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第三十三話 妬心のワルツ (2)

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「…どうも。ミテスバクム領主のガジュ・フィーリア・ミテスバクムと申します。」

「よく存じ上げております。お嬢様の旦那様となられる方ですから。」

「そうでしたか。」

形式的なやり取りをして、場が静まり返る。ガジュは彼から、リベルタとどういう関係なのかを聞き出したかったのだか自分から聞いてしまえば大人気ないのもいい所だ。ここは堪えて、社交的な笑みだけ送っておく。

「ディランは私達の従兄弟ですよ。ね?お姉様。」

「従兄弟?」

「はい。彼は私達より歳上なので、兄のような存在なのですわ。
あと、私達はダンスの師が一緒でして…それでつい懐かしくてここで少しだけワルツを。」

「そうだったんだ。」

音楽も無しに完璧な踊りを見せていたのだから、きっと二人で何度も踊ったことがあったのだろう。それにしても従兄弟か、ともう一度ガジュはディランをジッと見つめる。知性的な印象は、どことなくリベルタに似ていない気もしなくはなかった。

「お嬢様とガジュ殿はもうミテスバクムにお帰りになられるのですか?」

「お嬢様じゃなくても結構よディー。変な感じがしますわ。」

「そうは言ってもねえ、既婚者の女性をそう易々と相性では呼べないよ。」

「リベルと呼べばいいじゃない。私達従兄弟なんだから。」

「うーん、そうかい?分かったよリベル。」

会話を聞く限り二人は仲睦まじい関係の様だった。従兄弟といえど、それ以上何がありそうな程には。

「…長居するのもオールドローズ侯爵家の皆さんに申し訳ないので、もうしばらくしたら帰る予定です。」

「そうだったのですね。…あの、実は今夜ドフトボルケ伯爵家で私が主催する夜会があるのです。よろしければ、ご招待させていただきたいのですが。」

夜会か、と顔をしかめてしまった。なんせガジュは人前に出ることは多くなく、竜の鱗を見られては気味が悪いと思われることも少なくない。ましてやダンスも得意ではない。

「お招きいただけて大変嬉しいのですが、私のような者がその様な場に出れば貴方のお客様を不快にさせるでしょうから遠慮させていただきます。」…と断るのがきっと妥当だろう。よし、そうしようとガジュが口を開けた時だった。リベルタが少しだけ大きめの声で、彼が言おうとしたことを塞いだ。

「私、早く二人きりになりたいからミテスバクムに帰りたいなぁ…。ね、ガジュ様?」

そう言って彼女は、甘えるような声色で腕に抱きついてくる。それも大変訓練された上目遣いで。

「え、何。」

「だってガジュ様、自分が竜人ってことで断ろうとなさったんでしょう?好きな方に自分を否定するようなこと言って欲しくありませんわ。」

小声で問いかけると、リベルタらしい堂々とした回答が返ってくる。そこまで言ってくれる彼女の言葉に、自然と背筋が伸びた。

「私も妻と同感でして…、大変申し訳ありません伯爵殿。」

「はは、仲がとっても良いみたいですね。こりゃ参った。」

「えへへ、そうなのよ。…あ!帰り支度がまだ私まだ終わっておりませんでした。ここでお待ちを!」

「あっ、私も手伝います~!」

そう言って二人は屋敷の中へと入っていく。二人きりになるのは、
さすがに気まずい…と思ったことろで、温厚そうな顔が、毒を吐く。

「あの…竜人殿。」

「あ、はい。」

「まだ挙式も上げてないんですよね?助かりました。」

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