6 / 94
~第一章~
6.仲間の恋
しおりを挟む
宿屋の主人ジャコモは田舎町では珍しい洗練された二十代後半の男だった。
元は王都生まれの王都育ち。
長身の色男で、何よりも話術に優れていた。
聞き上手の話上手。
それに彼はフェミニストだ。
女性の扱いに長けていた。
直接聞いた訳じゃない。
だが彼の女性への対応は大変スマートなもの。
恐らく、女性経験も豊富だろう。
僕では十年経ったとしても、あんな歯の浮くセリフを臆面もなく平然と言う事はできないと思った。
そんな彼は当然モテていた。
意外な事に複数の同時進行で付き合っても相手に刺される心配がない位にマメ男で、博愛主義。
宿屋の客が女ばかりだった理由を垣間見た。
そう、女客は全てジャコモの恋人たち。
そこにエル達三人が追加されたとしても誰も嫉妬することがない状態。
三人はアッという間にジャコモの恋人の一人に収まっていた。男性経験がない神殿育ちのエルと育ちが良すぎるアーミは別として、まさかレヴィまでジャコモのハーレムに加わるとは意外だった。
『初めての本気の恋よ!』
純愛だと言わんばかりのはしゃぎようだった事を思い出した。
恋愛に関して乙女な部分があったのかもしれない。
成り上がりっぽいレヴィは良いとしても、エルとアーミはある意味これから大変だろう。
神殿や貴族出身の女性は「貞淑」である事を求められるから。
まあ、ギルドで儲けた金があるから暫くの間は仕事しなくても大丈夫だ。その間にどうにかすればいいんじゃないのかな?
数えるのも馬鹿馬鹿しい。もしかすると他国にも現地妻がいそうな男と仲良くやれば良いと思う。
その男の本性がクズだろうと。
どこぞの間者の可能性があろうとも、だ。
「さて、最初は何処の国へ行こうか」
辻馬車に揺られながら目的地を考える。
旅の目的は、様々な国を見て回ることだ。
東西南北あらゆる場所を巡るつもりだ。
その為の準備は既に終えている。
まずは南に行ってみようか。
確か、あの国の港町には面白い風習があるって聞いたことがあるんだよね。
「うん、そうしよう!」
僕は行き先を決めた。
ワクワクするな。
どんな出会いが待っているのか楽しみだ!
ギルドでの半年も楽しかった。
最後の一ヶ月以外は。
あの宿屋は周辺住民にハブられていた。
宿の女たちは誰も気づかなかったようだけど。
僕だって、宿に泊まって十日間くらいだ。宿泊客が気付かなかったのも無理はない。ジャコモのハーレムに加わっていた女性たちは殆ど宿から出ない。朝っぱらから盛っているんだ。外の様子なんて全く気にしていなかった。それはエル達も同じ。一週間で男の手練手管に籠絡されて、すっかり骨抜きにされていたから仕方ない。
街は数年前まではのどかな田舎町に過ぎなかったらしい。
ジャコモが現れるまでは。
正確には、ジャコモ率いる旅芸人が田舎町の小さな宿に滞在した時からだった。
僕がなんでこんな裏情報を何故知っているのかというと、街の人に忠告されたからだ。
そう、あれは宿に泊まった翌日のこと――――
元は王都生まれの王都育ち。
長身の色男で、何よりも話術に優れていた。
聞き上手の話上手。
それに彼はフェミニストだ。
女性の扱いに長けていた。
直接聞いた訳じゃない。
だが彼の女性への対応は大変スマートなもの。
恐らく、女性経験も豊富だろう。
僕では十年経ったとしても、あんな歯の浮くセリフを臆面もなく平然と言う事はできないと思った。
そんな彼は当然モテていた。
意外な事に複数の同時進行で付き合っても相手に刺される心配がない位にマメ男で、博愛主義。
宿屋の客が女ばかりだった理由を垣間見た。
そう、女客は全てジャコモの恋人たち。
そこにエル達三人が追加されたとしても誰も嫉妬することがない状態。
三人はアッという間にジャコモの恋人の一人に収まっていた。男性経験がない神殿育ちのエルと育ちが良すぎるアーミは別として、まさかレヴィまでジャコモのハーレムに加わるとは意外だった。
『初めての本気の恋よ!』
純愛だと言わんばかりのはしゃぎようだった事を思い出した。
恋愛に関して乙女な部分があったのかもしれない。
成り上がりっぽいレヴィは良いとしても、エルとアーミはある意味これから大変だろう。
神殿や貴族出身の女性は「貞淑」である事を求められるから。
まあ、ギルドで儲けた金があるから暫くの間は仕事しなくても大丈夫だ。その間にどうにかすればいいんじゃないのかな?
数えるのも馬鹿馬鹿しい。もしかすると他国にも現地妻がいそうな男と仲良くやれば良いと思う。
その男の本性がクズだろうと。
どこぞの間者の可能性があろうとも、だ。
「さて、最初は何処の国へ行こうか」
辻馬車に揺られながら目的地を考える。
旅の目的は、様々な国を見て回ることだ。
東西南北あらゆる場所を巡るつもりだ。
その為の準備は既に終えている。
まずは南に行ってみようか。
確か、あの国の港町には面白い風習があるって聞いたことがあるんだよね。
「うん、そうしよう!」
僕は行き先を決めた。
ワクワクするな。
どんな出会いが待っているのか楽しみだ!
ギルドでの半年も楽しかった。
最後の一ヶ月以外は。
あの宿屋は周辺住民にハブられていた。
宿の女たちは誰も気づかなかったようだけど。
僕だって、宿に泊まって十日間くらいだ。宿泊客が気付かなかったのも無理はない。ジャコモのハーレムに加わっていた女性たちは殆ど宿から出ない。朝っぱらから盛っているんだ。外の様子なんて全く気にしていなかった。それはエル達も同じ。一週間で男の手練手管に籠絡されて、すっかり骨抜きにされていたから仕方ない。
街は数年前まではのどかな田舎町に過ぎなかったらしい。
ジャコモが現れるまでは。
正確には、ジャコモ率いる旅芸人が田舎町の小さな宿に滞在した時からだった。
僕がなんでこんな裏情報を何故知っているのかというと、街の人に忠告されたからだ。
そう、あれは宿に泊まった翌日のこと――――
89
お気に入りに追加
1,860
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
帰ってこい?私が聖女の娘だからですか?残念ですが、私はもう平民ですので 本編完結致しました
おいどんべい
ファンタジー
「ハッ出来損ないの女などいらん、お前との婚約は破棄させてもらう」
この国の第一王子であり元婚約者だったレルト様の言葉。
「王子に愛想つかれるとは、本当に出来損ないだな。我が娘よ」
血の繋がらない父の言葉。
それ以外にも沢山の人に出来損ないだと言われ続けて育ってきちゃった私ですがそんなに私はダメなのでしょうか?
そんな疑問を抱えながらも貴族として過ごしてきましたが、どうやらそれも今日までのようです。
てなわけで、これからは平民として、出来損ないなりの楽しい生活を送っていきたいと思います!
帰ってこい?もう私は平民なのであなた方とは関係ないですよ?
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
【完結】やり直しの人形姫、二度目は自由に生きていいですか?
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「俺の愛する女性を虐げたお前に、生きる道などない! 死んで贖え」
これが婚約者にもらった最後の言葉でした。
ジュベール国王太子アンドリューの婚約者、フォンテーヌ公爵令嬢コンスタンティナは冤罪で首を刎ねられた。
国王夫妻が知らぬ場で行われた断罪、王太子の浮気、公爵令嬢にかけられた冤罪。すべてが白日の元に晒されたとき、人々の祈りは女神に届いた。
やり直し――与えられた機会を最大限に活かすため、それぞれが独自に動き出す。
この場にいた王侯貴族すべてが記憶を持ったまま、時間を逆行した。人々はどんな未来を望むのか。互いの思惑と利害が入り混じる混沌の中、人形姫は幸せを掴む。
※ハッピーエンド確定
※多少、残酷なシーンがあります
2022/10/01 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過
2022/07/29 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過
2021/07/07 アルファポリス、HOT3位
2021/10/11 エブリスタ、ファンタジートレンド1位
2021/10/11 小説家になろう、ハイファンタジー日間28位
【表紙イラスト】伊藤知実さま(coconala.com/users/2630676)
【完結】2021/10/10
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
実家を追放された名家の三女は、薬師を目指します。~草を食べて生き残り、聖女になって実家を潰す~
juice
ファンタジー
過去に名家を誇った辺境貴族の生まれで貴族の三女として生まれたミラ。
しかし、才能に嫉妬した兄や姉に虐げられて、ついに家を追い出されてしまった。
彼女は森で草を食べて生き抜き、その時に食べた草がただの草ではなく、ポーションの原料だった。そうとは知らず高級な薬草を食べまくった結果、体にも異変が……。
知らないうちに高価な材料を集めていたことから、冒険者兼薬師見習いを始めるミラ。
新しい街で新しい生活を始めることになるのだが――。
新生活の中で、兄姉たちの嘘が次々と暴かれることに。
そして、聖女にまつわる、実家の兄姉が隠したとんでもない事実を知ることになる。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉
Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」
華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。
彼女の名はサブリーナ。
エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。
そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。
然もである。
公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。
一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。
趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。
そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。
「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。
ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。
拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる