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~第三章~

59.王女(元婚約者)side

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 下賤な男の妻になる。
 悪夢を見ているようだわ。

 嘆き悲しむ私に周囲は同情する。ええ、同情はしてくれるわ。でも助けてはくれない。国王であるお父様ですら!
 大臣達は怖い顔で「これは王女殿下が望んだことです」と繰り返すのみ!!

「ああ、王女殿下――お労しや!」という侍女達の声も私には耳障りでしかなかった。

 同情するのなら何とかして頂戴!!

「彼の妻になるなど嫌よ!!誰か何とかしなさい!!!」

 泣いて訴えたわ。
 ええ、王女という肩書を振りかざしてまで!!
 なのに誰も助けてくれない――いいえ。むしろ私の願いを叶えようと行動すると、宰相がその者を王宮から追放する始末!!
「おやめなさい!!」という私の言葉など誰も聞かなかったのだわ!

 そんな私のもとに、ある情報が入って来たのです。

 私の本当の婚約者。サビオ・パッツィーニ侯爵子息の情報が!!

 彼がブランデン王国で成功していると。
 立身出世の道を歩んでいると!!
 聞く処によると、ブランデン王国の国王陛下の信頼厚い右腕だというのです。
 サビオが……いいえ、かのお方がそのような高い地位に就いていたなんて――驚きと嬉しさがありましたわ。

 きっと、かのお方は私の為にその地位を得たのでしょう。
 私の婚約者に再びなるために!
 ええ、ええ、私はそう信じましたわ。だってそうとしか考えられませんもの!そうでなくてはおかしいでしょう!!

 ――なのに! ああ!!どうして?

何故、私の本来の夫になる彼と面会ができませんの?ブランデン王国へ行けないのです!? 

どうして!!








 ブランデン王国にいる彼宛てに何度も手紙を書きましたわ。
 なのに返事がありません。
 王国側からの返事はあるのに……何故でしょう?

 何度、ブランデン王国に問い合わせても「そのような者は存在しない」と言われて。私は泣きましたわ。
 ああ!私のサビオ様!! 貴方様はブランデン王国にいるというのに、どうして私に会いに来てくださらないのですか!? 

 今も私を愛していてくれている筈でしょう?

 ああ、きっとブランデン王国が貴方様を引き留めているのですね。ええ、解りますわ。優秀な貴方様を手放したくないのです! ああ、愛しい貴方様!!私が貴方のもとに行くまで待っていて頂戴。私は絶対に貴方様の元へ行って差し上げますから。
 私は貴方様のためなら国を出ても構いませんわ。
 貴方様がいるのなら何の憂いもありませんもの。二人で手を取り合い、共に歩みましょう! それが私の、いいえ、私達の幸せなのですから!!

 ああ、私の愛しい人――――……。


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