上 下
50 / 94
~第三章~

49.家族関係1

しおりを挟む
「面白い事になっているぞ」

 国王兼友人が、ある情報を持ってきてくれた。
 情報と言うよりも極秘の手紙と資料だが。

「どうやら『本物』は『偽物』だったらしい」

「はっ!?」

 手紙は父……元父からだった。

「パッツィーニ侯爵は疑っていたようで、密かに調べていたそうだ」

「……」

「その結果、『偽物』と判明した」


 …………どういうこと?

 僕の気持ちを置き去りにして目の前にいる国王は実に楽しそうに笑っている。


 手紙の内容はこうだ。

 元々、父上は『本物の次男』を疑っていた。
 容姿はパッツィーニ侯爵家の特徴を持っているものの、魔力量が非常に少ない。どうも実子とは思えない。他人の空似の赤の他人と言われた方が納得する。
 それは兄も同じだったそうだ。
 最初は『実の弟』と可愛がっていたそうだが、段々と疎ましくなっていったそうだ。
 どうしても違和感が拭えなくなってきたそうだ。

 だからと言うべきか、『本物の次男』と調査を個人的に進めていったそうだ。
 極秘捜査を行ったのは王家に怪しまれない為と言うのもあるが、それ以上に、『本物の次男』を見つけ出してきた神官に気付かれないようにする目的もあったそうだ。

 その結果、偽物と判明したと言う訳だ。


「面白いのはそれだけではないぞ。サビオが侯爵家の『本物の次男』である事も判明した」

「え……?」

「ははははっ!知らなかったのか!」

「いやだって……」

 そんなの知らないよ。
 だって「お前は偽物だ」と言われて追い出されたんだから。

「まぁいい。そこでだ、サビオには今現在、二つの選択肢がある」

 国王は指を二本立てた。

「一つ。このままこの国で暮らす」

「はい」

「二つ。元の国に戻る」

「……」

「戻るなら護衛を付けるぞ。何せ、相手はお前を連れ戻そうと躍起になっているからな」

「あれだけ大々的に偽物だと処罰したのに?」

「ははっ!流石に怪しむか」

「まぁね」

「連れ戻そうとしているのは王族……この場合、国王だな」

「つまり、国王だけが僕を国に連れ戻そうとしていると?」

「そういうことだ」

「それって、他の人は反対しているって事でしょう?」

「ああ、他の重鎮達はこのまま偽物を本物として扱う方針で固まっている」

「……」

「さぁ、選べ」

 その条件では選択は一択だろう。

「残ります」

 僕は即答した。

「よろしい」

 国王は満足げに笑った。

 その後、詳しく聞けば「戻りたいと言われても危険だから止めろと言うしかなかった」と白状した。
 なんでも、僕を『偽物』と言い出し、『本物の次男』を用意したのは神官だ。
 神殿が何らかの関与をしていると父は疑っているらしい。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される

鈴木かなえ
恋愛
第17回恋愛小説大賞にエントリーしています。 レティシア・マークスは、『妖精姫』と呼ばれる社交界随一の美少女だが、実際は亡くなった前妻の子として家族からは虐げられていて、過去に起きたある出来事により男嫌いになってしまっていた。 社交界デビューしたレティシアは、家族から逃げるために条件にあう男を必死で探していた。 そんな時に目についたのが、女嫌いで有名な『氷血公爵』ことテオドール・エデルマン公爵だった。 レティシアは、自分自身と生まれた時から一緒にいるメイドと護衛を救うため、テオドールに決死の覚悟で取引をもちかける。 R18シーンがある場合、サブタイトルに※がつけてあります。 ムーンライトで公開してあるものを、少しずつ改稿しながら投稿していきます。

同僚の裏の顔

みつきみつか
BL
【R18】探偵事務所で働く二十五歳サラリーマン調査員のフジは、後輩シマと二人きりになるのを避けていた。尾行調査の待機時間に、暇つぶしと称してシマとしごき合うようになり、最近、行為がエスカレートしつつあったからだ。 ある夜、一週間の張りつき仕事に疲れて車で寝ていたフジのもとに、呼んでいないシマがやってくる。そしてモブ男女の野外セックス現場に出くわして覗き見をするうちに、シマが興奮してきて――。 ◆要素◆ イケメン後輩執着S攻×ノンケ先輩流され受。 同じ職場。入社時期が違う同い年。 やや無理矢理です。 性描写等は※をつけます。全体的にR18。  現代BL / 執着攻 / イケメン攻 / 同い年 / 平凡受 / ノンケ受 / 無理矢理 / 言葉責め / 淫語 / フェラ(攻→受、受→攻)/ 快楽堕ち / カーセックス / 一人称 / etc ◆注意事項◆ J庭で頒布予定の同人誌用に書く予定の短編の試し読み版です。 モブ男女の絡みあり(主人公たちには絡みません) 受は童貞ですが攻は経験ありです ◆登場人物◆ フジ(藤) …受、25歳、160cm、平凡 シマ(水嶋) …攻、25歳、180cm、イケメン

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

転生皇太子は、虐待され生命力を奪われた聖女を救い溺愛する。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

【R18】ファンタジー陵辱エロゲ世界にTS転生してしまった狐娘の冒険譚

みやび
ファンタジー
エロゲの世界に転生してしまった狐娘ちゃんが犯されたり犯されたりする話。

【完】前世で種を疑われて処刑されたので、今世では全力で回避します。

112
恋愛
エリザベスは皇太子殿下の子を身籠った。産まれてくる我が子を待ち望んだ。だがある時、殿下に他の男と密通したと疑われ、弁解も虚しく即日処刑された。二十歳の春の事だった。 目覚めると、時を遡っていた。時を遡った以上、自分はやり直しの機会を与えられたのだと思った。皇太子殿下の妃に選ばれ、結ばれ、子を宿したのが運の尽きだった。  死にたくない。あんな最期になりたくない。  そんな未来に決してならないように、生きようと心に決めた。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...