を夫の元に連れていくように指示をだした。
降嫁した王女は伯爵夫人となった。
新婚だというのに夫婦仲は冷え切っている。
王女は屋敷の自室に引きこもって出てこないらしい。
夫が寝室に侵入してこないように鍵をかけているとか。
白い結婚を狙っているのだろうか?
あの王女殿下の事だ。只単に夫と閨を共にしたくないだけだろう。もっとも例え白い結婚を継続しても離縁はできない。神殿側が決して認めないだろう。
自国の王女の結婚式だ。主だった貴族達は殆ど出席している。その中で醜態を晒すとは……。予定していた披露宴は当然、取りやめになった。
王女を有無を言わさず王宮に運び込んだが、自室で泣き叫ぶ。
「離してちょうだい!どうして邪魔するの!?彼が!サビオが私を助けに来たのに!!」
いや、サビオ殿は助けに来た訳ではない。その前に王女殿下がサビオ殿だと叫んだ相手は全くの別人だ。
「どうして愛し合う私達の邪魔をするの!!」
いや、愛してない。そんなものは過去も現在も未来にだってない!一人で騒いでいるだけではないか! しかし王女は止まらない。
「邪魔さえ入らなければ今頃私は……サビオと一緒になれたのに!結婚できたのにっ!!」
結婚?出来るか!馬鹿王女が!
勝手に結婚式の招待状をブランデン王国に送り付けただけで問題だというのに。その事を全く理解していない。
「サビオに会わせなさい!」
「それは出来ません」
「何故!?」
「何故?それはこちらがお聞きしたいですよ。王女殿下。何故、サビオ殿に会わせられると思うのですか?精神を病み廃人寸前の王女殿下は本人と認識できない状態なのですから」
「私は精神など病んでいません!」
「そういう事になっているのです。精神状態のおかしな王女殿下が結婚式の最中で錯乱した。それで、話はまとまっているんです」
「私は正常だわ!サビオは私を助けに、」
バキッ、バサッ!
思わず近くにあった文箱を蹴っ飛ばした。しかし、そのお陰で王女が「ひっ!?」と悲鳴を上げると大人しくなった。
「いいですか、王女殿下。よく聞いてください。殿下がサビオ殿と認識した男性はサビオ殿ではありません」
「嘘よ!!」
「本当です」
「彼はサビオよ!間違いないわ!私が愛する婚約者を見間違えるはずがなもの!!」
「……何をもって彼をサビオ殿だと認識したのでしょう?」
「だって!黒髪だったじゃない!!」
この王女は自分の婚約者だったサビオ殿を髪色で判断したのか?!なんて浅はかな。馬鹿げている。そもそも人を髪色で判断するのおかしいだろうが!
「王女殿下、確かにサビオ殿は黒檀のような黒髪ですが、王女殿下がサビオ殿だと思い込んだ相手は黒みを帯びた褐色髪の男でしたよ」
「そ、そんなことは……」
「瞳の色もそうです。サビオ殿は黒髪同様に夜のような漆黒の色。褐色髪の男は何色でしたか?茶色の目をしていた筈です」
「……」
「そもそも、自分を貶めた相手を愛する筈がないでしょう。会う事も不快に感じる筈です」
「そんなこと!」
「あります!」
そこで絶句する王女の思考回路が理解できない。
自分を殺そうとしたも同然の相手を愛する?何の冗談だ。よくもまぁ、そんな妄想ができるものだ。
「王女殿下、これ以上、恥を晒すのはおやめください」
私は溜息をつき、護衛に王女を夫の元に連れていくように指示をだした。
降嫁した王女は伯爵夫人となった。
新婚だというのに夫婦仲は冷え切っている。
王女は屋敷の自室に引きこもって出てこないらしい。
夫が寝室に侵入してこないように鍵をかけているとか。
白い結婚を狙っているのだろうか?
あの王女殿下の事だ。只単に夫と閨を共にしたくないだけだろう。もっとも例え白い結婚を継続しても離縁はできない。神殿側が決して認めないだろう。
110
お気に入りに追加
1,838
あなたにおすすめの小説
【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される
鈴木かなえ
恋愛
第17回恋愛小説大賞にエントリーしています。
レティシア・マークスは、『妖精姫』と呼ばれる社交界随一の美少女だが、実際は亡くなった前妻の子として家族からは虐げられていて、過去に起きたある出来事により男嫌いになってしまっていた。
社交界デビューしたレティシアは、家族から逃げるために条件にあう男を必死で探していた。
そんな時に目についたのが、女嫌いで有名な『氷血公爵』ことテオドール・エデルマン公爵だった。
レティシアは、自分自身と生まれた時から一緒にいるメイドと護衛を救うため、テオドールに決死の覚悟で取引をもちかける。
R18シーンがある場合、サブタイトルに※がつけてあります。
ムーンライトで公開してあるものを、少しずつ改稿しながら投稿していきます。
同僚の裏の顔
みつきみつか
BL
【R18】探偵事務所で働く二十五歳サラリーマン調査員のフジは、後輩シマと二人きりになるのを避けていた。尾行調査の待機時間に、暇つぶしと称してシマとしごき合うようになり、最近、行為がエスカレートしつつあったからだ。
ある夜、一週間の張りつき仕事に疲れて車で寝ていたフジのもとに、呼んでいないシマがやってくる。そしてモブ男女の野外セックス現場に出くわして覗き見をするうちに、シマが興奮してきて――。
◆要素◆
イケメン後輩執着S攻×ノンケ先輩流され受。
同じ職場。入社時期が違う同い年。
やや無理矢理です。
性描写等は※をつけます。全体的にR18。
現代BL / 執着攻 / イケメン攻 / 同い年 / 平凡受 / ノンケ受 / 無理矢理 / 言葉責め / 淫語 / フェラ(攻→受、受→攻)/ 快楽堕ち / カーセックス / 一人称 / etc
◆注意事項◆
J庭で頒布予定の同人誌用に書く予定の短編の試し読み版です。
モブ男女の絡みあり(主人公たちには絡みません)
受は童貞ですが攻は経験ありです
◆登場人物◆
フジ(藤) …受、25歳、160cm、平凡
シマ(水嶋) …攻、25歳、180cm、イケメン
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
【完】前世で種を疑われて処刑されたので、今世では全力で回避します。
112
恋愛
エリザベスは皇太子殿下の子を身籠った。産まれてくる我が子を待ち望んだ。だがある時、殿下に他の男と密通したと疑われ、弁解も虚しく即日処刑された。二十歳の春の事だった。
目覚めると、時を遡っていた。時を遡った以上、自分はやり直しの機会を与えられたのだと思った。皇太子殿下の妃に選ばれ、結ばれ、子を宿したのが運の尽きだった。
死にたくない。あんな最期になりたくない。
そんな未来に決してならないように、生きようと心に決めた。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる