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交錯 ②
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二杯の紅茶を堪能したソーニャは、脚を組み直し値踏みするようにリーティアを見上げる。
「ねぇ、そろそろ本題に入ったら? こんなことして、どうせ何かつまらないことでも企んでるんでしょ?」
「ではまず、こちらの事情をお話いたします。なぜこのような場所に招かれたのか、あなたもお気にされているでしょうし」
「べっつにー。話したきゃ勝手に話せばいいんじゃない?」
「ありがとうございます」
リーティアは気を悪くした風もなく、穏やかに説明を始めた。
カイトの境遇。歩んできた軌跡。そして、魔王が実の妹かもしれないということ。
王国側の不利なる情報を隠しつつも、リーティアはカイトの現状を包み隠さず口にした。無論、事前に本人の了承は得ている。
一通り聞き終えたソーニャは、自身の頬をとんとんと指で叩いた。
「よくできた話ねぇ」
「ですが辻褄は合うでしょう? カイトさんの家名はイセといいます。あなた方魔族でいうところの族号ですね。あなたの王も同じく、イセと名乗ったのではありませんか?」
口元を押さえて考え込むソーニャ。場の沈黙が、次の言葉を待っていた。
「そうね。たしかに族号は……同じよ。魔王様のお名前はカイリ・イセ」
カイトが椅子を蹴って立ち上がる。
「やっぱり……!」
魔王はカイリだった。この国には存在しないイセという姓。それだけでも十分な証拠となりうる。
「けどそれがなんだっていうの? 魔王様の族号を知ったあなた達が、それらしい男をまつりあげてあたしをハメようとしてるだけかもしれないじゃない。姑息な人間の考えそうなことだわ」
「とんでもありません。すべて真実です」
「じゃあなに? その男が魔王様のお兄様で、ルークと互角に渡り合うめざめの騎士だっての? できすぎ。信じると思う? あたしのこと馬鹿にしてるんじゃないの?」
「灰の乙女に誓って、偽りは申し上げておりません」
「その乙女に誓ってってのが信用ならないのよ。乙女を閉じ込めて利用してるくせして、白々しいったらありゃしない」
その瞬間、この場の全員が表情を変えた。
「おい。今のは聞き捨てならんぞ。閉じ込めて利用しているだと?」
真っ先にクディカが口を開いたのを見て、すかさずリーティアが後に続く。
「その話、詳しくお聞かせ願えますか」
リーティアはこの機を逃すわけにはいかなかった。魔王がメック・アデケーに宣戦布告をした理由。国家上層部に伝えられ、しかし秘匿されたその真実が、明らかになるかもしれないからだ。
「ねぇ、そろそろ本題に入ったら? こんなことして、どうせ何かつまらないことでも企んでるんでしょ?」
「ではまず、こちらの事情をお話いたします。なぜこのような場所に招かれたのか、あなたもお気にされているでしょうし」
「べっつにー。話したきゃ勝手に話せばいいんじゃない?」
「ありがとうございます」
リーティアは気を悪くした風もなく、穏やかに説明を始めた。
カイトの境遇。歩んできた軌跡。そして、魔王が実の妹かもしれないということ。
王国側の不利なる情報を隠しつつも、リーティアはカイトの現状を包み隠さず口にした。無論、事前に本人の了承は得ている。
一通り聞き終えたソーニャは、自身の頬をとんとんと指で叩いた。
「よくできた話ねぇ」
「ですが辻褄は合うでしょう? カイトさんの家名はイセといいます。あなた方魔族でいうところの族号ですね。あなたの王も同じく、イセと名乗ったのではありませんか?」
口元を押さえて考え込むソーニャ。場の沈黙が、次の言葉を待っていた。
「そうね。たしかに族号は……同じよ。魔王様のお名前はカイリ・イセ」
カイトが椅子を蹴って立ち上がる。
「やっぱり……!」
魔王はカイリだった。この国には存在しないイセという姓。それだけでも十分な証拠となりうる。
「けどそれがなんだっていうの? 魔王様の族号を知ったあなた達が、それらしい男をまつりあげてあたしをハメようとしてるだけかもしれないじゃない。姑息な人間の考えそうなことだわ」
「とんでもありません。すべて真実です」
「じゃあなに? その男が魔王様のお兄様で、ルークと互角に渡り合うめざめの騎士だっての? できすぎ。信じると思う? あたしのこと馬鹿にしてるんじゃないの?」
「灰の乙女に誓って、偽りは申し上げておりません」
「その乙女に誓ってってのが信用ならないのよ。乙女を閉じ込めて利用してるくせして、白々しいったらありゃしない」
その瞬間、この場の全員が表情を変えた。
「おい。今のは聞き捨てならんぞ。閉じ込めて利用しているだと?」
真っ先にクディカが口を開いたのを見て、すかさずリーティアが後に続く。
「その話、詳しくお聞かせ願えますか」
リーティアはこの機を逃すわけにはいかなかった。魔王がメック・アデケーに宣戦布告をした理由。国家上層部に伝えられ、しかし秘匿されたその真実が、明らかになるかもしれないからだ。
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