上 下
24 / 67

24.影響2

しおりを挟む
 
 各家の力関係は微妙な均衡のまま現状維持を貫いています。

やからした息子加害者の男』を持つ家は暫くの間は大人しくしているでしょう。少なくとも、次の、更に次の代までは。その間に『被害者の女性』は婚家での発言力を増していく。明確な力関係はそう簡単に覆れないもの。ですが、内情は違いますものね。

 表舞台でどれほど権力を持った大臣であったとしても、家に帰れば奥方に頭が上がらないというのは普通にあること。社交界で奥方が情報収集をしているからこそ出世できた例は歴史的に幾つかありますからね。

 そういった女性陣を味方にできたのは僥倖でした。



 次に、ソニア嬢の家族ですがこちらは学園側からの抗議で商売ができなくなっておりました。正確にはソニア嬢のせいで婚約が破談になった家々が不買活動をしていたからですが。女の敵は女、とは良く言ったものですわ。彼女達はこの上なくソニア嬢の動向を細かにご存知のようですわね。各令嬢、そのお家の名まで把握されておりましたもの。学園内の活動記録、外泊記録までバッチリと……。その余波はソニア嬢の父方の親族にまで及んでいます。どうやら父君は婿養子だったようですわね。貴族出身だったようですが、商家の娘と結婚したというからには恐らくお金が目的だったのでしょう。貧乏貴族が裕福な商家の娘と結婚するケースはここ数年で増加しています。珍しいことではありません。

 婿入りした元貴族の男が妻に隠れて愛人を作るケースは特別珍しくありません。

 ただ、ソニア嬢の父君には先妻との間に一人娘がいたようですが……。
 愛人と再婚してからの消息は不明のままです。

 商会の関係者及び街の住民から探り込んで手に入れた情報ですから間違いないでしょう。彼らは「再婚してからお嬢さんの姿を見ていない」「あの婿は『娘は寄宿学校に入れた』と言うが本当かどうか分ったもんじゃねぇ」と疑念を抱いている様子でした。なんでも、その都度で言っている内容が食い違う事があるそうで、その事を追及すると烈火の如く怒り出すのだとか。それで更に疑念が膨れ上がるという悪循環になっているようでした。

 公爵家でも足取りを探ってみましたが、なにせ、数年も前のもの。片田舎の孤児院に数日いた、という情報を最後にその後の足取りが全く掴めませんでした。


『身なりの良い男性が引き取って行かれました』

 孤児院の院長の言葉をどこまで信用していいものか。判断に困りますわ。

『親戚だと言ってましたよ?あの子も懐いていましたし。ええ、初対面ではなかったようです。偶に家に来ていたと言ってましたから』

 紳士的な男。
 益々、怪しいと感じるのは私だけでしょうか?
 問題の娘も懐いていて初対面では無かったということは本当に親戚の可能性もありました。身なりの良い初老の男。最初は、父方の男爵家が保護したものだとばかり思っていましたが、その形跡は全くなく、寧ろ、姪が行方知れずだと知って驚いていました。ならば身なりの良い紳士的な初老の男性とは一体誰だったのでしょう?


 謎は深まるばかりです。


 

しおりを挟む
感想 58

あなたにおすすめの小説

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

婚約破棄されなかった者たち

ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。 令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。 第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。 公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。 一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。 その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。 ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

【完結】愛してなどおりませんが

仲村 嘉高
恋愛
生まれた瞬間から、王妃になる事が決まっていたアメリア。 物心がついた頃には、王妃になる為の教育が始まった。 父親も母親も娘ではなく、王妃になる者として接してくる。 実兄だけは妹として可愛がってくれたが、それも皆に隠れてコッソリとだった。 そんなある日、両親が事故で亡くなった同い年の従妹ミアが引き取られた。 「可愛い娘が欲しかったの」 父親も母親も、従妹をただただ可愛いがった。 婚約者である王太子も、婚約者のアメリアよりミアとの時間を持ち始め……? ※HOT最高3位!ありがとうございます! ※『廃嫡王子』と設定が似てますが、別のお話です ※またやっちまった、断罪別ルート。(17話から)  どうしても決められなかった!!  結果は同じです。 (他サイトで公開していたものを、こちらでも公開しました)

番(つがい)はいりません

にいるず
恋愛
 私の世界には、番(つがい)という厄介なものがあります。私は番というものが大嫌いです。なぜなら私フェロメナ・パーソンズは、番が理由で婚約解消されたからです。私の母も私が幼い頃、番に父をとられ私たちは捨てられました。でもものすごく番を嫌っている私には、特殊な番の体質があったようです。もうかんべんしてください。静かに生きていきたいのですから。そう思っていたのに外見はキラキラの王子様、でも中身は口を開けば毒舌を吐くどうしようもない正真正銘の王太子様が私の周りをうろつき始めました。 本編、王太子視点、元婚約者視点と続きます。約3万字程度です。よろしくお願いします。  

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

婚約解消は君の方から

みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。 しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。 私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、 嫌がらせをやめるよう呼び出したのに…… どうしてこうなったんだろう? 2020.2.17より、カレンの話を始めました。 小説家になろうさんにも掲載しています。

【完結】夫は私に精霊の泉に身を投げろと言った

冬馬亮
恋愛
クロイセフ王国の王ジョーセフは、妻である正妃アリアドネに「精霊の泉に身を投げろ」と言った。 「そこまで頑なに無実を主張するのなら、精霊王の裁きに身を委ね、己の無実を証明してみせよ」と。 ※精霊の泉での罪の判定方法は、魔女狩りで行われていた水審『水に沈めて生きていたら魔女として処刑、死んだら普通の人間とみなす』という逸話をモチーフにしています。

処理中です...