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第二十三話 少し行き過ぎた悪ふざけ (1)
しおりを挟む暗闇の中、ガジュの唇に何か柔らかいものがふれる。
それが何かを確かめなくても、それが何かが分かった。
「ちょ、ベル!?な、何してっ…、」
「聞かなくても分かってらっしゃるくせに。
私がそれを告げてしまえば恥ずかしくなるのはガジュ様ですよ。」
「そういうことじゃないの、なんで今したのかって話!
初めてがこんな暗闇なの嫌なんだけど…。」
リベルタの顔も見えぬま、ガジュは慌てふためく。
されて嫌だった訳ではない、決して嫌だった訳では無いが、
するならもう少しちゃんとした時にしたかったというのが彼の言いたかったことだった。それにリベルタには何もかもやられっぱなしなのだ。決意の言葉も、告白も、先程のキスも。
格好が悪いよりも、今は少し仕返しがしたい。
「お嫌、でしたか?」
「嫌だって思わないこと分かってやってるでしょ。ホント良い性格してる…。」
「すみません、帰らなくてはならないことが少し嫌で。
悪ふざけがすぎましたね、お許しください。」
くすくすとリベルタは小さく笑った。自室に帰ることが嫌だとは、
全く酷いことを言ってくれる。そんなことを言われては男は絶対部屋から帰したくなくなるに決まっているのに。それに先程の口付けを悪ふざけと称して、深い意味を持たせてこないことに少し腹が立った。
ガジュは天井の魔法石に魔力を飛ばして、部屋全体を明るくした。
それにリベルタはぎょっと目を大きくさせて、どういつもりだとでも言うようにガジュの方を見る。だが彼はそれを無視して、
力づくでリベルタをベッドに押し倒した。
「がっ、ガジュ様!?」
「あれ、さっきからの可愛い発言はこうなること分かってて言ったんじゃないの?あーそっかそっか、悪ふざけ、だもんね。じゃあ僕が今からこの明るい部屋の状態であんたにキスしても、悪ふざけで済まされるってことになるよね。」
「へっ…!?ん、むっ…?」
リベルタの返答を待たずに、ガジュは彼女の唇に自分の唇を
這わせた。それも、リベルタに羞恥心を与えるために少し音をたてたり、深く長く唇を重ねてみたりする。すると身体をビクビクとさせながらも少し抵抗してくるが、もう少しすると彼女はくたりと
動かなくなった。
「ふぁっ、もっ、無理です…許してっ!」
唇を離すと、いつも強気でしっかりとした目を持っているリベルタの瞳には涙がたまり、声もふにゃふにゃになっていた。
そしてもう抵抗する力は残っておらず、先程より余計ぐずぐずに
してしまった様だ。
無理とは言っていながらも、最中蹴り飛ばしてきたりはせずに
首に腕を回してきたりするのだから絶対に嫌がってはいない。
それにいつも強気でしっかりしているリベルタが、自分のベッドで
くたくたになり、ぐずぐずになっているこの状況をまだ少しだけ
楽しみたい。
「だめ。」
「ひぅっ、あっ…ホントにだめ!!ガジュ、さまっ…!」
少し強めに、ガジュはリベルタの首元に口付ける。
そしてそれを他の場所にも続けると、彼女の首筋にいくつか
跡ができた。
「この前ヨーゼフで言わなかったっけ?あんまり無防備でそういうことふざけてやってると襲うよって。」
「だっ、だめですこんなっ…はず、かしい…。」
「ふーん、自分がするのは恥ずかしくないのにされると恥ずかしいんだ。」
「私ここまでしてませんっ…!」
「…そう。じゃあやめてあげよっか。」
「えっ?」
ピタリと、ガジュがリベルタに触れる手を下げるとリベルタは
拍子抜けだと言うように目をまん丸にさせて、それでいて少し寂しそうな顔をしてくるから困ったものだ。
だからガジュは彼女に反省してもらうためにも目が笑っていない微笑みを作り、トントンと自分の首筋を指した。
「…?」
「さっきあんたの首に跡、三つ付けたんだよね。
自分の部屋に返して欲しかったら、付けた分だけベルが僕に付けて。」
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