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~番外編 鈴木夫妻の被害者~
1.安藤玲子side
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【鈴木グループの危機!!】
【グループ内企業の経営権を巡って内部抗争か?】
【鈴木グループ幹部の相次ぐ逮捕劇 御曹司の関与も!?】
【鈴木グループ、遂に倒産! 】
鈴木グループの倒産か……。
新聞の一面を飾っている大企業の終焉。
「ざまぁみろ」
新聞の見出しを見て私は思わず笑みをこぼした。
嘗て勤めていた会社の倒産を喜ぶのは私くらいじゃないだろうか。
それでも彼等のせいで人生を狂わされた人間は私以外にもいる筈だ。主に専務夫婦に……。
二十五年前――――
「離婚してくれ」
土下座して頼み込む秀一の姿に唖然とした。
帰ってきてそれはない。というか、そもそも何で離婚?
「しゅ、秀一……突然、離婚って言われても……」
「頼む!」
いやいや、「頼む」と言われてもね。
「……理由はなに?」
「そ、それは……」
「なにか理由があって言ってるんでしょう?」
私の追及に観念したのか、ぽつぽつと夫は経緯を話し出す。
話をまとめると、会社の重役の娘を妊娠させてしまったらしく、その女性から結婚を要求されている上に相手の両親からも責任を取って娘と結婚するように迫られているので離婚したい、ということだった。
呆れてものも言えないとはこのことだ。
「それって浮気よね?」
「魔が差したんだ!」
秀一の言い訳はこうだ。
仕事から帰ってきても私は子育てに忙しくて相手にしてくれない(当たり前でしょう!息子はまだ4歳なんだから!!)。
息子は何故か自分に懐かない。抱っこしようとすると嫌がるし泣かれる(それはそうでしょう。気まぐれに相手をする程度。しかも普段からコミュニケーションを取らないダメ親なんだから!)。
息子に私を取られたような気がして家に居ても疎外感を感じて仕方なかった(あんたが家事育児を全くしないからよ!)。
だから寂しくて、つい――――という理由だった。
そんなアホな理由で浮気するバカってこの世にいるんだ。そっちに驚いた。浮気する暇があるなら子育てを手伝え!
「最初は部長の娘だと知らなかったんだ」
例え、部長の娘じゃなくても手を出したらダメでしょうが!あんたは既婚者!!
詳しく聞けば、部長とは職場でもほとんど接点がなくて知らなかったと言う。そして偶然、部長の娘と二人きりで食事したのを皮切りにズルズルと。
「彼女が相談にのって欲しいって言ってきたんだ。だから……」
だからじゃないでしょ!
あんたは何やってんの!!
私は頭を抱えながら溜息をついた。
バカ過ぎる。
呆れてモノも言えない!
「それと――――」
まだ何かあるのか?と思った私は悪くないだろう。ここまでで十分お腹いっぱいなんだから。
「せ、専務夫妻が早く結婚しろって言ってって……」
「どうしてそこに専務夫妻が絡んでくるの?」
「そ、それが……」
秀一を締め上げたい衝動にかられた。
なんでも、専務夫妻と部長の娘は知り合いらしい。知り合いというよりも専務と部長の娘は小さい頃に遊んだ事がある間柄だとか。しかも専務夫妻の後輩にあたると……。
「どういうこと?」
「高校が同じなんだよ」
「ああ、そういう繋がり」
「専務夫妻を結婚式に呼ぶから部長が『娘と早く結婚しろ』って言うんだ」
要するに、引くに引けなくなってるってことね。まったく。
「頼む!別れてくれ!!」
頭を下げる秀一の姿は情けないの一言に尽きた。シリアスな場面なのになんだか聞いてるこっちが溜息が出るくらいに白々しく感じた。これほど中身のない土下座は中々見ないだろうとも思ったほどだ。
【グループ内企業の経営権を巡って内部抗争か?】
【鈴木グループ幹部の相次ぐ逮捕劇 御曹司の関与も!?】
【鈴木グループ、遂に倒産! 】
鈴木グループの倒産か……。
新聞の一面を飾っている大企業の終焉。
「ざまぁみろ」
新聞の見出しを見て私は思わず笑みをこぼした。
嘗て勤めていた会社の倒産を喜ぶのは私くらいじゃないだろうか。
それでも彼等のせいで人生を狂わされた人間は私以外にもいる筈だ。主に専務夫婦に……。
二十五年前――――
「離婚してくれ」
土下座して頼み込む秀一の姿に唖然とした。
帰ってきてそれはない。というか、そもそも何で離婚?
「しゅ、秀一……突然、離婚って言われても……」
「頼む!」
いやいや、「頼む」と言われてもね。
「……理由はなに?」
「そ、それは……」
「なにか理由があって言ってるんでしょう?」
私の追及に観念したのか、ぽつぽつと夫は経緯を話し出す。
話をまとめると、会社の重役の娘を妊娠させてしまったらしく、その女性から結婚を要求されている上に相手の両親からも責任を取って娘と結婚するように迫られているので離婚したい、ということだった。
呆れてものも言えないとはこのことだ。
「それって浮気よね?」
「魔が差したんだ!」
秀一の言い訳はこうだ。
仕事から帰ってきても私は子育てに忙しくて相手にしてくれない(当たり前でしょう!息子はまだ4歳なんだから!!)。
息子は何故か自分に懐かない。抱っこしようとすると嫌がるし泣かれる(それはそうでしょう。気まぐれに相手をする程度。しかも普段からコミュニケーションを取らないダメ親なんだから!)。
息子に私を取られたような気がして家に居ても疎外感を感じて仕方なかった(あんたが家事育児を全くしないからよ!)。
だから寂しくて、つい――――という理由だった。
そんなアホな理由で浮気するバカってこの世にいるんだ。そっちに驚いた。浮気する暇があるなら子育てを手伝え!
「最初は部長の娘だと知らなかったんだ」
例え、部長の娘じゃなくても手を出したらダメでしょうが!あんたは既婚者!!
詳しく聞けば、部長とは職場でもほとんど接点がなくて知らなかったと言う。そして偶然、部長の娘と二人きりで食事したのを皮切りにズルズルと。
「彼女が相談にのって欲しいって言ってきたんだ。だから……」
だからじゃないでしょ!
あんたは何やってんの!!
私は頭を抱えながら溜息をついた。
バカ過ぎる。
呆れてモノも言えない!
「それと――――」
まだ何かあるのか?と思った私は悪くないだろう。ここまでで十分お腹いっぱいなんだから。
「せ、専務夫妻が早く結婚しろって言ってって……」
「どうしてそこに専務夫妻が絡んでくるの?」
「そ、それが……」
秀一を締め上げたい衝動にかられた。
なんでも、専務夫妻と部長の娘は知り合いらしい。知り合いというよりも専務と部長の娘は小さい頃に遊んだ事がある間柄だとか。しかも専務夫妻の後輩にあたると……。
「どういうこと?」
「高校が同じなんだよ」
「ああ、そういう繋がり」
「専務夫妻を結婚式に呼ぶから部長が『娘と早く結婚しろ』って言うんだ」
要するに、引くに引けなくなってるってことね。まったく。
「頼む!別れてくれ!!」
頭を下げる秀一の姿は情けないの一言に尽きた。シリアスな場面なのになんだか聞いてるこっちが溜息が出るくらいに白々しく感じた。これほど中身のない土下座は中々見ないだろうとも思ったほどだ。
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