46 / 67
46.王太子side
しおりを挟む
「なんでよ!なんでもっと早く来てくれないの!?」
久しぶりに訪れた後宮。
ソニアの第一声がコレだ。
私の顔見た瞬間に叫んだ。
「来るのが遅すぎるわ!!」
顔を真っ赤にして怒る姿に辟易する。
確かにソニアから「会いたい」という報告は受けていた。だが、こちらの都合も知らずに唯々自分の都合のみを優先する態度に嫌気がさす。少しは相手の気持ちを考えるということが出来ないのか?と説教したくなるのを我慢し、肩を竦めた。
「仕事で忙しかったんだ」
「知らないわよ!」
……知らんと来たか。まあ、公務の一切こなさない妃だ。後宮に閉じこもっている状態では何も知らないのは無理もない。それでも、だ。王族が只着飾って笑ってすごしている存在でないこと位は子供でも分かる。結婚して直ぐなら兎も角、ソニアは何年も側妃をしているし、最高の教師をつけているんだ。王族の責務、というものがあることを理解しておいてもいいだろうに。
相変わらず唸るソニアを見ながらハァと溜息をつく。
「何で溜息ついているのよ!?」
キッと睨むソニアに益々うんざりした。
だが、今更だ。いちいち苛立っても仕方ないし、何時までも彼女の我儘に付きあうほど私も暇ではない。
「これでも最大限急いだ方だ」
「嘘!」
「本当だ。王太子としての予定は三ヶ月先まで詰まっている」
「遅よ!本当は女と会うのに忙しいんでしょ!?私、知ってるんだから!年増女の次は若い女の尻を追いかけまわしてるって!浮気しまくってるくせに言い訳する気!?女達に会う事を優先しているのも知っているわ!」
……どうやってその情報を手に入れたのか是非とも詳しく問いただしたいところだ。まあ、ソニアのことだ。どこかの使用人達の会話を偶然聞いたのだろう。まったく。ソニアのところの使用人はよほど口が軽いらしい。
「彼女達は私の大事な友人達だ」
「なにが友人よ!ただの浮気じゃない!」
「浮気ではない」
「浮気よ!」
「愛妾の存在は公的に認められている」
「な、なに言ってんの……?」
「ソニア、君はもう一度後宮のシステムと王族のルールを学び直した方がいい」
「は?何言ってんの?」
「妃の仕事の一つに、子供を儲ける義務がある」
「……」
「私達との間には何年も子供がいない。そのことを踏まえて私が君とは別の女性と子供を儲ける事は王族としての義務でもあるんだ。現在、王族は極端に少ないからな。例え最初は庶子として生まれたとしても母親の昇進によって正式な跡取りに転ずる場合もある。君との結婚で私は正妃を持つことが出来なくなった。ならそれを補える存在が必要だ。あまり煩い事を言うのなら私も君に対して然るべき処置をとらないといけなくなる」
それだけ言うと、私は後宮を足早に去った。私の後を慌てた様子で護衛官が追いかけたのが分かったが、私は構わずに歩く。
これ以上の面倒ごとは御免だ。
背後からソニアの怒声が聞こえるが、聞かないふりをする。後宮の者達にとってソニアの怒声も奇声も何時ものことなのだろう。驚く者は一人もいなかった。誰も気にすることはなく淡々と日々の職務をこなしている。
はぁ……。
疲れた。
久しぶりに訪れた後宮。
ソニアの第一声がコレだ。
私の顔見た瞬間に叫んだ。
「来るのが遅すぎるわ!!」
顔を真っ赤にして怒る姿に辟易する。
確かにソニアから「会いたい」という報告は受けていた。だが、こちらの都合も知らずに唯々自分の都合のみを優先する態度に嫌気がさす。少しは相手の気持ちを考えるということが出来ないのか?と説教したくなるのを我慢し、肩を竦めた。
「仕事で忙しかったんだ」
「知らないわよ!」
……知らんと来たか。まあ、公務の一切こなさない妃だ。後宮に閉じこもっている状態では何も知らないのは無理もない。それでも、だ。王族が只着飾って笑ってすごしている存在でないこと位は子供でも分かる。結婚して直ぐなら兎も角、ソニアは何年も側妃をしているし、最高の教師をつけているんだ。王族の責務、というものがあることを理解しておいてもいいだろうに。
相変わらず唸るソニアを見ながらハァと溜息をつく。
「何で溜息ついているのよ!?」
キッと睨むソニアに益々うんざりした。
だが、今更だ。いちいち苛立っても仕方ないし、何時までも彼女の我儘に付きあうほど私も暇ではない。
「これでも最大限急いだ方だ」
「嘘!」
「本当だ。王太子としての予定は三ヶ月先まで詰まっている」
「遅よ!本当は女と会うのに忙しいんでしょ!?私、知ってるんだから!年増女の次は若い女の尻を追いかけまわしてるって!浮気しまくってるくせに言い訳する気!?女達に会う事を優先しているのも知っているわ!」
……どうやってその情報を手に入れたのか是非とも詳しく問いただしたいところだ。まあ、ソニアのことだ。どこかの使用人達の会話を偶然聞いたのだろう。まったく。ソニアのところの使用人はよほど口が軽いらしい。
「彼女達は私の大事な友人達だ」
「なにが友人よ!ただの浮気じゃない!」
「浮気ではない」
「浮気よ!」
「愛妾の存在は公的に認められている」
「な、なに言ってんの……?」
「ソニア、君はもう一度後宮のシステムと王族のルールを学び直した方がいい」
「は?何言ってんの?」
「妃の仕事の一つに、子供を儲ける義務がある」
「……」
「私達との間には何年も子供がいない。そのことを踏まえて私が君とは別の女性と子供を儲ける事は王族としての義務でもあるんだ。現在、王族は極端に少ないからな。例え最初は庶子として生まれたとしても母親の昇進によって正式な跡取りに転ずる場合もある。君との結婚で私は正妃を持つことが出来なくなった。ならそれを補える存在が必要だ。あまり煩い事を言うのなら私も君に対して然るべき処置をとらないといけなくなる」
それだけ言うと、私は後宮を足早に去った。私の後を慌てた様子で護衛官が追いかけたのが分かったが、私は構わずに歩く。
これ以上の面倒ごとは御免だ。
背後からソニアの怒声が聞こえるが、聞かないふりをする。後宮の者達にとってソニアの怒声も奇声も何時ものことなのだろう。驚く者は一人もいなかった。誰も気にすることはなく淡々と日々の職務をこなしている。
はぁ……。
疲れた。
309
お気に入りに追加
3,158
あなたにおすすめの小説
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
婚約破棄されなかった者たち
ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。
令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。
第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。
公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。
一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。
その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。
ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。
【完結】愛してなどおりませんが
仲村 嘉高
恋愛
生まれた瞬間から、王妃になる事が決まっていたアメリア。
物心がついた頃には、王妃になる為の教育が始まった。
父親も母親も娘ではなく、王妃になる者として接してくる。
実兄だけは妹として可愛がってくれたが、それも皆に隠れてコッソリとだった。
そんなある日、両親が事故で亡くなった同い年の従妹ミアが引き取られた。
「可愛い娘が欲しかったの」
父親も母親も、従妹をただただ可愛いがった。
婚約者である王太子も、婚約者のアメリアよりミアとの時間を持ち始め……?
※HOT最高3位!ありがとうございます!
※『廃嫡王子』と設定が似てますが、別のお話です
※またやっちまった、断罪別ルート。(17話から)
どうしても決められなかった!!
結果は同じです。
(他サイトで公開していたものを、こちらでも公開しました)
番(つがい)はいりません
にいるず
恋愛
私の世界には、番(つがい)という厄介なものがあります。私は番というものが大嫌いです。なぜなら私フェロメナ・パーソンズは、番が理由で婚約解消されたからです。私の母も私が幼い頃、番に父をとられ私たちは捨てられました。でもものすごく番を嫌っている私には、特殊な番の体質があったようです。もうかんべんしてください。静かに生きていきたいのですから。そう思っていたのに外見はキラキラの王子様、でも中身は口を開けば毒舌を吐くどうしようもない正真正銘の王太子様が私の周りをうろつき始めました。
本編、王太子視点、元婚約者視点と続きます。約3万字程度です。よろしくお願いします。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
婚約解消は君の方から
みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。
しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。
私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、
嫌がらせをやめるよう呼び出したのに……
どうしてこうなったんだろう?
2020.2.17より、カレンの話を始めました。
小説家になろうさんにも掲載しています。
【完結】夫は私に精霊の泉に身を投げろと言った
冬馬亮
恋愛
クロイセフ王国の王ジョーセフは、妻である正妃アリアドネに「精霊の泉に身を投げろ」と言った。
「そこまで頑なに無実を主張するのなら、精霊王の裁きに身を委ね、己の無実を証明してみせよ」と。
※精霊の泉での罪の判定方法は、魔女狩りで行われていた水審『水に沈めて生きていたら魔女として処刑、死んだら普通の人間とみなす』という逸話をモチーフにしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる