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~第三章~
53.王女(元婚約者)side
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あぁぁぁぁぁぁぁ!!
どうして……どうしてこんな事に……。
「お父様……どうしたらいいの?」
「王女……」
「わ、私はこんな事になるなんて思ってなかったのに!!!」
「そのように泣くのではない。可愛い顔だ台無しだ」
困り切った顔のお父様が必死に私を慰めてくださいます。
ですが!
これが嘆かずにはいられません!!
私と王家を騙していたサビオを追放して早数年。
当初は、新しい婚約者との素晴らしい日々が待っていると思っていたのです!
美しい婚約者は私の隣に立つのに相応しい。
お兄様も賛成なさって協力してくださいました。
『真の侯爵子息が市井にいるのは道理に反する』
『妖精は悪戯好きだ。彼らに罪はない。罪深いのは、他人の分際で侯爵家に居座っている人間だ』
『間違っているのなら正さなければならない』
『神殿のお墨付きだ。私達は正しい事をしているだけさ』
その言葉を信じたから……だから私は……。
なのに……なのに……彼の方が偽物だったなんて……。
わ、私は。私達、兄妹は本物の侯爵子息を国外追放してしまっただなんて……。
嘘よ……。
嘘だと誰か言って……。
「王女よ、お前は悪くない」
「お父様……」
「悪いのはいい加減な報告をしてきた神官だ。碌な調べをしなかった神殿のせいだ」
そうですわよね? 私がサビオを追い出したのは神官が間違いないと仰ったからですものね!?
私のせいではありませんわ!!
なのに周囲は私を責める様な視線ばかり……。
こんなに嘆き悲しんでいるのに誰も分かってくださらないんですもの。
本当に嫌になってしまいます。
そんな私の嘆きを知ってか知らずか……いえ絶対に知っていながらわざとでしょう。
宰相は淡々と告げてきます。
「王女殿下。ご報告が遅れましたが、殿下の婚約者は、我が娘であるセリアに無礼な真似をした上に手を上げようとしてきましたので拘束させていただきました」
「え?」
「よって現在、地下牢に投獄しております」
「そ、それは一体どういうことですの?」
何がどうしてそんな事になっているのですか!!?
そんな話は聞いていません!!!
「罪人は数日間の投獄だけです」
「そんな事を聞いているのではありません!!!」
「王女殿下の婚約者という立場を考慮し、軽めにしておりますので御安心ください。本来なら不敬罪で処罰しても良かったのですが、仮にも侯爵子息。その上、いずれ爵位を授かり王族を妻に貰う身ですからね。こちらも幾分か配慮しております」
「あ……な、なにを言って……」
どういうことですの!?
あの男との婚約は解消する筈でしょう!!
だって彼は偽物!
高貴な血筋ではないと証明されてしまったのですから!!!
「さ、宰相……貴男は一体何を言って……」
「ん?どうかなさいましたか?王女殿下」
「わ、私が……」
「未来の夫に傷がつくとお考えなら心配は無用ですよ。如何に名門貴族とはいえ、罪を犯せば罰せられる。これは今までになかった事です。貴族達の引き締めにもなり、民の信頼も得られて良いこと尽くめです。地に落ちた王家の威信も少しは回復するでしょう」
この宰相は何を言いたいのでしょうか。
ただでさえ混乱している頭ではよく分かりません。でも何かとんでもない事が起こっている気がします。
それはとても恐ろしい事に……。
私は思わず震えてしまいました。
そんな私に気付いたのか、気付いていないのか……宰相は優しく微笑んで来ます。
「王家は身内であっても公平に処罰すると国中に示されたのです。実に素晴らしい事でございます」
その笑みはまるで天使のように慈愛に満ちた笑顔。
けれど私にとっては悪魔のそれにしか見えませんでした。
そうして、私と偽物との婚約は解消される事はなかったのです。
どうして……どうしてこんな事に……。
「お父様……どうしたらいいの?」
「王女……」
「わ、私はこんな事になるなんて思ってなかったのに!!!」
「そのように泣くのではない。可愛い顔だ台無しだ」
困り切った顔のお父様が必死に私を慰めてくださいます。
ですが!
これが嘆かずにはいられません!!
私と王家を騙していたサビオを追放して早数年。
当初は、新しい婚約者との素晴らしい日々が待っていると思っていたのです!
美しい婚約者は私の隣に立つのに相応しい。
お兄様も賛成なさって協力してくださいました。
『真の侯爵子息が市井にいるのは道理に反する』
『妖精は悪戯好きだ。彼らに罪はない。罪深いのは、他人の分際で侯爵家に居座っている人間だ』
『間違っているのなら正さなければならない』
『神殿のお墨付きだ。私達は正しい事をしているだけさ』
その言葉を信じたから……だから私は……。
なのに……なのに……彼の方が偽物だったなんて……。
わ、私は。私達、兄妹は本物の侯爵子息を国外追放してしまっただなんて……。
嘘よ……。
嘘だと誰か言って……。
「王女よ、お前は悪くない」
「お父様……」
「悪いのはいい加減な報告をしてきた神官だ。碌な調べをしなかった神殿のせいだ」
そうですわよね? 私がサビオを追い出したのは神官が間違いないと仰ったからですものね!?
私のせいではありませんわ!!
なのに周囲は私を責める様な視線ばかり……。
こんなに嘆き悲しんでいるのに誰も分かってくださらないんですもの。
本当に嫌になってしまいます。
そんな私の嘆きを知ってか知らずか……いえ絶対に知っていながらわざとでしょう。
宰相は淡々と告げてきます。
「王女殿下。ご報告が遅れましたが、殿下の婚約者は、我が娘であるセリアに無礼な真似をした上に手を上げようとしてきましたので拘束させていただきました」
「え?」
「よって現在、地下牢に投獄しております」
「そ、それは一体どういうことですの?」
何がどうしてそんな事になっているのですか!!?
そんな話は聞いていません!!!
「罪人は数日間の投獄だけです」
「そんな事を聞いているのではありません!!!」
「王女殿下の婚約者という立場を考慮し、軽めにしておりますので御安心ください。本来なら不敬罪で処罰しても良かったのですが、仮にも侯爵子息。その上、いずれ爵位を授かり王族を妻に貰う身ですからね。こちらも幾分か配慮しております」
「あ……な、なにを言って……」
どういうことですの!?
あの男との婚約は解消する筈でしょう!!
だって彼は偽物!
高貴な血筋ではないと証明されてしまったのですから!!!
「さ、宰相……貴男は一体何を言って……」
「ん?どうかなさいましたか?王女殿下」
「わ、私が……」
「未来の夫に傷がつくとお考えなら心配は無用ですよ。如何に名門貴族とはいえ、罪を犯せば罰せられる。これは今までになかった事です。貴族達の引き締めにもなり、民の信頼も得られて良いこと尽くめです。地に落ちた王家の威信も少しは回復するでしょう」
この宰相は何を言いたいのでしょうか。
ただでさえ混乱している頭ではよく分かりません。でも何かとんでもない事が起こっている気がします。
それはとても恐ろしい事に……。
私は思わず震えてしまいました。
そんな私に気付いたのか、気付いていないのか……宰相は優しく微笑んで来ます。
「王家は身内であっても公平に処罰すると国中に示されたのです。実に素晴らしい事でございます」
その笑みはまるで天使のように慈愛に満ちた笑顔。
けれど私にとっては悪魔のそれにしか見えませんでした。
そうして、私と偽物との婚約は解消される事はなかったのです。
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