元魔王おじさん

うどんり

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一章

第17話 汚染はやばい(よくわかってない)

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俺たちは町に出て、通りに店を出しているパン屋でパンを買った。

値段はマヤのところと同じで、二個で一クロスになる。

「とりあえず食べ比べてみよう」

ということで、俺たちは一きれずつパンをちぎってマヤのパンと食べ比べをしてみることにした。

「いやどっちもうまいんだが……?」

「……じゃりじゃりしてない」

結果的にはどちらもうまかった。
マヤのほうが焼き加減はよく、中はふわふわしているように思える。
味で言えばたしかに通りに出ているものの方がいい気がするが、マヤのパンだって負けていない。

「うーん、これは、やはり、素材だろうか」

サリヴィアはパンを租借し少し考えてから言った。

「素材?」

「パンの質の問題だ。もとになる食材が悪かったり問題があったりすると、いくら調理方法がよかったところで味に影響が出る。マヤのパンはたしかに焼きかげんがよくふわふわした食感に仕上がっているが、味はお世辞にもいいとは言えん」

「そうなのか」

現地の人が言うんなら信憑性はあるのかもしれない。
俺たちにはどっちもうまいと思えるんだが。

「そういえば小麦粉の仕入れ先から卸す量を減らされたって言ってたな。関係あるか?」

「なんともいえないが、前々からこの味なら関係ないかもしれない」

小麦粉が関係ないとすると、あとは何がある?

というかパンの材料がわからないので思い付かない。

あのかりかりふわふわなるものはいかにして作り出されているのだ。


話しながら中央広場へと出る。

いつものところにマヤはいた。

が、今日は機嫌が良さそうで、籠の中が空になっている。

「マヤ、今日はパンは売れたのだな」

声をかけると、マヤは嬉しそうに顔をあげて、

「コーラルさん!そうなんですよ。まあ売る量も少なかったんですけど……」

話している途中で、サリヴィアもいることに気づき、きょとんとした顔になった。

「どうしたんです?三人一緒で」

「ああ、コーラルどのから依頼を受けてな」

サリヴィアは笑いながらマヤに事情を説明する。

「いやっ、そんな、コーラルさんがそんなことをする必要なんて。それにサリヴィアさんがやるような内容でもないし……おっ」

マヤは顔を赤くして、

「おそっ、おそれ多すぎです!私なんかのために!」

焦ったように声をあらげた。

「まあ気にするでない。何かしてやりたかったのだ」

「そうだぞマヤ。むしろ私に相談してくれてもよかったのに」

「売れない理由を解明することでパンがさらにうまくなると思うと、すべからく行動すべきだろう。これは俺たちの問題でもある」

ラミナも渾身の表情でうなずく。

「いや、でも私だってなぜ不味いのかっていつも考えてますし、いろんな作り方も試したけれど、でもやっぱり美味しくならなかったんです」

「小麦粉は今までと変わらないか?」

とサリヴィアは尋ねる。

「父の代から変わらないですよ」

「水は?」

「水も」

「パン種や塩は?」

「パン種も父の代から受け継いでいるものを使ってますし、調理場も清潔にしています。塩も同じです。だからこそ、わからないんです」

「……」

サリヴィアは少し考えたあと、納得したようにうなずいた。

「水が怪しいな」

もうわかったのか。

なんかもう全然会話についていけてないのだが。

水がどうしたのだ。

なんか変わるのか?

「マヤ、水は水売りから?」

「いえ、門の外を少し行ったところに川が流れているので、そこから汲んできています。でも父の代でもそうしていたんですよ」

「……そこは少し前から移民が住み着いて何件か家が建っていたはずだ。前は清流だったのだが、今じゃ生活用水を流していて、水売りは少し上流のところで水を汲むようになった」

「え……!?それじゃあ………」

何だ?なんなのだ?

「汚染された水でパンを作っていた可能性があるな」

「そんな……」

「父のパンに近づこうと焦りすぎて、そこまで気が回らなかったんだろう。同じ材料なら同じものができるはず、という先入観もあいまってな」

「たしかに飲み水に少し違和感があったりしましたけど……」

「普段口にしてたら慣れてしまうのもあるからな。試しに水を変えて作ってみたらどうだ?だめなら次に怪しい塩を当たってみよう。あえて作り方を変えたり、違う場所に生地を置くのもありだ」

「………お昼ご飯を食べてから、お水を汲みに行ってみます」

どうやら話がまとまったらしい。

サリヴィアが俺の目を見た。

「コーラルどの。これから少し徒歩で行くことになるが、よろしいか?」

「無論だ。依頼主だからと遠慮はいらん」

話は聞いていた。

あれだろう、汚染されていない川の上流までいくという話だろう。

汚染はやばいからな。
魔界じゃ命にかかわる。

で、それがパンと何か関わりがあるのか?

「ラミナよ寝るでない」

「…………」

ラミナはまた俺の背中に寄りかかってうとうとしていた。

……あれなんだよな?こいつ本当に俺の護衛をするために来たんだよな?
遊びに来たんじゃないよな?
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