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54.伯爵夫人side

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「殿下の愛人たちは現在拘束されている」

「それはそうでしょう」

「貴族牢に入れられ処分を待つ身だ。恐らく処刑されるだろう」

「まあ、そうでしょうね」

 毒杯を賜るのは時間の問題でしょう。

「君は心が痛まないのか!」

 はぁ!?
 何故私が心を痛めないといけないの?

「君のせいで大勢の人達が不幸になったんだ!」

「私のせいではないと思うけど……?」

「男達を弄んで!」

「あら?男は女を弄んでも良いけど、女はダメと?」

「そんな事は言ってない!」

「言っているようなものでしょう。それに、私は結婚の義務は果たしているのよ?あなたにとやかく言われる筋合いはないわ。寧ろ、愛人の家に入り浸って帰ってこない夫を待つ健気な女を演じていろとでもいう気?それこそ馬鹿げているわ」

「なっ!?」

 あら。図星。
 なるほど、彼は待ち続ける女がお好みなのね。

「勘違いがないように言っておきますが、あなたが最初に裏切り行為をしているんですからね」

「グッ!!」

「それとも何かしら?蔑ろにしている妻が意外なほど充実した生活を送っている事が嫌なの?社交界にも出ずに屋敷に帰ってこない夫の帰りに涙する妻が良かったとでも?そんな都合の良い女なんて早々いるものじゃないわ。あなたの可愛い愛人さんだってソウでしょう?何時まで経っても離婚しない、パーティーにも連れて行ってくれない、ドレスも買ってくれない、指輪もくれない。そんな男に何時までも愛情を持てと言う方がどうかしてるわ」

「……」

 喧嘩をしたのか、それとも彼女に出て行かれたのかは知らないけど、今更帰ってこられても困るのよね。

「ご用はもう済んだでしょう?帰ってくださる?」

「……ッ!!」

 彼は怒りの形相で帰って行った。
 一体何に怒っているのやら。

 その後、私は夫の愛人が金目の物を持って他の男と出奔したと聞かされた。
 金の切れ目が縁の切れ目。

 ご愁傷様。


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