上 下
16 / 16

第16話 推しキャラ出現でヒロイン放棄やり直しです

しおりを挟む


……アイオライトに転生のことがバレてしまったけど、それでも好きと言ってくれて嬉しかったな。

朝の通学馬車の中でちょっとニヤついてしまった。

「何をニヤついている。早く行くぞ」
「あ、はいお兄様」

いっけない…。緩みは禁物だからな、ちゃんとしないと。


「はぁいホームルームを始めます。」
教師が呼びかけると皆座り始める。

「急ですけれど、今日は転校生がいます。
隣国のアーマイド皇国の第一皇子、ソラ・デ・アーマイド様です。お入りになって」

教室のドアがガラッと開いた。

…うっわ、超美形…!!
確かソラ皇子は漫画にも登場するキャラで、
ひそかにカナリアに想いを寄せていた。
だがカナリアは王妃となったため、その想いは叶わなかった。女たらしって感じだけど、カナリアのことは本気だった。
あのストーリーはなんか切なかったよねぇ…。

「初めまして、ソラ・デ・アーマイドと申します。リタ王国の隣国、アーマイド皇国から来ました。
留学という形でお世話になります。仲良くしてくださいね」

笑顔!かっこいいっ!
原作でもソラ皇子は女性人気高かったもんねぇ…。
おっといけない……。私が好きなのはアイオライトだけだもん。あと多分ずっとみてたらすごい気持ち悪い顔してると思うし私…。

原作で違う点は、もうすでにカナリアが時期王妃であり、王弟殿下の婚約者であること。
そして、第一王子でなく王弟殿下が時期国王であること。私が第一王子の婚約者ではないこと。

…私何度考えてもこの物語めちゃくちゃにしてるよ。
カナリアはもう婚約者がいる身だが、ソラ皇子はカナリアのことを好きになるのかな……?
だとしたら、すごく残酷だよね…。

「えー、席は……、シルエさんの隣が空いてますわね。ソラ皇子、あのシルバーの髪の女性のお隣ですわ」
「んっ?」

あ、マジか。プチ推しだった人が隣に座ってる状況で平然としてられるかがマジ不安だ。
「よろしくね。シルエ、だっけ?」
「あ、シルエ・ルナリスと申します。ソラ殿下。」

「よろしくシルエ嬢。分からないことがあったら教えて下さいね」
「喜んで」

この作り笑いがいつまで続くかわからん……。
アイオライトを好きとはいえ、推しに話しかけられたらにやけてしまう…。

「ねぇ、教科書見せてもらっていいですか?アーマイドとは違うみたいで」
「あ、どうぞ」
「それじゃシルエ嬢が見えないんじゃないですか?もっと寄らないと」
「いえいえっ、恐れ多いですわ」

なんかソラ皇子ってフレンドリーだからか距離が近いんだよね……。こんなんだからすぐ女性の心を射止めちゃうんだよ。

ちょっとチャラい性格なのに、皇子としてちゃんと敬語を使うところとか好きだったなー……。

てか早く授業終われっ!!こんなに近かったら死ぬ……。

【キーンコーンカーンコーン】

お、終わったぁ……。
放課後までよく耐えた私……、表情筋が死ぬかと思った。
本当に距離が近いんだから……まったく。

 でも、アイオライトに抱く感情とは別物だよね。
やっぱり、アイオライトは特別だ。

「シルエ様、いらっしゃいます!?」
「あら、ロディ様?どうされましたか」
教室の窓からロディ様の声がしたので窓から顔を出した。
「不審者ですわっ!ただちに鎮圧いたしますっ!」
「あ、はいっ!」
学園に不審者なんて入るんだ……。
えっと、どうやって行こう……?

「……捕まっていてください!!」
「えっ?ひゃああぇあっ!!」
窓から手を引っ張られた。こ、ここ5階ですよ!?

「ミル・ブレイス!」
えっ、ロディ様、木属性……?
地面から大きな蔓が校舎から生えた。
その蔓が滑り台のようになって、地に向かっていく。

「うわぁぁっ!!」
「喋ると舌を噛みますわよ!」

そ、そんなぁ……。私前世から高所恐怖症なんだけどぉ!!
これジェットコースターじゃん!!

「よっと!ごめんなさいねシルエ様。乗り心地が最悪だと師範にも不評だったんですの。」
「……でしようね」

うえっ、気持ち悪い。
乗り物酔いと一緒の感じだ……。

「えーと、大丈夫ですの?」
「……かろうじて。で、不審者とやらはどちらに?」
「あそこですわ。ほら」

指さされた方向を見る。
……黒のローブを着た……、女?
校門を破壊して入ってきている時点で不審者……なのは間違いないけど、
「……あれ、何者ですの?」
「知っていれば対処は済んでいましてよ。」
「それもそうですわね。」

「……ていうか、私たちペアではありませんわよね。何故?」
「ここが1年の校舎から1番近いからですわ。
1年の正式役員はいないですし、私たちフォルティアの2人がここの1番近くにいたということです。」
「あー……、なるほど」
「嫌でしたか」

「そんな怖い顔なさらないで下さいな。早く終わらせてしまいましょう、先輩方のお手を煩わせる前に、ね」
「……それもそうですわね。」

うう、初任務?だ……。
1年2人ってちょっと不安だな……。
さて、ロディさんがどんな魔法を使うタイプなのか。

「ミル・ブレイス!!」
あれ、さっきの魔法と一緒?
魔法の応用かな……?

【バッチィンッ!!】

……ふぁ?
蔓の、鞭ですと……?
女に向けてされた鞭の攻撃は避けられたが、その攻撃の威力は地面にビビが入ったことからすぐに分かった。なんて豪快な魔法……。
あんな重そうな鞭をよく片手で……。
あの最悪なジェットコースターの方が応用ってことか。

「さあ!行きますわよシルエ様!!」
「は、はい。」

次々と鞭で攻撃をしていくが、女は軽やかに攻撃をかわしていく。

……これじゃキリないよね。
じゃ、ここはこすい魔法が得意な金属性の私の出番かな。

「デ・マリエル、デ・フレオニル」

魔法の同時発動って、実践では初めて使うな……。
でも、大丈夫……じゃなきゃ終わる。

魔法針に魔法糸を通していく。
……よし、これを、操る!

この女をずっと見てると、避ける場所のパターンが分かってくる。
次、ここに飛ぶ……。

「なっ!」
捉えた!女が飛んだ位置を針が襲った。
女が驚きの声を漏らす。
糸で操った針が女の体に刺さる直前で止めた。
「動かないで。あなた何者?」
「……はぁ。降参です」
と、両手をあげたので、ロディ様とうんとうなづいた。

「ユーリア!?」
「ソラ様!」
え、何でここでソラ皇子が……?

「あ、私、ソラ皇子の従者のユーリアともうします。すみません手荒な真似をして。
主が通う学び舎のセキュリティが気になりまして」

この女、ソラ皇子の従者!?ていうかだからって校門壊すなバカ!!

「……あの、うちのがすいません。
にしても、最後のお見事です。シルエ嬢。
あんなに繊細な魔法をお使いになられるなんて」
「それほどでもございませんわ。ロディ様の攻撃がなかったら出来ない技ですもの」
「いいや、あなたは十分に強く美しい。」

この女たらしめ……。すぐにこういうことを言う。
「あの、シルエ嬢。よろしければ」
……え?
何で、私に膝まづいてるの?
「私の妻になっていただけませんか」


……は!?ちょちょちょ、展開狂いすぎでしょ!!カナリアはどうした!?
隣国の皇子に求婚されるなんて、ヒロインの立場戻ってきてない!?

……推しキャラ出現かと思いきや、まだヒロイン放棄は終わってなかった……、ぽいです。
まさかのヒロイン放棄やり直し、です。
しおりを挟む
感想 29

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(29件)

emi
2021.05.02 emi

面白く読んでいます、
続き、早く読みたいです。

凪鈴蘭
2021.05.10 凪鈴蘭


emi さんへ

返信が遅れて大変申し訳ありません!!
面白いと思って頂けてすごく嬉しいです。
また時間があれば書き進めたいと思っているので、
更新した際にはよろしくお願い致します<(_ _)>

解除
黒猫
2020.04.19 黒猫

この作品素晴らしいのに...なんか自慢っぽいですけど私小学校上がってから絶対一日一冊は小説読んでいたので結構小説は読んでるつもりです!
凪さんの小説はその中でもかなり印象に残るものでした!!(偉そうにすみません💦)

凪鈴蘭
2020.04.19 凪鈴蘭


黒猫 さんへ

本当にそんなに褒めてもらったこと初めてです(❁´˘`❁)♡
小学校からそんなに本を読まれててすごいです!
私もよく本読んでて、そのせいですっかり眼鏡なんですよね泣

後全然偉そうなんかじゃないですよ!
お褒めいただき光栄です(❁ᴗ͈ ᴗ͈)”
がっかりされないようにこれからも頑張りますね!

解除
黒猫
2020.04.18 黒猫

もう更新される予定はありませんか?
とっても楽しませていただきました!
次の話待ってます!!!!

凪鈴蘭
2020.04.18 凪鈴蘭


黒猫さんへ

これ出版申請通らなくて落ち込んでから書かなくなっちゃったやつです…。
書けたら書きたいんですけど、
この作品のオチどうすんだ…(∩´﹏`∩)
となったら何書けばいいか分かんなくなっちゃったんです……。
でも書けたら書きたい٩(ˊᗜˋ*)و

解除

あなたにおすすめの小説

病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。

恋愛
フィオナ・ローレラは、ローレラ伯爵家の長女。 キリアン・ライアット侯爵令息と婚約中。 けれど、夜会ではいつもキリアンは美しく儚げな女性をエスコートし、仲睦まじくダンスを踊っている。キリアンがエスコートしている女性の名はセレニティー・トマンティノ伯爵令嬢。 セレニティーとキリアンとフィオナは幼馴染。 キリアンはセレニティーが好きだったが、セレニティーは病弱で婚約出来ず、キリアンの両親は健康なフィオナを婚約者に選んだ。 『ごめん。セレニティーの身体が心配だから……。』 キリアンはそう言って、夜会ではいつもセレニティーをエスコートしていた。   そんなある日、フィオナはキリアンとセレニティーが濃厚な口づけを交わしているのを目撃してしまう。 ※ゆるふわ設定 ※ご都合主義 ※一話の長さがバラバラになりがち。 ※お人好しヒロインと俺様ヒーローです。 ※感想欄ネタバレ配慮ないのでお気をつけくださいませ。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

【12/29にて公開終了】愛するつもりなぞないんでしょうから

真朱
恋愛
この国の姫は公爵令息と婚約していたが、隣国との和睦のため、一転して隣国の王子の許へ嫁ぐことになった。余計ないざこざを防ぐべく、姫の元婚約者の公爵令息は王命でさくっと婚姻させられることになり、その相手として白羽の矢が立ったのは辺境伯家の二女・ディアナだった。「可憐な姫の後が、脳筋な辺境伯んとこの娘って、公爵令息かわいそうに…。これはあれでしょ?『お前を愛するつもりはない!』ってやつでしょ?」  期待も遠慮も捨ててる新妻ディアナと、好青年の仮面をひっ剥がされていく旦那様ラキルスの、『明日はどっちだ』な夫婦のお話。    ※なんちゃって異世界です。なんでもあり、ご都合主義をご容赦ください。  ※新婚夫婦のお話ですが色っぽさゼロです。Rは物騒な方です。  ※ざまあのお話ではありません。軽い読み物とご理解いただけると幸いです。 ※コミカライズにより12/29にて公開を終了させていただきます。

婚姻初日、「好きになることはない」と宣言された公爵家の姫は、英雄騎士の夫を翻弄する~夫は家庭内で私を見つめていますが~

扇 レンナ
恋愛
公爵令嬢のローゼリーンは1年前の戦にて、英雄となった騎士バーグフリートの元に嫁ぐこととなる。それは、彼が褒賞としてローゼリーンを望んだからだ。 公爵令嬢である以上に国王の姪っ子という立場を持つローゼリーンは、母譲りの美貌から『宝石姫』と呼ばれている。 はっきりと言って、全く釣り合わない結婚だ。それでも、王家の血を引く者として、ローゼリーンはバーグフリートの元に嫁ぐことに。 しかし、婚姻初日。晩餐の際に彼が告げたのは、予想もしていない言葉だった。 拗らせストーカータイプの英雄騎士(26)×『宝石姫』と名高い公爵令嬢(21)のすれ違いラブコメ。 ▼掲載先→アルファポリス、小説家になろう、エブリスタ

好きだと言ってくれたのに私は可愛くないんだそうです【完結】

須木 水夏
恋愛
 大好きな幼なじみ兼婚約者の伯爵令息、ロミオは、メアリーナではない人と恋をする。 メアリーナの初恋は、叶うこと無く終わってしまった。傷ついたメアリーナはロメオとの婚約を解消し距離を置くが、彼の事で心に傷を負い忘れられずにいた。どうにかして彼を忘れる為にメアが頼ったのは、友人達に誘われた夜会。最初は遊びでも良いのじゃないの、と焚き付けられて。 (そうね、新しい恋を見つけましょう。その方が手っ取り早いわ。) ※ご都合主義です。変な法律出てきます。ふわっとしてます。 ※ヒーローは変わってます。 ※主人公は無意識でざまぁする系です。 ※誤字脱字すみません。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。