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~第二章~

39.とある王族side

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 妻が療養先で妙な連中に目を付けられたと部下から報告があった。

「どういう事だ?」

「はい、何でも村長の息子を筆頭とした者達が別邸付近を嗅ぎまわっていたようです」

 敷地内に無許可で立ち入ろうとしていたのを見かけたメイドや庭師達が止めようとしたり、気付いた護衛兵が追い払ったりして今の所大事には至っていないそうだが、このままではどうなるかわからないとの事だ。

 静かな場所だと聞いたから館を買ったというのに……何故こんな事に?
 私が頭を抱えていると部下の一人が耳寄りな情報を持ってくる。

「例の村の件ですが――」
 
 部下の話を聞き終わると、私は椅子から立ち上がる。
 この話を聞いてしまえば居ても立っても居られなかったからだ。

 とんでもない事になった。
 早急に妻をあの館から連れ出さなければ! そう思い至った私は急ぎ部下達に指示を出しながら、私自身も馬を駆って一路妻の居る町へと急行する。




 妻とは三年前に結婚した。いわゆる政略結婚だ。
 年齢と身分の関係で決められた結婚だった。
 私は第三王子で、妻は侯爵令嬢。
 王子と言っても上の二人が頗る優秀なため、私に王位が回って来る可能性は非常に低い。
 だがそれでも王の血を引いている事は事実なので、万が一にもその血筋を残す為にも私は婚姻する必要があると周囲が考えた結果だ。二番目の兄が聖職者になった事も関係している。まぁ、王位についている長兄に何かあった場合は還俗する事になるかもしれないらしいが……。
 ともかく、妻となった女性とはそれなりに良好な関係を築けている。
 元から体があまり丈夫ではなかった妻は、一年前に流産してから体調を崩しがちになっていた。医者に見せたが芳しい結果は得られず、ベッドから離れる事さえままならない有様だった。静かな場所での療養を勧められた。
 私達は立場ある身だ。
 無闇に流産を公表するのは憚られた。
 妻は周囲に伏せておく事を望んだし、それが良いと判断した。幸い妻の両親も兄達も、妻の意向を尊重する方向だったので問題はなかったのだが……まさかその事でこんな事態になるとは予想していなかった。

『ストレスというのを侮ってはなりません。お体に障りますよ』

 そう忠告してくれた医師の言葉を思い出して奥歯を強く噛み締めた。

 仕方なく、妻を郊外に療養に行かせた。丁度、郊外の片田舎に元貴族の屋敷があり、そこを購入した。のどかな土地だと聞いて。私も仕事を片付けて妻の側に行く予定であった。しかし仕事がなかなか終わらず、気付けば三ヶ月が経っていた。

 くそっ!!

 私は己の不甲斐なさと浅慮さを悔やみつつ馬を更に走らせる。
 妻は大丈夫だろうか?

  どうか無事であってくれ……っ!



 馬を走らせる事数時間。目的の町に辿り着いた頃にはすっかり夜となっていた。






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