上 下
29 / 130

29.元夫達の現状2

しおりを挟む
 現在、鈴木グループは急速に傾きつつあるようです。

 まず、第一に中小企業が鈴木グループから手を引きました。
 如何に大企業であろうと、下請けを敵に回して今まで通りにやっていける筈がありません。鈴木グループは今までにない好条件を突きつけたようですが、社長達が頷くことはなかったそうです。


『仕事に私情は挟みたくはない。それでも限度というものがある』

『夫婦間の事や、男女の仲は他人がとやかく言うべきじゃないが、やり方ってものがあるだろう』

『鈴木の跡取りは常識ってもんが欠けているのかねぇ?それとも人の心ってものがないのかい?あんだけ尽くしてくれた奥さんを裏切るなんてありえない』

『聞くのも酷い醜聞は知っている。それを全部鵜呑みにした訳じゃない。こっちだって事実確認はしたよ。結果は噂以上に酷かったがなぁ』


 鈴木グループはまさか断られるとは思っていなかったのでしょう。
 金さえ払えば下請け業者は自分達に鈴木グループに尻尾を振ると思い込んでいたのです。そんな筈がありません。ああいった縁の下の力持ちの方々は義理人情に厚いですから。元夫を始め、鈴木家の人達はそういった人達に昔からあまり好かれていなかったようです。あの上から目線の物言いが良くなかったのでしょう。私もやんわりと注意した事がありましたが改善される事はありませんでした。

 中堅中小企業も次々と鈴木グループから手を引く企業が増えました。

 信用を第一とする企業は元夫達が考えるよりも多いのです。

 いずれにしても、彼らの再婚は早すぎました。
 これで数年経っていれば話は別だったでしょうに……。堪え性のない方はこれだから困りますわね。

 経営陣の中にはあからさまに嫌悪を露わにして鈴木の営業の者を追い出した方もいらっしゃったようです。
 そうですよね。そうなりますわよね。
 元夫の信用はゼロどころかマイナスです。
 結婚はいわば『契約』です。それを一方的に破棄した相手を信用するのは容易ではありません。鈴木家は「円満に離婚した」と言っていますが、慰謝料を支払った事を「円満に離婚した」と捉えている節がありますからね。そういった処がきっと透けて見えるのでしょう。

 企業としても、いつ自分達の会社を粗末に扱うか分からない相手と手を取り合いたくないと考えても不思議ではありません。
 それに、皆さま優秀ですからね。引く手あまたです。伊集院家の仲介がなくても引く手数多だったでしょう。

 このように企業が次々と手を引いた事で元夫達は内部を再構築しなければならなくなりました。それも新たな人財も引っ張ってくる必要があったわけですから、全てが後手に回った感がありますわね。
 そんな動きを週刊誌やTVで大きく報道しないわけがありません。
 ゴシップ記事としても大きく取り上げられ、面白おかしく話題にされました。元夫が激昂しているようですが、どうにも火に油を注ぐようで笑ってしまいます。

 流石の鈴木家も騒ぎがここまで大きくなるなど予想外だったようで、慌てているようですわ。
 事態の収拾が付けられず右往左往していると聞き及んでおります。

 困った鈴木会長達は、藁にも縋る想いで何故か伊集院家に助けを乞いに来たようです。
 何故ですの?

『伊集院家からの口添えさえあれば……ッ!』

 と、鈴木グループの会長夫妻が土下座をして懇願してきたそうですわ。
 どうしてそうなるのでしょうか?……本当に理解できませんわ!

 そもそも私達に助けを求められる立場だと思っていらっしゃるのですか!?

 まったく何を考えているのでしょう!
 

しおりを挟む
感想 372

あなたにおすすめの小説

公爵家の家族ができました。〜記憶を失くした少女は新たな場所で幸せに過ごす〜

ファンタジー
記憶を失くしたフィーは、怪我をして国境沿いの森で倒れていたところをウィスタリア公爵に助けてもらい保護される。 けれど、公爵家の次女フィーリアの大切なワンピースを意図せず着てしまい、双子のアルヴァートとリティシアを傷付けてしまう。 ウィスタリア公爵夫妻には五人の子どもがいたが、次女のフィーリアは病気で亡くなってしまっていたのだ。 大切なワンピースを着てしまったこと、フィーリアの愛称フィーと公爵夫妻から呼ばれたことなどから双子との確執ができてしまった。 子どもたちに受け入れられないまま王都にある本邸へと戻ることになってしまったフィーに、そのこじれた関係のせいでとある出来事が起きてしまう。 素性もわからないフィーに優しくしてくれるウィスタリア公爵夫妻と、心を開き始めた子どもたちにどこか後ろめたい気持ちを抱いてしまう。 それは夢の中で見た、フィーと同じ輝くような金色の髪をした男の子のことが気になっていたからだった。 夢の中で見た、金色の花びらが舞う花畑。 ペンダントの金に彫刻された花と水色の魔石。 自分のことをフィーと呼んだ、夢の中の男の子。 フィーにとって、それらは記憶を取り戻す唯一の手がかりだった。 夢で会った、金色の髪をした男の子との関係。 新たに出会う、友人たち。 再会した、大切な人。 そして成長するにつれ周りで起き始めた不可解なこと。 フィーはどのように公爵家で過ごしていくのか。 ★記憶を失くした代わりに前世を思い出した、ちょっとだけ感情豊かな少女が新たな家族の優しさに触れ、信頼できる友人に出会い、助け合い、そして忘れていた大切なものを取り戻そうとするお話です。 ※前世の記憶がありますが、転生のお話ではありません。 ※一話あたり二千文字前後となります。

【完】ええ!?わたし当て馬じゃ無いんですか!?

112
恋愛
ショーデ侯爵家の令嬢ルイーズは、王太子殿下の婚約者候補として、王宮に上がった。 目的は王太子の婚約者となること──でなく、父からの命で、リンドゲール侯爵家のシャルロット嬢を婚約者となるように手助けする。 助けが功を奏してか、最終候補にシャルロットが選ばれるが、特に何もしていないルイーズも何故か選ばれる。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】 私には婚約中の王子がいた。 ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。 そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。 次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。 目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。 名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。 ※他サイトでも投稿中

【完結済】政略結婚予定の婚約者同士である私たちの間に、愛なんてあるはずがありません!……よね?

鳴宮野々花@軍神騎士団長1月15日発売
恋愛
「どうせ互いに望まぬ政略結婚だ。結婚までは好きな男のことを自由に想い続けていればいい」「……あらそう。分かったわ」婚約が決まって以来初めて会った王立学園の入学式の日、私グレース・エイヴリー侯爵令嬢の婚約者となったレイモンド・ベイツ公爵令息は軽く笑ってあっさりとそう言った。仲良くやっていきたい気持ちはあったけど、なぜだか私は昔からレイモンドには嫌われていた。  そっちがそのつもりならまぁ仕方ない、と割り切る私。だけど学園生活を過ごすうちに少しずつ二人の関係が変わりはじめ…… ※※ファンタジーなご都合主義の世界観でお送りする学園もののお話です。史実に照らし合わせたりすると「??」となりますので、どうぞ広い心でお読みくださいませ。 ※※大したざまぁはない予定です。気持ちがすれ違ってしまっている二人のラブストーリーです。 ※この作品は小説家になろうにも投稿しています。

婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!

志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。 親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。 本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!

仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。 ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。 理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。 ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。 マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。 自室にて、過去の母の言葉を思い出す。 マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を… しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。 そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。 ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。 マリアは父親に願い出る。 家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが……… この話はフィクションです。 名前等は実際のものとなんら関係はありません。

前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。

真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。 一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。 侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。 二度目の人生。 リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。 「次は、私がエスターを幸せにする」 自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。

処理中です...