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第十九話 兎な剣聖(1)
しおりを挟む「そういえば、今日だよね。」
夜、剣聖が集まる部屋にて、シュリが口を開けた。
「今日って…何かあったっけ。」
「今日なの。後二人のうちの剣聖一人のが帰って来るの。」
「どんな人?」
純粋に興味があった。
なんせ正常メンバーはツキヤただ一人。
でも剣聖である以上個性が強いのは間違いないといえよう。
「えっとね、兎さん」
「…うさぎ?」
まず人外…?
と、シアンとハヤテ、ツキヤの方を見た。
「ラビリムは…兎だな」
「ラビちゃんは兎ね」
「兎ですね」
三人とも「兎」と述べたことに首をかしげる。
どういう意味なのか…。
前世でいうところの「兎系女子」…みたいな感じだろうか。
「ラビリムさん…というお名前なの?」
「そうだ。
ラビリム・ゼロ・ジャッカロープ。
No.3の剣聖。シアンと互角に渡り合う唯一の存在だな。
それに聖剣ジャッカロープはラビリムしか選んだことがない、もはやラビリムの剣なんだ」
可愛い名前とは裏腹に、No.1のシアンと互角という事実に大きく口を開けてしまった。
だがそれにしても名前がかなり愛らしい。
「ラビリム」という名前は「ラビッド」からとった名前のような感じがするし、
聖剣の「ジャッカロープ」という名も角が二本生えているという幻の兎と同じ名前だ。
もう名前の全てが兎。
これで「寂しいと死んじゃう」なんて言う可愛い美少女だった場合オタクとしては鼻血物である。
勝手に妹キャラに認定してしまうだろう。
「もうラビリムが三番だなんて二番なのが恥ずかしいくらいですよ。
シアンでもラビリムの突き技はまともに受けられないんですからね。」
「…えええ」
いったいどんな人物なのかが想像つかない。
女性なのか男性なのか何なのか。
それを考えていた時だった。
ドシーンという音が近づいてきて、地震かと思うぐらい、大きな足音。
「な、何!?敵襲か何かですか!?」
「落ち着きなって。ラビちゃんが来たね~」
「…………えっ」
これが足音…って、ラビちゃんとかシュリは言ってるけど、
ラビリムさんって、巨人か何かですか…?とおろおろと顔を青くする。
足音が近づき、扉の前でピタリと止まる。
「…ム」
それだけ言って、入ってきたのは、皆がそろえて口にした、
まさに「兎」…。
だがそれは、驚くほどにただの兎ではなさすぎた。
いやいやいやいやいや、マジか…と、言葉にならないものがある。
勝手に「可愛い女の子」を想像していた自分が完璧に悪いが、予想とは全く別すぎた存在だった。
なんと表現すればいいのか分からないのと、若干…いやかなりこの世界観についていけないものがあり、
混乱していてほとんどでうまく説明できないが、
ラビリム・ゼロ・ジャッカロープは「兎」だ。
体は鍛えられすぎだということを主張するような筋肉まみれの体。
もはやゴリマッチョの域を超えている。
ゴリマッチョ四人分の筋肉があると言っていいだろう。
もう素手でスイカを破壊できそうである。
もはやこれは人間がつけられる筋肉量を超えていると思われるが、下半身は人間、
首から上はまさしく兎。
被り物ではない、本物の兎の顔をしている。
下半身と腕には鎧を纏っており、その腕と足の鎧にうさぎさんが付いていて、
よく見ると剣にまでうさぎさんがついていた。
どれだけ兎なんだ…と突っ込みたくなるところだが、じーっと見ていると愛着が湧いてくる気もする。
体系と姿は未知の存在であるが、装備が可愛い、そして大きく赤い瞳。
「ム…」
ラビリムが戸惑いを見せたので、「ああ」と我に返る。
少しじーっと見すぎたようだ。顔に「恥ずかしい」という表情があった。
「そんなに見られたら恥ずかしいですよね、ごめんなさい。」
とほほ笑む。
「!」
するとラビリムの目が大きく見開いたことに、首を傾げた。
「…え、ラビちゃんが言ってること分かるの?」
「なんとなくですけど…まあ」
喫茶店の店長なんてやっていると色々な人のお話を聞くことがある。
前世から店長をやっているので、人の表情を読み取ることには慣れていた。
『伝令、伝令…、港に海賊が出現。
剣聖、三番、十三番。港に向かってください』
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