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43.修side
しおりを挟む高校に進学してから疎遠になった陽ちゃん。
俺にとっては目新しい物ばかりの高校生活は圧倒されっぱなしで慣れるのに時間が掛かった。言い訳になるが、自分の事で精一杯だった。
だから知らなかった。
陽ちゃんに恋人がいた事も、それによって学校の風紀がおかしくなっていた事にも――――
俺の知っている陽ちゃんは天真爛漫で努力家だ。
友達から聞く陽ちゃんは別人だとしか言いようがなかった。
それからだ。
俺は同級生の会話を注視するようになったのは。
「まただわ」
「どうしたの?」
「鈴木先輩達よ」
「……困るわ」
「本当に。生徒会メンバーの方々だから注意できる人は限られてますものね」
「学校内で腕を組んだり手を握ったりと……余所でやれば宜しいのに」
「私達に見せつけているのでは?」
「あら?何のために?」
「自分は鈴木先輩の恋人だと」
「学生までの関係でしょうに」
「早川先輩、鈴木先輩に婚約者がいること知らないのかしら?」
「さぁ?」
驚いたことに相手の男は婚約者持ち。
高校生だろう?!
何時の時代だ!!!
世界が違う。
「仮に彼女が知っていたとしても『それがなに?』と言いそうだわ」
「確かに。あの様子ではね」
「注意した人が学園を追われたという話しもあるし……」
「私のクラス、転校する人が増えているのよ」
「それはどこも同じだと思うわ」
「私達もそろそろ考えないとね」
「えぇ、両親から留学を勧められたわ」
「この学園大丈夫かしら?」
「それを考えるのは私達ではないわ」
「学園長はいったい何を考えているのかしら?」
彼女達の会話に愕然とした。
そう言えば転校していったクラスメイトは数人いる。……皆、家の都合とかで……。アレは陽ちゃんのせいなのか?
陽ちゃんが遠く感じる。
俺はどちらかというと陽ちゃんより、その弟の大樹と仲が良かった。
大樹に言うべきか迷わなかった訳じゃない。それでも中学生の大樹に姉の恋愛事情を話す事はできなかった。難しい年頃だ。姉弟のいない俺だけど、自分に姉がいたとしてもそんなこと知りたいとは思わない。何しろ個人の問題だ。外野がとやかく言うことじゃないし、身内の恋愛なんて知りたいとは思わない。
生徒会に入って久しぶりに話す陽ちゃんは俺のよく知っている陽ちゃんだった。
だから思った。
友達は陽ちゃんの事を勘違いしているんだと。
噂は所詮、噂でしかない。
現に生徒会メンバーは陽ちゃんと鈴木先輩の仲を応援している。鈴木先輩から婚約者の話なんて聞いた事がなかった。それは他の生徒会メンバーも同じだった。陽ちゃんは楽しそうに生徒会の仕事をこなしている。成績もトップクラスだ。何処にでもやっかみはある。陽ちゃんを好きな人もいれば嫌いな人もいる。嫌っている一部の人間が心無い噂を流しているんだと。そう、本気で思っていた。
俺は知らな過ぎた。
この場合、知り過ぎていたから――と言うべきかもしれない。
幼馴染を知っていたから。
昔から天然で素直な性格だ。
世間一般では『良い子』の部類に入る。
でもそれが同年代にとって『良い子』とは限らない。
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