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第三十六話 愛寵した彼女 (1)

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「何だって伯爵がここに用があるんだよ…。」

顔をぶすっとさせて、ガジュが送られてきた手紙を目を細めて眺める。

「その、ドフトボルケ伯爵家は私の母方の家でして…。王家の血を引き、王家からの信頼を預かる家として
国内の領地を視察する役目を受けています。きっとこれは、近いうちミテスバクムに視察をしに向かうという
意味なのでございますわ。」

そういえば、リベルタの母であるリティーシアは先王の娘、皇女であった人物だ。ドフトボルケ家はその
彼女とつながりがある一族らしい。

「公私混同なんじゃないの…。ミテスバクムには何年も視察なんか来ちゃいない。完璧に自分の立場を
利用しているみたいに見えるね。」

「ま、まあまあ。お出迎えしないのも失礼ですし、伯爵家の皆さんがいらっしゃった時には私が対応させて
いただきますね。」

「それはありがたいけど、一人で対応するのは許しません。必ずウォルコットと行動するように。」

先程の件で、ガジュは偉くディランを敵視しているように見える。そんなに心配しなくても、と思うが
ここは彼を心配させないためにそれに頷いておこう。

「承知いたしました。伯爵家の皆様に対応する際は、必ずウォルコットと行動を共にすることをお約束
いたしますわ。このリベルタ、必ず貴方の妻としての役目を果たして見せますわ。」

「ちょっと心配ではあるけど、頼もしい奥さんだね。僕は申し訳ないんだけれど、ここ数日ミテスバクムを
離れてしまったのもあって結界が少しだけど弱まっているみたいで…明日から手が離せなくなる日が続くかもしれない。だから、対応はベルに任せきりになってしまうかもしれない。」

「まあ、そうだったのですね。もちろんでございます、お任せください。」

この国では、他の家の者が自分の領地に訪れる際、挨拶やもてなし、案内をすることは妻の役目である。
だから元から対応は自分がするつもりだったのだが、気を使ってくれたのが少し嬉しかった。
それより、明日から手が離せなくなる状況になってしまうのはしょうがのないことなのは分かっているものの、
少し寂しかった。でも、ガジュの貼る結界がなければ、この国は成り立っていない。だから、寂しいと口にするのはおこがましいかもしれない。

「助かる。ありがとう。」

「いいえ。…あの、その、明日から忙しくなってしまうのですよね?」

「まあ、そうなるかな。だから食事もほとんど一緒に出来ないかも…ごめん。」

「私のことなどお気になさらないでくださいませ!大丈夫ですわ。」

「そう?…まあでも、僕はベルと数日離せないのは嫌だから、…だから、明日からあんまり会えない分、
少し触れさせて。」

「え?…ん、あっ…、」

ガジュの部屋で、ソファーで二人過ごしていたので口付けをされたまま、押し倒されてしまう。
いつもは、触れるだけのキスから始まって、どんどん深くなっていくのに今日はいきなり深く口付けられる。

「ん、ガジュ様…ふぁっ、」

「集中して。」

名前を呼ぶと、それを塞がれるようにまた深い口付けが降ってくる。リベルタの唇から、ガジュの唇が
離れたかと思うと、次は首筋へと進んで行く。首にキスをされると、少しいやらしい音がすぐそばの耳から
聞こえてしまう。それが毎回恥ずかしくて、リベルタはいつもぎゅっと目をつぶる。

だが、いつもガジュはここまでしかしてくれない。一度その先を試みたものの、今思い出しても恥ずかしいが
鼻血を出して怒られてしまった。だから、自分から誘うようなことはあまり言えない。故にいつまでも
夫婦らしい愛情表現はここまでで、彼が首筋に痕をつけ終わるとただ抱きしめ合って、眠る。

「…ごめん、もしかして嫌だった?」

「えっ?…何で、ですか。」

「浮かない顔してたから。嫌だったら本当にすぐ言って…、」

「い、嫌じゃないです!!全然、そんなんじゃなくて…。」

気が付いたら、どうやらうかない顔をしてしまった様だ。気を使わせてしまったみたいで、彼に申し訳なくなる。

「…うん、じゃあどうしたの?」

「そ、それが言えなくって…ですね。」

「なに、気になるじゃん。言ってよ。」

「言えないんですってばぁ…。」

だってまた鼻血なんて出してしまえば恥でしかない。そうでなくてもまたとんでもないことを仕出かして
しまうかもしれないのだ。恥ずかしくて、少し言えたものではない。

「…やっぱ嫌だった?」

「本当にそれは違うくて!もっとしてくれてもいいかなって気はしてるんで違うっていうか…!あ、、」

「……ふーん。もっと、ね。」


ついうっかりと、本音が飛び出してしまった。いや、かなり前にも飛び出した例は何度もあるのだが、
極力言わないようにしていた言葉が勝手に口から出てしまい、リベルタは顔が赤くなるのを抑えられなかった。


「…じゃあいつもはしてないようなこと、今からしてみる?」











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みんなの感想(29件)

オラトリオ
2022.02.03 オラトリオ

36話と37話が同じ話です。

凪鈴蘭
2022.02.04 凪鈴蘭


オラトリオさん へ

二度もすみません!何故か二回投稿されていたことにも
気が付かず大変申し訳ありませんでした💦
ありがとうございました!🙇‍♀️

解除
オラトリオ
2022.02.02 オラトリオ

36話が二回投稿されている。

凪鈴蘭
2022.02.02 凪鈴蘭


オラトリオ さんへ

初めまして!気が付きませんでした、教えて下さり
ありがとうございました💦

解除
おゆう
2022.01.20 おゆう

仮にもリベルタに恋してただろうに、恋してる彼女は想像も出来なかったのかな😅。好きなら彼女の幸せを願いなさいよねヽ(`Д´)ノプンプン。

凪鈴蘭
2022.02.01 凪鈴蘭


おゆう さんへ

返信するのが遅くなり、大変申し訳ないです💦
今回も感想ありがとうございます!😭😭
そうですね、完璧なリベルタしか見ていなかったからこそ想像
できなかったのかもしれません。そして恋する彼女をまだ理解出来てないんですよね〜これが\(^o^)/

解除

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