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~一度目~
9.陽向side
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「は?!なんだって?!」
「だから、不妊治療よ!」
「ふ、不妊治療……」
「そ!お義母さん、ず~~と、孫、孫、煩いじゃない?だから一度不妊外来行ってみない?」
「ふにん……がいらい……」
「うん」
「別に子供焦ってないが……」
「私だって焦ってないよ!焦ってるのは、お義母さん!」
晃司にそう言うと、疲れた顔をしてた。
「まだ早いだろ」
「もう!お義母さんは『早く孫の顔が見たい』なんてしょっちゅう言ってるのよ?孫がいないの、きっと寂しいのよ。晃司、私と一緒に頑張ってくれない?」
「おいおい……」
「お義父さんもね、一度調べてもらった方が良いんじゃないかって言い始めたんだよ」
「父さんまで……」
「うん。私も困るんだよね」
「何が?」
「だって何だか嫁いびりっぽいじゃない?」
「はっ!?嫁いびり?!」
「そう!ご近所さんにも何だか噂になってるっぽいし……」
「噂だと?」
「うん」
「どんな噂だ?」
私はお義母さんに話した内容を晃司にも話して聞かせた。
話していくうちにお義母さん同様にどんどん顔色が悪くなっていく。なんで?普通だよね?世間話の一種でしょ?一通り話すと、晃司は深い溜め息を吐いてる。
「それ、母さんにも話したのか?」
「勿論。聞きたがったから」
「そうか……。で、母さん何か言ってたか?」
「う~~ん。特になにも。今度一緒にお茶会に参加しませんか、って聞いてみたけど断られちゃった」
「……誘ったのか?母さんを」
「うん。お義母さんってこの家に長い事住んでるのにご近所付き合いしてなかったぽいし、今からでも仲良くしたらいいと思って」
「…………」
晃司は眉間にシワを寄せて私の話を聞いていた。どうしたんだろう。何か変な事言っちゃった?
「え、と。もしかしてダメだった?」
「いや、ダメじゃないが……」
「ご近所の人達もうちの話しを聞きたがってたし。お金持ちエリアの割には結構気さくなんだよね皆。いい人たちばかりだし。お義母さんもきっと仲良くなると思うの。一緒に暮らして思ったんだけど、この家ってご近所付き合いって全然やってないでしょ?私、驚いたんだよね。お義父さんとお義母さんもその事に全く気付いてないみたいだし。お茶会に参加して『鈴木家の若奥様だったんですか?』ってメチャクチャ驚かれちゃった」
「……そうか」
「これからはもっと積極的に地域行事にも参加して交流を深めていこうよ。地域の交流って大事だよ?」
「……」
あれ?晃司は無言で明後日の方向を向いてる。もしかして何か悩んでるのかも? 私はジッと黙って晃司を見つめ、ぽんぽんと腕を撫でてみた。そうすることで落ち着きを取り戻す人もいるよね。私が思ってる効果があったのか、晃司は「うん」と言いながら私を見返してきてくれた。
「陽向は人と仲良くなることが特技みたいなもんだからな。ここの住人も陽向なら快く受け入れられたんだろう」
「なんのこと?」
「こっちの話しさ。陽向の好きなようにすればいい。ただ、母さんはそういって行事ごとが苦手な人だからな。誘う必要はない」
「そうなの?」
「ああ、そうだ」
お義母さんはそう言ったタイプの人なのか。残念だな。一緒にご近所の行事に参加したかったのにな。私がシュンとしたら晃司がとても優しく頭を撫でてくれた。嬉しい。
まあ、結局のところ不妊外来へは通わない事にした。
晃司が面倒臭いとしかめっ面で呟いてるから、私も「そのうちでいいか」って気になる。晃司がいいならそれでいい。
そうして私と晃司は今まで通り二人のペースで生活していくことで一致した。
あ、いけない。
一回だけご近所さんの勧めで産婦人科に行ったことを話し忘れちゃった。ま、いっか!
「だから、不妊治療よ!」
「ふ、不妊治療……」
「そ!お義母さん、ず~~と、孫、孫、煩いじゃない?だから一度不妊外来行ってみない?」
「ふにん……がいらい……」
「うん」
「別に子供焦ってないが……」
「私だって焦ってないよ!焦ってるのは、お義母さん!」
晃司にそう言うと、疲れた顔をしてた。
「まだ早いだろ」
「もう!お義母さんは『早く孫の顔が見たい』なんてしょっちゅう言ってるのよ?孫がいないの、きっと寂しいのよ。晃司、私と一緒に頑張ってくれない?」
「おいおい……」
「お義父さんもね、一度調べてもらった方が良いんじゃないかって言い始めたんだよ」
「父さんまで……」
「うん。私も困るんだよね」
「何が?」
「だって何だか嫁いびりっぽいじゃない?」
「はっ!?嫁いびり?!」
「そう!ご近所さんにも何だか噂になってるっぽいし……」
「噂だと?」
「うん」
「どんな噂だ?」
私はお義母さんに話した内容を晃司にも話して聞かせた。
話していくうちにお義母さん同様にどんどん顔色が悪くなっていく。なんで?普通だよね?世間話の一種でしょ?一通り話すと、晃司は深い溜め息を吐いてる。
「それ、母さんにも話したのか?」
「勿論。聞きたがったから」
「そうか……。で、母さん何か言ってたか?」
「う~~ん。特になにも。今度一緒にお茶会に参加しませんか、って聞いてみたけど断られちゃった」
「……誘ったのか?母さんを」
「うん。お義母さんってこの家に長い事住んでるのにご近所付き合いしてなかったぽいし、今からでも仲良くしたらいいと思って」
「…………」
晃司は眉間にシワを寄せて私の話を聞いていた。どうしたんだろう。何か変な事言っちゃった?
「え、と。もしかしてダメだった?」
「いや、ダメじゃないが……」
「ご近所の人達もうちの話しを聞きたがってたし。お金持ちエリアの割には結構気さくなんだよね皆。いい人たちばかりだし。お義母さんもきっと仲良くなると思うの。一緒に暮らして思ったんだけど、この家ってご近所付き合いって全然やってないでしょ?私、驚いたんだよね。お義父さんとお義母さんもその事に全く気付いてないみたいだし。お茶会に参加して『鈴木家の若奥様だったんですか?』ってメチャクチャ驚かれちゃった」
「……そうか」
「これからはもっと積極的に地域行事にも参加して交流を深めていこうよ。地域の交流って大事だよ?」
「……」
あれ?晃司は無言で明後日の方向を向いてる。もしかして何か悩んでるのかも? 私はジッと黙って晃司を見つめ、ぽんぽんと腕を撫でてみた。そうすることで落ち着きを取り戻す人もいるよね。私が思ってる効果があったのか、晃司は「うん」と言いながら私を見返してきてくれた。
「陽向は人と仲良くなることが特技みたいなもんだからな。ここの住人も陽向なら快く受け入れられたんだろう」
「なんのこと?」
「こっちの話しさ。陽向の好きなようにすればいい。ただ、母さんはそういって行事ごとが苦手な人だからな。誘う必要はない」
「そうなの?」
「ああ、そうだ」
お義母さんはそう言ったタイプの人なのか。残念だな。一緒にご近所の行事に参加したかったのにな。私がシュンとしたら晃司がとても優しく頭を撫でてくれた。嬉しい。
まあ、結局のところ不妊外来へは通わない事にした。
晃司が面倒臭いとしかめっ面で呟いてるから、私も「そのうちでいいか」って気になる。晃司がいいならそれでいい。
そうして私と晃司は今まで通り二人のペースで生活していくことで一致した。
あ、いけない。
一回だけご近所さんの勧めで産婦人科に行ったことを話し忘れちゃった。ま、いっか!
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