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第二十八話 紅茶とスコーンと注意事項(2)

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「…ちゃん、アンちゃん!!」
「!!」

シュリの声で目が覚める。
「…あれ」
「やっと起きた…。
私がお店来なかったら大変なことになってたよ?」
「えっと…何が起きたんだっけ。」
「グラディウス様がブリューナクを引っこ抜いたところから気を失ってたはずだよ。
ああ、殿下は騒ぎになるといけないから王城に帰した。」
「ありがとう…。」

「言っとくけど今回のことにおいて悪いのはアンちゃんだからね。
聖剣を取りはずしたり破損させると元の普通の人間の体になって、今まで眠っていなかった時間眠ってしまうの。
今回は私がすぐはめ直したからよかったけど、
家族でも聖剣には触れさせちゃダメ。」
「…ごめん」

知らなかったとはいえ、確かに触らせてしまった自分の落ち度かもしれない。
ということは…、聖剣が戦闘の際破損すれば、二度と目を覚まさなくなるかもしれないということか。
ぞっとして薬指を見つめ、握りしめる。

「とはいえ、言ってなかったこちらの落ち度もある。
…言い過ぎた。ごめんアンちゃん」
「シュリの言っていることはもっともだから、私が悪いの。
そんな顔しなくていいよ。」
「…毎回思うけどアンちゃんって優しいよね」
「そう?」
「ハンカチ貸してくれたし、きついこと言っても怒らないし」
「それは優しいとは少し違うんじゃないかな」

ハンカチを貸したのは返り血が酷かったからであるし、
きついことを言われても怒らないのは自分に落ち度があると認めており、
それ以上にきついことを婚約者に言われていたから。
だから、優しいとは少し違う気がする。

と、体を起こす。
「そうなの?」
「そうそう。
…ねえシュリ、私どのくらい寝てたの?」

お店の床に寝ていたのか…とお客が誰もいなくなった店内を見渡す。
机にはお金が置いてあり、おそらくシュリが、自分が剣聖だと分からないようにするため、
お客様も帰してくれたのだろう。

「えっと…一時間くらいかな」
「そっか…。
本当にありがとうねシュリ。シュリがいなかったら大変なことになってた。
それにお客様にバレないようにしてくれてありがとう。」
「ホントいい子だね。」
「シュリがね」
「私は優しくないよ本当。
というわけで何か食べさせろって今から言うから」

とシュリがカウンター席に座り、ニヤッと笑う。
それにクスリと笑う。

「もう言ってるじゃないのよ。
で?何が食べたい?
お礼に今日は何食べてもお代はいただきません。」
「本当に!?」
「ほんとほんと。」
「じゃあチョコレートパフェデラックス!!」

いつも大人びた表情をしているシュリが、ユーシアスやハヤテ同様に子供のような顔を見せるから、
可愛いな~、やっぱり14歳の女の子はこうでなくちゃね!!と微笑ましく眺めていたが、
何でも…は言い過ぎたかもしれないと顔を青くする。
何でもと言ったのは自分だが、本当に遠慮がない。

チョコレートパフェデラックスは、かなり量があるのチョコレートパフェ四個分の量がある、
いわゆるどんぶりパフェみたいな感じで、大食いタレントが食べそうなパフェだ。
ちなみに材料費は三千円を軽く超える。
今まで誰も注文したことがなかったパフェを、小柄で身長は150センチしかない女の子が頼んだ。

「…ねえシュリ、その細~い体のどこにパフェデラックスが入るの?」
「食べきれなかったらお代は払うから、お願い!」

いや、大食いチャレンジメニューではないんだけどね…と笑うが、
お礼はお礼。何でもと言ったからには作らねば。

人一倍大きなグラスに、チョコムース、ホイップ、ブラウニー、
コーンフレーク、カップアイス五個分のチョコアイスを盛り付けていく。
そして最後にチョコクリームとバナナを添える。

「はーいお待ち同様」
「アンちゃん太っ腹~!」
「おかげさまでアイスとホイップがすっからかんだわ」
「消費活動のお手伝いだよ!!」
「はいはい。早く食べないと溶けるわよ~」
「そうだった、いただきま~す!」

絶対食べきれないと思ったのに、シュリは幸せそうにパフェを頬張りながら、
まさかのに十分で完食してしまった。

「…いったいあの大量のパフェがその小さい体に入ったのかしら」
「ふふふ、すごいでしょ!」

美少女がおいしそうに何かを食べているのを見ていたこちらがもうご馳走様という感じだが、
本当にシュリが店に寄ってくれていてよかった。
でなければ何日か目を覚まさまなったかもしれないし、
シュリの子の笑顔も見ることができなかっただろう。

「ありがと、美味しそうに食べてくれて」
「変なの…。
おいしかったよ、ご馳走様でした!」

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