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~一度目~

23.浅田理事長side

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「先ほどのお嬢さんと同じように一般家庭出身で特待生として浅成学園に入学した女子生徒がいたとか。その学生は在学期間中に、とある企業の御曹司と恋に落ちてお付き合いなさったそうです。まぁ、誰が誰と恋をしようと、誰が誰とお付き合いしようとそれは個人の自由ですから、部外者の私がとやかく言う権利は全くありません。ですが、流石にのは如何なものでしょう?」


 大場夫人は調べたのだろう。
 この学園の過去を。
 隠してもいないからな…………あいつ等の事は。というよりも有名過ぎて隠す必要がないというかなんというか。ただ、こうやって第三者に言われると、確かに今回の件に似ている。多少の誤差はあれど……境遇は同じだ。

 特待生の女子と御曹司の恋――――言っておくが、早川は浮気なんて一切してないがな。鈴木一筋だ。そこのところもちゃんと言ってくれ!聞いてる奴らが勘違いするだろ!!…………怖くて口には出せないが……。


「将来を誓った相手との恋は危険なものですが、それ以上に魅力的なのかもしれませんね。んですから」


 ごくりと誰かの喉が鳴る音が聞こえた。
 室内を見回すと大場夫人を除く全員が顔から色を失い、呆然自失状態だ。


「二人の仲を邪魔する存在が居なくなった学園で多くの人に祝福された恋人同士になったそうですわ。そうして高校、大学と仲睦まじく過ごしていたにも拘わらず、二人は何故か結婚しませんでした。男性の方に婚約者がいたのなら解消すればいいだけの話しでしたのに何故かそれをしなかったみたいなんですよ。不思議ですね。まあ、学生時代に恋仲になってそのまま結婚するケースは稀だと聞きますが、生憎、私は見合い結婚ですからそこのところは今一つ理解できていないんです。どう思われますか?皆さん」

 最後ににっこりと笑った彼女に誰もが『凄み』というものを見た。
 石のように凍った空気を「コホン」という咳払い一つで終わらせると、何事も無かったかのように話しを進める。さっきの問いかけも答えが欲しくて聞いた訳ではないのだろう。


「それから時が流れ、女性の方が独り身のまま嘗ての恋人と再会して再び恋に落ちたそうですわ。もっともその時は既に男性は既婚者だったにも拘わらずに。そうして数年後に二人は晴れて夫婦になれたと聞いております。ですが不思議なことに、浮気をした二人が何故か『身分を超えた愛』『真実愛し合った二人』と報道されたと耳にしました。何故かしら?妻を裏切った男性が賞賛されるなんておかしいと思いませんか?女性も自分が一つの家庭を壊したと自覚もなく結婚できた喜びを取材陣に語っていたんですよ。ありえませんよね。ただ当時のメディアも『シンデレラストーリー』として取り上げていましたから、事情を知らない人達からすると憧れを抱くことだったんでしょうね。更に不思議なことに被害者の元奥様が何故か悪役の如く報道されていたんです。浮気をしたのがまるで奥様だと言わんばかりの三流記事もありましたわ。中にはフェイクニュースまであったのにはビックリしましたけど。ただ、そういった報道や噂の元、また出版会社の殆どがこちらの学園の卒業生が関係しているところ、というのが気になる事ですわね」


 ちらと大場夫人の視線が俺の方へ向いているような気がするが……俺には確認する勇気はなかった。


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