ヘタレ淫魔と教官ども

うに

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我慢出来ないよ

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「こ、こんばんは~」

とりあえず挨拶からはいってみたものの、僕のヘタレーダーがすごく反応している。
ヘタレーダーとはヘタレな僕が対処しきれない、これは逃げた方が良いぞ~って場面を教えてくれる警鐘の様なモノだ。今名付けた。
でも逃げ場はない。だってここ僕の部屋だし。

「今日は元気そうだなレイヤ。結構キツく訓練したハズなんだがな、魔力が満ちてる様で。」

ずいっと近づいてくるサマエル教官に、思わず顔を逸らす。

「…美味かったろう?俺の魔力は。」

耳元で低い声で言われ、汗がブワッと吹き出る。

(やっぱ夢じゃなかった…!)

「そっ、その節は誠にその、…すみ、すみませんでした…っ!!」

やっとの思いで紡ぎ出した謝罪を、目の前の男は受け取らない。

「別に良いぜぇ魔力くらい。それでお前の訓練が捗るってんならいくらでも。」

そう言うと腕を広げ、じわりと距離を詰めて来る。

「ほら。好きなだけ吸えよ。お前のやり方で」

ドロっとした濃い魔力が流れ出る。
それを求めて自然と体が傾き、慌てて首を振って正気を保つと、その背後に視線を送る。
そんなレイヤの助けを求める様子を、ベリアル副教官はただ興味深そうに眺めていた。

(これはっ、どうするのが正解なんだ…⁈言われた通りに魔力を吸う?いやいやっ、このひと意味分かってる⁈)

あわわと焦るレイヤの足元から、サマエルの魔力が這い上がって来る。
さながら目の前に最上級のエサをぶら下げて、ほら食べてごらんと言われているこの状況に、本能的にクラっときてしまう。

けれどもそこは流石ヘタレ。本能に任せて行動する勇気はなく、しかしこの魔力の満ちた狭い空間では理性もうまく働かない。
とりあえず一度外に出ようと、フラフラした足取りで扉にたどり着き、ドアノブに手をかける。
途端、強い力に阻まれる。
驚いてもう一度扉に触れて、結界が張ってあることに気付く。

「魔力、吸って良いってさ?」

唖然とするレイヤの肩を後ろから柔らかく抱き、甘い声でベリアルが囁く。
脳が痺れ、ゴクリと喉が鳴る。
恐る恐る振り返れば、仄暗く光る赤い目で、おいでとばかりに手を差し出す黒い悪魔がいた。

一歩踏み出すたびに魔力が濃くなり、まるで光に向かう羽虫の様に意思を奪われて吸い寄せられる。
取ってはいけない。そう思うのに、差し出された手を取ってしまう。
待っていたとばかりにグイッと乱暴に引き寄せられ、後頭部を鷲掴みにされる。
上を向かされて目が合うと、唇が触れるか触れないかの距離で男は言うのだ。

「欲しいんだろ?さあ名を呼べ。我が名はサマエル・ヴォルディール。強請ってみせろレイヤ。」

もはやレイヤに、抗う術はなかった。

「…僕に、魔力を、くださ…っ」

クラクラとする頭はまるで役に立たず、言葉を紡ごうとする唇は震えて上手く動かない。
焦れたサマエルは、その長い舌をレイヤの震えた唇に這わせた。
その感覚がレイヤの中の「淫魔」を刺激して、僅かに残った理性は跡形もなく消し飛び、身体の中心にぞわぞわとした性欲が集まる。レイヤは目を合わせたままもう一度、言葉を紡ぐ。

「僕に、魔力を下さい。サマエル・ボルドゥッ」

(…噛んだ)
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