14 / 130
14.大樹side
しおりを挟む
姉ちゃんが金持学校を受験すると言い出したのは受験ギリギリの時期だった。俺でさえ知ってる有名な学校だ。なんでそんな学校に行きたがるのか理解できなかった。そもそも金はどうするんだ?私立だろう?
『特待生は学費も入学金も何もかも免除なの!』
原因はそれか……。
ある意味、納得の理由だった。
そうじゃなけりゃ、ケチの姉ちゃんが行くわけないか。
『それだけじゃないの!指定の制服や鞄も全部タダ!しかも制服が可愛いんだよね!!』
そう言えば有名ブランドの新作だったな。
『それに奨学金の額が凄いの!しかも返却しなくていいんだって!凄くない?学年五位から落ちなきゃ問題ないのよ!!俄然ヤル気がでるよね?絶対特待生になってやる!!』
……もうなにもツッコめねぇ。金持学校の奨学金もだが、この勉強漬けの生活で成績をキープしてることが何より凄いわ。俺には無理。絶対に普通の人間には無理だわ。姉ちゃんが毎日必死に勉強して、見事学年一位になって特待生になった時は家族皆で褒め称えたのも記憶に懐かしい。しかも宣言通りに奨学金を返したくないからと、特待生に留まって勉強に日々取り組んでいた。奨学金の金額を知った時は驚いたな。だって一年間の授業費・交通費全て賄えて更に生活費と遊興費にも事欠かない金額だったからだ。金持学校恐るべし。
後から知った事だが、姉ちゃんは最初公立の進学校を第一希望にしてた。それを取り下げてまで金持ち学校を選んだ。
担任が熱心に進めていたらしい。
その学校の特待生になれば金に困らないし、担任も教師としての実績が付く。学校側にも箔が付くし、まさにWINーWINの関係だったらしい。金持学校の特待生という肩書きは強いとか何とか。姉ちゃんの弟と知って「姉弟ともに特待生」と意気込んでいたが、底辺の成績だと知って悪態をつかれた時に口走ってやがったからな、あの野郎!
今思えば、あの時止めておくべきだったんだ。「姉ちゃんに金持学校の校風は全く合わな」「他に良い学校は沢山ある」と――
本当に今更だ。
もっと姉ちゃんの学校生活を聞いておくんだった。金持ち学校での学生時代の事を。そしたら……そうしてたら、俺は……。後悔が襲ってくるのを感じる。
当時はおかしいと思わなかった。
姉ちゃんは勉強ができるけど、ガリ勉って訳じゃない。いつも机にかじりつくような事はしない。受験の時や試験期間中くらいだ。休日は普通に友達と遊びに出かける。ただ、一緒に出かけるのは中学時代からの友達だけ。金持ち学校の友達と何処かに出かけるなんて事は一度もなかった。
一度、聞いたことがある。
高校の友達と遊ばないのか?って――――
その時の姉ちゃんは何ともいい難い顔をしてた。楽天家の姉には珍しい表情だったのを覚えてる。だけど、その時の返事が思い出せない……。
『特待生は学費も入学金も何もかも免除なの!』
原因はそれか……。
ある意味、納得の理由だった。
そうじゃなけりゃ、ケチの姉ちゃんが行くわけないか。
『それだけじゃないの!指定の制服や鞄も全部タダ!しかも制服が可愛いんだよね!!』
そう言えば有名ブランドの新作だったな。
『それに奨学金の額が凄いの!しかも返却しなくていいんだって!凄くない?学年五位から落ちなきゃ問題ないのよ!!俄然ヤル気がでるよね?絶対特待生になってやる!!』
……もうなにもツッコめねぇ。金持学校の奨学金もだが、この勉強漬けの生活で成績をキープしてることが何より凄いわ。俺には無理。絶対に普通の人間には無理だわ。姉ちゃんが毎日必死に勉強して、見事学年一位になって特待生になった時は家族皆で褒め称えたのも記憶に懐かしい。しかも宣言通りに奨学金を返したくないからと、特待生に留まって勉強に日々取り組んでいた。奨学金の金額を知った時は驚いたな。だって一年間の授業費・交通費全て賄えて更に生活費と遊興費にも事欠かない金額だったからだ。金持学校恐るべし。
後から知った事だが、姉ちゃんは最初公立の進学校を第一希望にしてた。それを取り下げてまで金持ち学校を選んだ。
担任が熱心に進めていたらしい。
その学校の特待生になれば金に困らないし、担任も教師としての実績が付く。学校側にも箔が付くし、まさにWINーWINの関係だったらしい。金持学校の特待生という肩書きは強いとか何とか。姉ちゃんの弟と知って「姉弟ともに特待生」と意気込んでいたが、底辺の成績だと知って悪態をつかれた時に口走ってやがったからな、あの野郎!
今思えば、あの時止めておくべきだったんだ。「姉ちゃんに金持学校の校風は全く合わな」「他に良い学校は沢山ある」と――
本当に今更だ。
もっと姉ちゃんの学校生活を聞いておくんだった。金持ち学校での学生時代の事を。そしたら……そうしてたら、俺は……。後悔が襲ってくるのを感じる。
当時はおかしいと思わなかった。
姉ちゃんは勉強ができるけど、ガリ勉って訳じゃない。いつも机にかじりつくような事はしない。受験の時や試験期間中くらいだ。休日は普通に友達と遊びに出かける。ただ、一緒に出かけるのは中学時代からの友達だけ。金持ち学校の友達と何処かに出かけるなんて事は一度もなかった。
一度、聞いたことがある。
高校の友達と遊ばないのか?って――――
その時の姉ちゃんは何ともいい難い顔をしてた。楽天家の姉には珍しい表情だったのを覚えてる。だけど、その時の返事が思い出せない……。
89
お気に入りに追加
4,567
あなたにおすすめの小説
公爵家の家族ができました。〜記憶を失くした少女は新たな場所で幸せに過ごす〜
月
ファンタジー
記憶を失くしたフィーは、怪我をして国境沿いの森で倒れていたところをウィスタリア公爵に助けてもらい保護される。
けれど、公爵家の次女フィーリアの大切なワンピースを意図せず着てしまい、双子のアルヴァートとリティシアを傷付けてしまう。
ウィスタリア公爵夫妻には五人の子どもがいたが、次女のフィーリアは病気で亡くなってしまっていたのだ。
大切なワンピースを着てしまったこと、フィーリアの愛称フィーと公爵夫妻から呼ばれたことなどから双子との確執ができてしまった。
子どもたちに受け入れられないまま王都にある本邸へと戻ることになってしまったフィーに、そのこじれた関係のせいでとある出来事が起きてしまう。
素性もわからないフィーに優しくしてくれるウィスタリア公爵夫妻と、心を開き始めた子どもたちにどこか後ろめたい気持ちを抱いてしまう。
それは夢の中で見た、フィーと同じ輝くような金色の髪をした男の子のことが気になっていたからだった。
夢の中で見た、金色の花びらが舞う花畑。
ペンダントの金に彫刻された花と水色の魔石。
自分のことをフィーと呼んだ、夢の中の男の子。
フィーにとって、それらは記憶を取り戻す唯一の手がかりだった。
夢で会った、金色の髪をした男の子との関係。
新たに出会う、友人たち。
再会した、大切な人。
そして成長するにつれ周りで起き始めた不可解なこと。
フィーはどのように公爵家で過ごしていくのか。
★記憶を失くした代わりに前世を思い出した、ちょっとだけ感情豊かな少女が新たな家族の優しさに触れ、信頼できる友人に出会い、助け合い、そして忘れていた大切なものを取り戻そうとするお話です。
※前世の記憶がありますが、転生のお話ではありません。
※一話あたり二千文字前後となります。
【完結済】結婚式の夜、突然豹変した夫に白い結婚を言い渡されました
鳴宮野々花@軍神騎士団長1月15日発売
恋愛
オールディス侯爵家の娘ティファナは、王太子の婚約者となるべく厳しい教育を耐え抜いてきたが、残念ながら王太子は別の令嬢との婚約が決まってしまった。
その後ティファナは、ヘイワード公爵家のラウルと婚約する。
しかし幼い頃からの顔見知りであるにも関わらず、馬が合わずになかなか親しくなれない二人。いつまでもよそよそしいラウルではあったが、それでもティファナは努力し、どうにかラウルとの距離を縮めていった。
ようやく婚約者らしくなれたと思ったものの、結婚式当日のラウルの様子がおかしい。ティファナに対して突然冷たい態度をとるそっけない彼に疑問を抱きつつも、式は滞りなく終了。しかしその夜、初夜を迎えるはずの寝室で、ラウルはティファナを冷たい目で睨みつけ、こう言った。「この結婚は白い結婚だ。私が君と寝室を共にすることはない。互いの両親が他界するまでの辛抱だと思って、この表面上の結婚生活を乗り切るつもりでいる。時が来れば、離縁しよう」
一体なぜラウルが豹変してしまったのか分からず、悩み続けるティファナ。そんなティファナを心配するそぶりを見せる義妹のサリア。やがてティファナはサリアから衝撃的な事実を知らされることになる──────
※※腹立つ登場人物だらけになっております。溺愛ハッピーエンドを迎えますが、それまでがドロドロ愛憎劇風です。心に優しい物語では決してありませんので、苦手な方はご遠慮ください。
※※不貞行為の描写があります※※
※この作品はカクヨム、小説家になろうにも投稿しています。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】
私には婚約中の王子がいた。
ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。
そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。
次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。
目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。
名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。
※他サイトでも投稿中
【完結済】政略結婚予定の婚約者同士である私たちの間に、愛なんてあるはずがありません!……よね?
鳴宮野々花@軍神騎士団長1月15日発売
恋愛
「どうせ互いに望まぬ政略結婚だ。結婚までは好きな男のことを自由に想い続けていればいい」「……あらそう。分かったわ」婚約が決まって以来初めて会った王立学園の入学式の日、私グレース・エイヴリー侯爵令嬢の婚約者となったレイモンド・ベイツ公爵令息は軽く笑ってあっさりとそう言った。仲良くやっていきたい気持ちはあったけど、なぜだか私は昔からレイモンドには嫌われていた。
そっちがそのつもりならまぁ仕方ない、と割り切る私。だけど学園生活を過ごすうちに少しずつ二人の関係が変わりはじめ……
※※ファンタジーなご都合主義の世界観でお送りする学園もののお話です。史実に照らし合わせたりすると「??」となりますので、どうぞ広い心でお読みくださいませ。
※※大したざまぁはない予定です。気持ちがすれ違ってしまっている二人のラブストーリーです。
※この作品は小説家になろうにも投稿しています。
婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!
志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。
親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。
本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。
完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!
仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。
ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。
理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。
ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。
マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。
自室にて、過去の母の言葉を思い出す。
マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を…
しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。
そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。
ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。
マリアは父親に願い出る。
家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが………
この話はフィクションです。
名前等は実際のものとなんら関係はありません。
前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。
真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。
一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。
侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。
二度目の人生。
リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。
「次は、私がエスターを幸せにする」
自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる