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第七話 謎の使用人とオールドローズ(4)

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部屋に入るなりリベルタは早速騎士二人に
威圧的な態度を取った。
彼女の言葉通りに威圧されたのか、男性騎士二人して
ソファーから立ち上がった。

「も、申し訳ありませんリベルタ嬢。」

「ルイスフォード様から要件はリベルタ様だけに
伝えるよう仰せつかっていましたもので。」

「それは存じております。
どうぞお二人共お座りになって。」

リベルタはガジュの手を引き騎士二人の向かい側の
ソファーに座った。

「し、失礼したします。」

二人が腰掛けたのを確認して、リベルタはさらに
威圧した姿勢を取り続ける。

「要件は私だけに伝えろと言われていたのでこの屋敷のバトラー
であるウォルコットさんに要件を伝えれなかった。
それは分かります、命令ですものね。でも…貴方達、この屋敷の
バトラーにとりあえず会わせろと要求するだなんて無礼じゃ
ありませんこと?」

声の低さ、リベルタの笑いながら怒る姿勢に完璧に
二人は萎縮しきっていた。

「それは…、」

「結構。言い訳は嫌いなのでしないで下さいな。
それと、別に元皇太子殿下の婚約者だからと言って
あなた方にこのような態度を取っている訳ではありません。
ここはロゼレム帝国守りの要、ミテスバクムの
主の屋敷。この国に戦争を吹っ掛けてくる輩がいなく、平和に
暮らせているのはここにいらっしゃるガジュ様のおかげてす。
そんなお方の屋敷で無礼を働くとは、恥を知りなさい。」

その言葉で少し言い訳を始めようとしていた二人を
ぴしゃりと黙らせた。

「大変申し訳ありませんでした、リベルタ様、
そして緑竜の血を引く竜人、ガジュ殿。この屋敷で無礼を
働いてしまったことをお詫び申し上げます。」

左に座っていた騎士が頭を下げると、続いてもう一人の騎士も
続けて頭を下げた。もう少し抵抗してくるものかと思ったが
案外素直にあやまるものだな、と驚く。

「…別に僕はそんなに怒ってなかったんだけど…。」

「寛大なお心に感謝致します。」

「いや謝罪は受け入れてないから勘違いしないでよね。」

「…と、言いますと?」

「謝罪を受け入れる代わりにその要件とやらを聞こうか。」

「先程もお伝えした通り、要件はリベルタ様だけに
お伝えしろと仰せつかっておりまして…。」

「知ってるっての。帝国に告げ口でもされたく無かったら
さっさと話せば?」
 
ガジュは鼻をフンと鳴らすと、足を組み始める。
どうやらこのまま居座る気らしい。

「いやあのっ」

「さっさと喋んな。職失いたいの?」

「うぐっ…脅迫じゃないんですかぁこれ…。」

二人はリベルタに泣きつくような視線を送るが、彼女には
見事に笑顔で返されてしまったので彼らはがっくしと
肩を下ろす。

「それが、ですね。少し、いや大変申し上げにくいことでして。
特にその、ガジュ殿がいらっしゃる所では…。」

「いいわ。貴方達は殿下に私だけに報告したと進言なさい。」

「…では、帝国騎士団所属、このアイギス・ウィーニが
皇太子ルイスフォード・ディ・ロゼレム殿下から
お伝えするように仰せつかったこと、一言一句そのまま
お伝えいたします。」

何やら二人は目を見合わせて気まずそうにしていた。
そしておずおずと、帝国の紋章が描かれた封蝋が押されに
手紙を開封し、伝書を読み上げた。

「緑竜の血を引く竜人の元へ嫁いだ貴殿に伝達するー…、」


 


全てをアイギスと名乗った騎士から聞かされたが、
頭がおかしくなるような内容だった。
騎士二人が帰って小一時間、リベルタとガジュは動けずに
黙ってソファーに座っていた。

「姑息な真似を…。あの方の狙いは、最初からこれだったと
言うことですか。」

怒りと絶望のあまり、リベルタは伝書を乱暴に机の上に
投げつけた。


ーリベルタ・ド・オールドローズ侯爵令嬢ー

緑竜の血を引く竜人の元へ嫁いだ貴殿に伝達する。
ロゼレム帝国が古代から定める規定により、貴殿が
三年以内に竜人の子を身篭ることがなければ王都への帰還を
命じる。子を授かることが叶わなかった場合、皇太子からの命を
成し遂げられなかった罰として貴殿がルイスフォード・フォン・
ロゼレムの側室となり、後宮入りをすることを強制とす。

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