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第11話 生徒会
しおりを挟む「それではアイオライト、失礼いたしますわ。」
「あ、シルエ!」
「はい?……わっ」
もう一度抱きしめられる。
「あ、アイオライト……。ハグは先程もしたじゃありませんか。」
「嫌か?」
「嫌じゃないってわかって聞いているでしょう。
……ずるいです」
「……可愛い君の方がずるいんだよ。ハグでそんなに恥ずかしがってちゃ、この先もたないよ?」
こ、この先……!?
は、ハグの次って、ことは……。
「ふっ……、可愛い。じゃあ仕事があるから戻るよ。」
「はい。また明日……」
離れるのがこんなに寂しいだなんて、もう好きになってるでしょこれ……。
前世から好きになったものには依存する癖があるから気をつけないと……。
「ただいま帰りました」
「あ、シルエ……!帰ったのか」
「どうされたのですかお兄様……。」
こちらに駆け寄ってきた兄の顔には、焦りが浮かんでいた。
「まずいことに、なった。」
「え……?」
「お前、生徒会に目をつけられた。」
……生徒会に、私が?
待って私まだ1年生だよ!?
生徒会って成績も魔法の上位者5名の世界じゃないの?
「生徒会に……?生徒会の役員の席は埋まっていますよね?」
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「え?」
正式な役員ではない、残りの2人……?
それって……
「生徒会長が選ぶ、フォルティアと呼ばれるメンバーのことだ。フォルティアは、次期生徒会長候補に選ばれた人間のことを意味する」
「……で、目をつけられたって、どういう」
「お前、何回もフォルティアになれという話が出ているのにその話を蹴りまくってただろ。基本的誘いが来たら断れないが、お前が断れたのはルナリス家の子女だったからだ。」
……んー?
そんな話知らないんだけど……。
あれかな?私がシルエ・ルナリスになる前の、
第1王子にしか興味なかった時期にって、ことかな。
「もう蹴れる話じゃない。行かないと、大変なことになるかもな……。」
「た、大変なことって……?」
「……会長は王国宰相家の人間であり、王族のリタ家の分家にあたる家系の人間だ。同じ公爵家でも、ルナリスよりかは位が高い。」
……何してんの私!?
そんな人からの話何回も蹴るなんて……。
「申し訳ありませんお兄様。明日会長様に謝罪して参ります。フォルティアの話も飲まないという選択肢はないでしょうし」
何より、私のせいでこの家やお兄様に迷惑をかけるわけにはいかないのよね……。
あーもう、どうしてこうも私はトラブルに巻き込まれるの……。
翌日、すぐに私は放課後生徒会長に呼び出され、生徒会室へと向かった。
「あれ?シルエ?」
「アイオライト?どうしてここに……」
「呼び出されたんだ。生徒会長に」
「私もですわ。」
「入ろうか。」
「ええ。」
「失礼いたします。」
「……お前がシルエ・ルナリス?」
「はい。お初目にかかります。ルナリス公爵家のシルエと申します。」
と、礼をした。
「で、お前がその女の婚約者のアイオライト・エリアネスだな。」
「はい。」
生徒会長と思われる、男子生徒が、こちらに歩いてきた。
【ドサッ!!】
…えっ?机に押し倒された。
「な、何をっ…」
「これは罰だ、シルエ・ルナリス。何回も、何回もこの俺の誘いを断った罰。婚約者の前で俺にめちゃくちゃにされるといい。」
ブチッと、制服のリボンがほどかれた。
「いっ、嫌!!」
「逆らってもいいのか?お前死ぬぞ」
「このっ…!!」
「お前もだアイオライト・エリアネス。お前は公爵より下位の伯爵だ。剣はぬいてくれるなよ」
なんなのこの人……!?めちゃくちゃなんだけどっ…。アイオライトの目の前で私を犯そうって言うの?……最低。
ていうか、婚約者の前で汚されるくらいなら、
抵抗するけどね。
「デ・フレオニル」
魔法を発動した。
「!!」
私は氷魔法も得意だけど、自分のメインとなる属性は金属性。
生徒会長の首筋に、何本もの針が襲いかかろうとした所を寸止めにした。
そして、アイオライトも同時に生徒会長の首筋に剣を向けていた。
「貴様ら……。これがどういうことか分かっているのか」
「そちらこそこの状況を理解していてますの?
あなた今、私達に命を握られているんですのよ。」
「殺されたいのか」
「こちらのセリフですわ。あ、動かないでくださいましね。死にますわよ。」
「どこまでも生意気だな。」
「褒め言葉ですわね。命乞いくらいしてみますか?」
と、嘲る様に生徒会長を見た。
「ふっ……あっはっはっはっは!!面白い。気に入った。フォルティアになる話を何回も蹴ったことも、今起きたことも許そう。」
と、生徒会長は両手を上げてみせた。
「降参だ。シルエ・ルナリスは魔法を解除し、アイオライト・エリアネスは剣を収めよ。」
……また何かしてくるような気配は感じないし、大丈夫だろう。
「承知致しました」
「先程の無礼をお許しいただき、感謝いたします。」
「良い。俺がしたことも女子にしていい物ではなかった。すまぬな。」
「ホントですよ。さっきのはセクハラ以上です」
「ちょ、シルエ!」
……さすがに正直に言い過ぎて怒ったかな。
「ふっ……くっくっく。お前、本当に面白いな。所でセクハラとは何だ?」
……しまった。セクハラって言葉はこの世界にはないし……。
「い、異国の言葉ですの。立場の強いものが弱いものに嫌がらせをする……みたいな意味の言葉です。」
「ふぅん。あー、自己紹介をしていなかったな。
俺はノーシュ公爵家のシセリゼ・ノーシュ。この学園の成績トップで、生徒会長をしている。」
自分で言うか、とも思ったが、オーラがただの貴族とは、やはり違う。
「で?シルエ・ルナリス。お前はフォルティアになる権利が与えられた。どうする?」
「拒否権などないですよね?あんなことをされて断るほどバカではありません。……謹んでお受けいたします。」
「うむ。次期生徒会長候補のフォルティアのあと2人は2年生と1年生の一人づつ。その2人を追い抜かし、生徒会長になることを期待している。」
「はぁ……。あ、あの、もう1人のフォルティアって、兄のことじゃないんですか?」
「マナは正式な役員だからフォルティアではない。」
「では、正式な役員は次期会長にはなれないのですか?」
「そんなことはないが、フォルティアより強いと魔法で証明する必要があるがな」
「なるほど……。」
「歓迎するよシルエ。」
最初にあんなことしときながら何が歓迎する、よ。
バカバカしい……。
でも、従うしか選択肢がないならしょうがない。
黙って受け入れよう。
「光栄にございます、会長。」
「お前絶対光栄とか思ってないだろ。あんまり俺に嫌がる姿勢を見せない方がいいぞ。俺は嫌がる人間を見るのが大好きだからな」
きっしょ!!ドSか!鬼畜か!!
「おっと。そんな軽蔑するような目で見てくれるな。照れてしまう」
「は?嫌がる顔を見るのが好きなんじゃないんですか?」
「お前には蔑まれる様な目で見られるのも悪くない。」
頬赤くしてんじゃねーよ!!うぉえええ。まじキモイよこの人……。
ガチの変態じゃん。
つーかSなのかMなのかハッキリしてくれ……。
「というかお前、そんな雰囲気だったか?えらくサバサバしているな……。この前声をかけた時はぶりっ子の鏡という感じだったのに。」
「えっ」
「第1王子殿下に、殿下ぁ、おはようございまぁす♥って言ってたぞ」
「あ、それは忘れてくださいまし。昔のことですので」
「ほぉ?と言われると忘れたくなくなるな」
「……気持ち悪いので黙って頂いていいですかね」
「やっぱり面白いな。お前をフォルティアにして良かった」
……ていうか、何で私をフォルティアに?
2年生でも優秀な人はいるはずなのに、何故1年生の私が……。
「何故私がフォルティアに?」
「ん?言わんでも分かるだろう。優秀だからだ」
「2年生には私以上の方がいらっしゃるはずです」
「まぁそうだな。だがフォルティアに選ばれる条件は生徒会長に選ばれる条件とは異なる。」
「え?」
「フォルティアに選ばれる条件は、まず上位の貴族であること。伯爵以下の貴族は認めない。続いて優秀であること。立場が上の者にもひるまないこと。堂々としていること。貴族の誇りを持っていること。以上だ。」
……生徒会自体には高位の貴族だろうが平民だろうが下位の貴族だろうと優秀なら入れるのに、会長にはなれないってこと?候補生の時点でそんな条件クリアしなきゃいけないなんて……。
「これから忙しくなるぞシルエ。フォルティアにも仕事はある。改めて、生徒会へようこそ。」
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