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第三十二話 薔薇の君のお相手 (1)
しおりを挟むじっと、青の瞳がガジュを捕らえた。
それに彼はそーっと、少しずつ視線を逸らしていくがもちろん許してもらえるはずも無く、気がつけばリベルタに馬乗りにされていた。
「ま、待ってベル。僕だって好きで見たかった訳じゃないっていうか、偶然っていうか…?話し合おう、話せば分かるから。」
「あら、別に怒ってませんことよ。」
「じゃあ何故僕に馬乗りなさってるんでしょうか…?」
「んー?」
リベルタはガジュに妖艶な笑みを見せてクスッと笑うと、彼の唇と
顔の輪郭を撫でた。
「どうやったら貴方様の記憶が無くなるかな、と思いまして。
何がよろしいかしら。」
怒ってないと言ったとはいえ、気にしていない訳では無いらしい。
まあ現在の婚約者に、昔の婚約者とのことを祝福しろなどと喋る自分の肖像画は見られたくなかったのは頷ける。だがこのまま成されれるがまでは何をされるか分かったものではない。
「見たのは悪かったけど、何されても忘れられるものじゃないって言うか…。」
「そうかしら。」
「いやそうでしょ…?ごめん、その、こういう事今言うべきじゃないのは重々承知なんだけど、この体制は、いかがわしい、よ。」
ナイトドレスを着た婚約者にベッドにて馬乗りされている。これは健全な男児としては我慢し難い状況でもあった。「あらまあ」と少し目を見開くリベルタからガジュはまた目を逸らす。正直言って肖像画が喋りだしたり祝福を求めて来たのには驚いたが、今そんなことはもうどうでもいい。
入浴後でいつもより良い薔薇の香りがする彼女が自分の上に跨っているから、少しの重みと肌の触れ合いを感じる。それがもう少し続けば顔が火照ってどうにかなりそうだった。
「まあこれは失礼。ガジュ様には少し刺激的でしたかしら。」
「うるさいな、そうだって言ってんの。あんたにはそういう恥じらいとか無いわけ?」
「どうかしら。」
さらりとオールドローズの美しい髪が、ガジュの頬に落ちてきたと同時に彼女は彼に口付けた。驚いて目を見開くガジュに、リベルタは小さくリップ音を鳴らしては二度三度それを繰り返す。そして最後の口付けから唇が離れると同時に、甘い吐息をだけを零した。
「…自分から熱烈な口付けをするのは、私恥ずかしいんですのよ。
だからこちらで勘弁して差し上げます。おやすみなさいませガジュ様。」
そう言ってにこりとリベルタは笑うと、「おやすみ」と言った通りガジュから降りて寝る姿勢を取り始める。それに彼は三秒ほどぽかんとした顔をしていたが、そうは行くかと逆にリベルタにのしかかった。
「…あら。もうおやすみを言ったではないですかガジュ様。」
「その気にさせといておやすみって何、ふざけんな。」
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