上 下
4 / 130

4.浮気相手からの謝罪2

しおりを挟む
 
 私と女性早川陽向との間に微妙な空気が流れていました。
 個人的には早く実家に帰りたいのですが、彼女がそうさせてくれないのです。この方は何がしたいのでしょうか?

 疑問に思っていると、運転手が彼女にとんでもない事を言い放ったのです。

「早川様、そのような事をなさったところで何の解決にもなりません。例え、お嬢様がお許しになったとしても早川様自身が背負った負債が無くなる事はありません」

「なっ!?」

「大方、お嬢様に直談判なさって慰謝料を無かった事にしてもらうつもりだったのでしょう。それとも減額を願い出ようとなさっているのですか?」

「……」

「どうやら図星のようですね。そういう話は既に話し終えている筈です。早川様がお嬢様に謝罪するの事自体は特に問題はありませんが、お嬢様に対して理不尽な要求をする事は筋違いという物です」

「…………ふ、ふざけないでよ!あんな金額払える筈がないでしょう!!横暴だわ!!!」

「当然の金額です」

「どこが!?五千万よ!?ありえないでしょう!!」

「……寧ろ、安いくらいですよ」

「はぁ!?何を言ってるのよ!!」

「自覚がないようですが、早川様。貴女は一つの家庭を壊し、一つの企業に損失を与えた。これは貴女だけの問題ではないんですよ?もはや個人の問題ではありません。早川様一人の勝手な行動で何万人にも迷惑と損失が出るんです。それを考えればあの程度の金額でもまだ安い方です」

「そ、そんなの……そんな事って……わ、私は何も知らない!」

「知りませんか。そうですよね、お若いから仕方のない事かもしれませんね。ただね早川様?貴女はそれだけの事をしたと自覚をするべきです。恐らく鈴木グループは企業の縮小を視野に入れていると思いますよ。当然、その規模も小さくなるでしょうし、従業員の雇用も厳しくなる事は間違いないかと。場合によってはリストラも考えられます」

「っ!?わ、私は!」

「学生時代の恋人と会社で再会して想いが燃え上がったのでしょう。『嫌いで別れた訳じゃない』『本当なら自分達は結ばれていたはず』……そう友人達に話していたそうですね」

「……」

 彼女は何も言いません。
 運転手の言葉に思い当たる節があるからでしょうか?

「あなた方のしている事を世間で何と言うか御存知ですか?」

「……」

「不倫です」

「ッ!!」

 運転手の言葉は正しいですわ。
 本人達はそう捉えていなくとも周囲からはそういう風にしか見られませんものね。
 彼女は真っ青を通り越して真っ白になりつつ絶句をしていました。

「さて、そろそろ宜しいでしょうか」

「ま……」

「貴女の自己満足でしかない謝罪をこれ以上聞いている程、お嬢様は暇ではございません」

 運転手の言葉に彼女はとうとう泣き始めてしまいました。その泣き声は非常に耳障りでしたわ。
 私は運転手が開けていてくれた車のドアの前に立つと彼女の方を振り返り、「ごきげんよう。もう会う事もありませんけれど、晃司様とお幸せに……」と言い、乗車しました。運転手も運転席に乗り発車したのです。
 もう会う事もありませんでしょう。


 新しい御代になる前に事は本当にですわ。
 

しおりを挟む
感想 372

あなたにおすすめの小説

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る

花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。 その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。 何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。 “傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。 背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。 7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。 長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。 守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。 この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。 ※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。 (C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。

婚約破棄されたので、論破して旅に出させて頂きます!

桜アリス
ファンタジー
婚約破棄された公爵令嬢。 令嬢の名はローザリン・ダリア・フォールトア。 婚約破棄をした男は、この国の第一王子である、アレクサンドル・ピアニー・サラティア。 なんでも好きな人ができ、その人を私がいじめたのだという。 はぁ?何をふざけたことをおっしゃられますの? たたき潰してさしあげますわ! そして、その後は冒険者になっていろんな国へ旅に出させて頂きます! ※恋愛要素、ざまぁ?、冒険要素あります。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 文章力が、無いのでくどくて、おかしいところが多いかもしれません( ̄▽ ̄;) ご注意ください。m(_ _)m

先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件

桜 偉村
恋愛
 別にいいんじゃないんですか? 上手くならなくても——。  後輩マネージャーのその一言が、彼の人生を変えた。  全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。  練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。  武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。  だから、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。  そうすれば、香奈は自分のモノになると思っていたから。  武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。  しかし、そこに香奈が現れる。  成り行きで香奈を家に上げた巧だが、なぜか彼女はその後も彼の家を訪れるようになって——。 「これは警告だよ」 「勘違いしないんでしょ?」 「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」 「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」  甘酸っぱくて、爽やかで、焦れったくて、クスッと笑えて……  オレンジジュース(のような青春)が好きな人必見の現代ラブコメ、ここに開幕! ※これより下では今後のストーリーの大まかな流れについて記載しています。 「話のなんとなくの流れや雰囲気を抑えておきたい」「ざまぁ展開がいつになるのか知りたい!」という方のみご一読ください。 【今後の大まかな流れ】 第1話、第2話でざまぁの伏線が作られます。 第1話はざまぁへの伏線というよりはラブコメ要素が強いので、「早くざまぁ展開見たい!」という方はサラッと読んでいただいて構いません! 本格的なざまぁが行われるのは第15話前後を予定しています。どうかお楽しみに! また、特に第4話からは基本的にラブコメ展開が続きます。シリアス展開はないので、ほっこりしつつ甘さも補充できます! ※最初のざまぁが行われた後も基本はラブコメしつつ、ちょくちょくざまぁ要素も入れていこうかなと思っています。 少しでも「面白いな」「続きが気になる」と思った方は、ざっと内容を把握しつつ第20話、いえ第2話くらいまでお読みいただけると嬉しいです! ※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。 ※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

離婚4回の女伯爵は、今日も絶壁の貴公子を探す〜私を愛することなく結婚してくれませんか?〜

白猫
恋愛
ジェルメーヌ・ラチェイド女伯爵は、結婚相手を探している。それも「絶壁の貴公子」を。彼女にとって絶壁とは、いわゆる後戻りも前進もできない「断崖絶壁」な状況に置かれていることを言う。多少の問題を抱えてはいるものの容姿は完璧なジェルメーヌ、そんな彼女が徹底して「悲惨な男性」を求め続ける理由とは?そして、普通の結婚にはない条件「ジェルメーヌを絶対に愛さないこと」を守り抜いてくれる男は現れるのか?5回目の今回が、ジェルメーヌにとってのラストチャンス。「恋人に一生を捧げ、決して私に惚れない男」カモーン!! ➡️登場人物、国、背景など全て架空の100%フィクションです。

【完結】シャーロットを侮ってはいけない

七瀬菜々
恋愛
『侯爵家のルーカスが、今度は劇団の歌姫フレデリカに手を出したらしい』 社交界にこんな噂が流れ出した。 ルーカスが女性と噂になるのは、今回に限っての事ではない。 しかし、『軽薄な男』を何よりも嫌うシャーロットは、そんな男に成り下がってしまった愛しい人をどうにかしようと動き出す。 ※他のサイトにて掲載したものを、少し修正してを投稿しました

成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世
恋愛
 異世界転生キタコレー! と、テンションアゲアゲのリアーヌだったが、なんとその世界は乙女ゲームの舞台となった世界だった⁉︎  えっあの『ギフト』⁉︎  えっ物語のスタートは来年⁉︎  ……ってことはつまり、攻略対象たちと同じ学園ライフを送れる……⁉︎  これも全て、ある日突然、貴族になってくれた両親のおかげねっ!  ーー……でもあのゲームに『リアーヌ・ボスハウト』なんてキャラが出てた記憶ないから……きっとキャラデザも無いようなモブ令嬢なんだろうな……  これは、ある日突然、貴族の仲間入りを果たしてしまった元日本人が、大好きなゲームの世界で元日本人かつ庶民ムーブをぶちかまし、知らず知らずのうちに周りの人間も巻き込んで騒動を起こしていく物語であるーー  果たしてリアーヌはこの世界で幸せになれるのか?  周りの人間たちは無事でいられるのかーー⁉︎

婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!

志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。 親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。 本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。

処理中です...