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第十四話 そうじゃない

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「お父様!!お父様っ!!!」
「どうされましたか!?」

衛兵が何人か入って来る。
「陛下が!!コルゼ先生を呼んで!!」
「はっ!!」


「お待たせしました!!
王女殿下、少しお下がりください」
「は、はい」

今日は調子が良いって言ってたのに、混乱させるような
ことを聞いたから悪化させてしまった…?
元からお父様は重い病を患っていたけれど、今すごく、苦しそうだ。

「王女殿下、陛下のことは私にお任せを。
絶対に、死なせはしません」
「コルゼ…私のせいで…」
「大丈夫。リリーのせいじゃない。
医者の仕事をするまでだ。さ、部屋にお戻りください」
「…先生、父を頼みます」
「はっ」


…お父様が運ばれてから一時間がたった。
…どうか、ご無事で…。
ぎゅっと、祈るように手を握った。

「スノーリリー!!スノーリリー!!
おるのだろう!!」

…こんな時に、誰?
「困ります王子殿下!!」

…王子?第一王子のノーサ…、あの豚が。
こんな時に何の用よ…。

「ここか!!探させよって…」
「は?何の用?くだらない用だったら
ただじゃおかないわよ」
「大した用だから安心せい。」
「王子殿下!!恐れながら申し上げます。
お帰り下さい…。今どのような状況か、
ご存じだと思います」

ネア…、私を気遣って…
「ほお?王族の私に口出しするか小娘。
処刑台にのぼる覚悟はあるか?
…よく見たら可愛い顔をしておるな。
私の妾になるなら許してやらんこともない
ぞ?」

…は?もう我慢の限界。
おもいっきり、ノーサの胸蔵を掴み、
蹴り、踏んづけた。

「き、貴様兄に向ってなにをする!!」
踏む力を強めた。
「ぎゃああああ!!!」

「で?用って何よ」
「…あの父親がようやくくたばった
そうだな。悪いが、遺言を残される前に、
私が…王位を継承してやる…ふへっ」

なんて、気持ち悪く豚が笑った。
「へえ…そう」
踏む力を、いっそう強めた。

「いだだだだ!!!放せ!!!」
「次期女王の私に逆らうなんて、
偉くなったものねクソ豚。
骨を折ってほしくないなら動かない
方が身のためよ」
「このっ…!!」

「やっぱり豚ね。
ぎゃあぎゃあ騒いでわめくことしかしない。
あと…、私の侍女に手、出したらぶっ殺すよ?
これは冗談じゃない、警告。
もし、余計な真似すれば、そうね…
お前と、第二王妃、ランディー伯爵を
水責めか火責めにした後、斬首刑にして、罪人として、
首をさらしてあげるわ。
もしくは奴隷の売買が合法な国に売りとばす。
第二王妃は美人だから娼婦としてもいけそうね」

ちがう、こんなこと言いたくない。
そうじゃないんだ。
こいつが嫌いなのは本心だけど、
こんなことまで言ったら、私は暴君という
ことになる。

「…殺さないのは今そんなことを
してる場合じゃないからよ。
…出ていけ」
「…くそっ!!」

ふらっと、体が傾いた。
「ス…!」

ネアがこちらに駆け寄ろうとしたが、
手で制した。
今、倒れるわけにはいかない。
遠からずお父様は死に至る。
いつまでも、まだ王女の身分にすがるわけには、
いかない。

ああもう全部スカーレットのせいにしたい。
今まで、疲労で倒れることなんてなかった。
こんなに大変な思いしたことなかった。
…まあ全部野崎さんのせいなんだけど。

でも、ここに来て、いい人達に巡り合えた
のも事実。
これは私が頼まれた仕事だ。
何があっても、愛するこの世界は、
私が守れなきゃいけない。

「失礼します、王女殿下」
「先生!!…お父様は」
「無事です。今は少し熱があるだけで、
命に別状はありません。大丈夫ですよ」

にこっと、ほほ笑んだコルゼの顔を見たら、
全身の力が抜けたみたいになった。

「ありがとう、ございます。先生」
「医者としての仕事をしたまでです。
それと、陛下が一週間後、両親に会う、
とおっしゃっておいでです。」

「アルティア公爵に?」
「はい。」
「…私も同席いたします。
陛下には私からお伝えしますね」
「わかりました。」

…お父様が無事でよかった。
「孫の顔を見るまでは死なないって、
寝言で言っておりました…」

「そんなこといえるなら大丈夫ですね。
ありがとうございました」
「はい。」


「…陛下、本当に良かったのですか?」
「何がだコルゼ」
「何がって…、スノーリリー様に
病が進行していることを言わずに、
ただ熱がでただけ、なんて嘘を…」
「我が娘の婿になる男がそのような
しょぼくれた顔をするでないわ。
…言うたであろう。あの子は、強いフリした、
ただの女子であると。あの子は弱い。周りに強い姿を
見せて、それで安心している。
私が倒れたことにも、あまり動じず、落ち着いている
ように見せた。
そうとう今回の事態には参っただろうに。
次期女王になる我が娘の足枷には死んでもならん。
今、あの子に心配をかけるわけにはいかんのだ」
「…そこまでおっしゃるなら、
黙っておきます。でも、スノーリリー様に
恨まれますよ。」

「悪くない最期ではないか。
これも一つの愛よ。それに、孫の顔も
見たいしな」
「…はい」



「公務に戻ります。」
「はい!」

今は仕事に集中!!
さて仕事仕事!!

「お願いします!!
どうか国王にお目通りを!!」
「ですから、お帰り下さい。
ここを通す訳には参りません」

…あら?
シャルドと、誰かもめてる?
まあしばらくしたら帰るでしょう。

…10分たってももめてる…。
しょうがない。

「シャルド、どなた?」
「あ、申し訳ありませんスノーリリー様」
「どなた?」
「他国の、人質として扱われるブバリオ帝国の
第二皇子様です。」
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