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第三十二話 薔薇の君のお相手 (2)

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上にのしかかられた時、リベルタは驚きもせずににこりとだけ微笑んだ。彼はまんまと挑発に乗せられたようだった。

「挑発するとか生意気じゃん、また鼻血だしたいの?」

「あの時は失礼しましたわ。でも私、おやすみのキスをした覚えしか無くってよ。だってガジュ様が私がその様なことを求めるのを禁止っておっしゃったんだもの。」


先日の皇太子ルイスフォードに襲われかけた時、リベルタが鼻血を
出さなければ二人は一線を超えていたかもしれない。だからそれを
案じてガジュは自分から求めるようなことをするのはしばらく禁止」と彼女に言った。そして一線を超えかけた時、お互い気持ちが早っていたこともあり冷静になった二人は、しばらく
「おやすみのキス」以外のスキンシップを取らなかった。
だからリベルタも先程はおやすみのキスをいつもより多くしただけ。少しだけ言葉に誘いを含ませて、言いつけ通り自分からは何も求めていない。

「あくまで言いつけ通りってか…。」

「ええもちろん。私ってば従順な妻でしょう?」

「そんな玉じゃないだろっての。」

リベルタは教養こそ完璧なものの行動はじゃじゃ馬みたいなものだ。彼女に従順なんて二文字はこれから一生存在しないだろう。

はあ、とガジュはため息を吐くと無言でリベルタの顎を持ち上げ、
軽く口付ける。その間は、お互い目を閉じ無かった。ただ彼女は
口付けが帰って来ることを分かっていた様に、ガジュの口が離れるとにんまりと笑って彼の首に手を回した。

「あら、もうお終いかしら。」

「だと思うの。」

「…いいえ。」

今度は軽い口付けも無しに、リベルタの小さな口にガジュの舌が
少し乱暴に入り込んだ。少し息苦しそうな顔をする彼女に、
ガジュは楽しそうにしてさらに舌を絡ませる。ぴちゃりとした
音がベッドの上に響き渡り、吐息や喘ぎもそれに混ざる。

「んっ、あっ…ガジュ様…、」

「なに、?」

「いいえ、んっ…何でも、ございません、」

激しい口付けをしてくれていた口はいつの間にか耳に移って、
また彼女の耳元でいやらしい音を立て続ける。
ゾクゾクとした感情に身体が支配され、リベルタはむずむずと
無意識に両太ももを擦り合わせた。

「……お嬢様も随分いやらしくなるもんだね。」

「はっ、あ…、今何と?」  

いつもはここまでで夫婦としての触れ合いはストップされる。
だが時折、リベルタはまだ物足りないとでも言うような表情をする。「もう終わり」という言葉に口では頷きながらも、目はまだ
物欲しそうな顔をしていて、それでいて無意識にこちらを誘うような仕草をしてくるのだ。そんなことをされては男としてもちろん
手を出したくなる。だがここで手を出してしまう訳にも行かず、
止めてしまうのも何だか惜しい。彼女の仕草や吐息の一つで、いつか簡単に自制が効かなくなってしまうのが恐ろしくて仕方がない。


「ねえ、後ろむいてくれる?」

「後ろ、ですか…?」

「そう。うつ伏せになって。」


リベルタは不思議に思いながらもガジュの言う通り、ベッドで
うつ伏せになる姿勢を取った。マッサージ?いやそんなことを
して貰える空気では無かったはずだが、と疑問を募らせた次の瞬間、彼女の身につけていたネグリジェのリボンが解かれた。

「っ、えっ……!?」

リボンが二つ三つ解かれ、はらりと音がして、リベルタの白く美しいうなじと背中だけが顕になる。

「な、何を、…ぁうっ!?やっ……、」

ガジュが何をするつもりなのか分からず、少し恐ろしくなって
振り返ろうとすると、ガブりと首筋に強く噛み付かれる。今まで首筋に触れられても、痕を付けられても、こんな風に乱暴に噛みつかれることは無かった。だから噛み付かれたという事実が受け止められず、痛みに歪み涙目になった顔でリベルタはガジュを見つめる。
するとガジュはリベルタの首筋についた自分の歯型を見て、少し不思議そうな顔をしてから、満足げな笑みを浮かべていた。 


「が、ガジュ様…?」










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