73 / 82
第三十二話 薔薇の君のお相手 (2)
しおりを挟む上にのしかかられた時、リベルタは驚きもせずににこりとだけ微笑んだ。彼はまんまと挑発に乗せられたようだった。
「挑発するとか生意気じゃん、また鼻血だしたいの?」
「あの時は失礼しましたわ。でも私、おやすみのキスをした覚えしか無くってよ。だってガジュ様が私がその様なことを求めるのを禁止っておっしゃったんだもの。」
先日の皇太子ルイスフォードに襲われかけた時、リベルタが鼻血を
出さなければ二人は一線を超えていたかもしれない。だからそれを
案じてガジュは自分から求めるようなことをするのはしばらく禁止」と彼女に言った。そして一線を超えかけた時、お互い気持ちが早っていたこともあり冷静になった二人は、しばらく
「おやすみのキス」以外のスキンシップを取らなかった。
だからリベルタも先程はおやすみのキスをいつもより多くしただけ。少しだけ言葉に誘いを含ませて、言いつけ通り自分からは何も求めていない。
「あくまで言いつけ通りってか…。」
「ええもちろん。私ってば従順な妻でしょう?」
「そんな玉じゃないだろっての。」
リベルタは教養こそ完璧なものの行動はじゃじゃ馬みたいなものだ。彼女に従順なんて二文字はこれから一生存在しないだろう。
はあ、とガジュはため息を吐くと無言でリベルタの顎を持ち上げ、
軽く口付ける。その間は、お互い目を閉じ無かった。ただ彼女は
口付けが帰って来ることを分かっていた様に、ガジュの口が離れるとにんまりと笑って彼の首に手を回した。
「あら、もうお終いかしら。」
「だと思うの。」
「…いいえ。」
今度は軽い口付けも無しに、リベルタの小さな口にガジュの舌が
少し乱暴に入り込んだ。少し息苦しそうな顔をする彼女に、
ガジュは楽しそうにしてさらに舌を絡ませる。ぴちゃりとした
音がベッドの上に響き渡り、吐息や喘ぎもそれに混ざる。
「んっ、あっ…ガジュ様…、」
「なに、?」
「いいえ、んっ…何でも、ございません、」
激しい口付けをしてくれていた口はいつの間にか耳に移って、
また彼女の耳元でいやらしい音を立て続ける。
ゾクゾクとした感情に身体が支配され、リベルタはむずむずと
無意識に両太ももを擦り合わせた。
「……お嬢様も随分いやらしくなるもんだね。」
「はっ、あ…、今何と?」
いつもはここまでで夫婦としての触れ合いはストップされる。
だが時折、リベルタはまだ物足りないとでも言うような表情をする。「もう終わり」という言葉に口では頷きながらも、目はまだ
物欲しそうな顔をしていて、それでいて無意識にこちらを誘うような仕草をしてくるのだ。そんなことをされては男としてもちろん
手を出したくなる。だがここで手を出してしまう訳にも行かず、
止めてしまうのも何だか惜しい。彼女の仕草や吐息の一つで、いつか簡単に自制が効かなくなってしまうのが恐ろしくて仕方がない。
「ねえ、後ろむいてくれる?」
「後ろ、ですか…?」
「そう。うつ伏せになって。」
リベルタは不思議に思いながらもガジュの言う通り、ベッドで
うつ伏せになる姿勢を取った。マッサージ?いやそんなことを
して貰える空気では無かったはずだが、と疑問を募らせた次の瞬間、彼女の身につけていたネグリジェのリボンが解かれた。
「っ、えっ……!?」
リボンが二つ三つ解かれ、はらりと音がして、リベルタの白く美しいうなじと背中だけが顕になる。
「な、何を、…ぁうっ!?やっ……、」
ガジュが何をするつもりなのか分からず、少し恐ろしくなって
振り返ろうとすると、ガブりと首筋に強く噛み付かれる。今まで首筋に触れられても、痕を付けられても、こんな風に乱暴に噛みつかれることは無かった。だから噛み付かれたという事実が受け止められず、痛みに歪み涙目になった顔でリベルタはガジュを見つめる。
するとガジュはリベルタの首筋についた自分の歯型を見て、少し不思議そうな顔をしてから、満足げな笑みを浮かべていた。
「が、ガジュ様…?」
0
お気に入りに追加
259
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】愛されないのは政略結婚だったから、ではありませんでした
紫崎 藍華
恋愛
夫のドワイトは妻のブリジットに政略結婚だったから仕方なく結婚したと告げた。
ブリジットは夫を愛そうと考えていたが、豹変した夫により冷めた関係を強いられた。
だが、意外なところで愛されなかった理由を知ることとなった。
ブリジットの友人がドワイトの浮気現場を見たのだ。
裏切られたことを知ったブリジットは夫を許さない。
貴方は好きになさればよろしいのです。
cyaru
恋愛
王妃となるべく育てられたティナベル。
第1王子エドゥアールとは成婚の儀を待つのみとなっていたが、そこに異世界からエリカという少女がやって来た。
エドゥアールはエリカに心を奪われてしまう。
しかしエリカには王妃という大役は難しく、側妃とするにも側妃制度はない。
恋愛感情のない結婚であっても寵愛を向ける女性がいると判っていて自分の人生を捧げる事は出来ない。エリカを手放せないエドゥアールにティナベルは「婚約を解消しましょう」と告げたが・・・。
ティナベルに煽られ怒りに任せてエドゥアールは禁断のロープを斬りティナベルは生涯を終えたはずだった。
目が覚めたティナベルは同じ時を過ごす2度目の人生だと直ぐに気が付く。
今度は誰にも自分の生き方を決めさせない。
ティナベルは自身の足で二度目の人生を歩き始める。
★↑例の如く恐ろしく省略してます。10日 序章。11日、12日 本編です。
★2月10日投稿開始、完結は2月12日22時22分です。
★シリアスを感じ、イラァ!とする展開もありますが、出来るだけ笑って頂け・・・お察しください。一応、恋愛でして、最終話ではヒロイン「は」幸せになります。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません。
初夜に「別にあなたに愛されたいなんて思っていない」と告げたところ、夫が豹変して怖い
しましまにゃんこ
恋愛
新婚初夜。無駄に飾り立てられた部屋で何時間も待ちぼうけをくっていたマリアンナは、ようやく現れた夫、アレンの姿に安堵する。しかしアレンは、浴びるほど酒を飲んでいた。「ごめんね、マリアンナ。僕を許して欲しい」謝罪の言葉に胸が痛む。
優秀な姉の身代りにと望まれた愛のない結婚。夫から愛されることはないだろう。それでも、使用人たちの手前、せめて同じベッドで寝てくれるようにとアレンに頼むマリアンナ。
向けられた背中に、マリアンナはそっと気持ちを打ち明ける。
二人の夫婦生活の行方は。
勘違いすれ違いからの甘々ハッピーエンドです。
作品はすべて、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+さんでも掲載中、または掲載予定です。
(完結)戦死したはずの愛しい婚約者が妻子を連れて戻って来ました。
青空一夏
恋愛
私は侯爵家の嫡男と婚約していた。でもこれは私が望んだことではなく、彼の方からの猛アタックだった。それでも私は彼と一緒にいるうちに彼を深く愛するようになった。
彼は戦地に赴きそこで戦死の通知が届き・・・・・・
これは死んだはずの婚約者が妻子を連れて戻って来たというお話。記憶喪失もの。ざまぁ、異世界中世ヨーロッパ風、ところどころ現代的表現ありのゆるふわ設定物語です。
おそらく5話程度のショートショートになる予定です。→すみません、短編に変更。5話で終われなさそうです。
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる