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22.とある女社長side

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 小学生。
 それも高学年に近づいていけば、男女の幼馴染なんて自然に離れていくものだわ。

 特に、私達の母校には対等に近い存在は少数ならいたから。
 疎遠、とまではいかない。
 学校は同じだけどクラスが違ったし、母に「将来必要になるから」と言われて習い事が増えたのも理由の一つだった。家族同士の交流も自ずと減っていったように思う。でも、完全に無くなったわけでもないし、会えば挨拶はきちんとしていた。
 それでも距離ができたのは確か。
 幼馴染なのは変わっていないけど、互いの変化を察するようになったのはそんな部分が関係していたのだろう。
 要するに私達は少しドライな幼馴染という間柄になっていた。

 そんな私達が再び幼馴染として交流するようになったきっかけが、陽向だった。


 同じ生徒会に属していても陽向がいなければ私達は昔のように交流しようとは考えなかったし、そもそも同じクラスになり友人関係として仲良くすることもなかったと思う。
 そして私は幼馴染に再び心を許していく中で、ある事に気づいていった。

 私の初恋は彼だった、と……。

 実らないだろう。報われる事など無いだろう。だって彼と陽向が惹かれ合っているのは分かっていたのだから。

 実ることは無い初恋。
 大切な親友。
 その二人へ向けた心の在処。

 私の初恋は、自覚した瞬間から告白や振られる等を全く想定しえないものだった。スタートをきることができないもの。
 だから二人の仲を応援した。






 お似合いの二人だった。

 だから……。
 私は心から二人の恋がうまくいくことを願った。

 二人の関係が羨ましかったからかもしれない。
 唯々眩しかった。そんな二人に私は憧れさえ抱いた。二人を護りたいとまで考えた。考えていたのは私だけじゃない。生徒会メンバーを始めとする多くの生徒達が二人の行く末が幸せであることを願っていると言っても良いくらいだったわ。
 だから妨害する者がいれば先回りした。

 私は自分の立場を利用した。
 生徒会メンバーの特権で二人を祝福するためのイベントを用意した。それはとても大きな物になったわ。賛同者が大勢いた事も功を奏した。勿論、私だけの力だけじゃ無理。生徒会全体を巻き込んだ。それでも私が中心になって、二人の門出を祝う。それだけに時間を使ったと言っても過言じゃなかった。でも、私は全く後悔はしていないし、満足感も感じていた程よ。

 陽向も鈴木君も喜んで、感謝の言葉まで言われた事を覚えているわ。
 感激屋の陽向は人目を憚る事なく泣いていたのもね。そんな彼女は誰よりも美しかったと断言できる。

 まるで御伽噺のような二人。
 本当に夢のような時間だった。私は、この時間を忘れない。

 これから先もずっと二人は幸せな時を過ごすのだと信じて疑わなかった。
 陽向は私達と同じようにこの学校の大学部に入ると言っているし。大学なら高校よりも外部生は多いから妨害する者は出てこない。

 生徒会メンバーの広瀬君なんか、「二人の仲を邪魔する奴らがいたらボコボコにしてやるよ!」と笑っていた。
 浅田君も「つまらん陰口をたたく奴らがいたら鉄拳制裁してやるよ。あ?暴力はダメだって?陽向は相変わらず真面目だな。ま、なら穏便に追放処分にしておいてやるよ!」と冗談を言っていたわ。
 皆、陽向と鈴木君の為に動いてくれた。

 この二人の間に入れる者など、誰一人いない。
 二人はこれからもずっと一緒。そう信じて疑って無かった――この時までは……。


 だから気付かなかった。
 同じ生徒会メンバーの榊原君が胡乱げな目をしていた事を。

 学校を去った生徒が一定数いる事を。
 その内の一人が榊原君で、彼はこの後、「留学」と言う形で学校を去った。
 榊原君が去った事で、何かから逃げるようにして学校を辞めていく生徒が何人も出ていた事を私は全く知らなかった。




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