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第十二話 穢い選択 (1)
しおりを挟むかなりキツい言葉に対して、リベルタの顔は笑っていた。
ここで不安な顔をすれば、シェーレにとって好都合にしか
ならないと思ったからである。
「…それと、シェーレさんもこのミテスバクムの住人なら
私にも最低限の経緯を払うべきです。形式上私は
ガジュ様の伴侶、つまりは次にミテスバクムと国を守護する
竜人の母体となるやもしれないのですよ。」
「…それは大変失礼しました。
でも私本気なの。あなたの次でもいいわ、もう一度ガジュの、…」
先程までは無かった、二人の間に敵対心を表す稲妻の様なものが
ガジュには見えていた。
「で、ガジュ様もどうされますか?
そうですね、選択肢は二つです。一つは、私は彼女が感傷に浸る
姿は見たくないので、しばらくガジュ様から離れますが…
シェーレさんにきちんと断りを告げること。もう一つの
選択肢は彼女を無視して…」
戸惑うガジュに、リベルタはにこりと微笑んで手を広げた。
「話に決着を付けないまま私と来るか。どうなさいます?」
我ながら穢い選択を押し付けたな、と思った。
このままシェーレに断りを告げるなら、この場をしばし離れると
リベルタは言った。この選択肢を選べば、リベルタを放置して
別の女としばらく話すこととなる。
二つ目の選択肢を選べば、ガジュはまだシェーレに断りを告げる
ことが出来ていないということとなる。断りを明確にしない、
つまりはシェーレを後妻に娶る気が無い訳でもないように
リベルタに思わせることとなる。
「…難しいこと言ってくれるじゃないか。
他の選択肢はないの?」
「ありません。…私が元婚約者に手酷い扱いを受けたのは
ご存知でしょう?だから、こういうことはきちんとして欲しい
んです。」
選択肢の穢さ、意味をガジュは理解したのか睨みをきかせた
笑顔でリベルタを見た。
「それとも、まだ正式な花嫁でない私に口出しするなと
怒ってくださっても構いませんわ。」
「何それ…結局ベルが全部傷つくことになる選択肢しかない
じゃないか。」
「あら、自分で聞いておいて傷ついたり誰かを責めたりしません。何なら私には傷つく権利だってありませんから。」
「そう。でも、ベルには僕に文句言う権利とかその他
もろもろの権利あるよ。」
「それは…何故です?」
「大切だって思ってる人に不満なんて感じさせたくない。
だから、何でも言って欲しいって思ってる。今からちゃんと
話つけてくるし、後で文句とか全部聞くし説明だってする。
何なら一発…いや二発?ぐらい引っぱたいてくれてもいいし、
ベルに嫌な思いさせたこと謝らせて。だから、どっか行ったり
しないで…欲しい。」
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