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デルニエール攻防戦 王国軍サイド③ 上
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同刻。
平原ではデルニエールの地上部隊が数多の眷属と激戦を繰り広げていた。
デルニエール側の優勢である。
後衛術士によって強化された歩兵達は、城壁に迫っていた魔王軍を徐々に押し返していく。旧兵器による援護射撃もさることながら、個々の戦闘力と軍隊としての練度が非常に高い。今まさに、デルニエールの正規兵達が王国において屈指の強兵であることを証明していた。
とりわけ、ジークヴァルド率いる総勢五百騎の重騎兵隊は目覚ましい活躍を見せていた。専属の後衛術士によって兵士のみならず、武具や騎馬までが強化されている。その攻撃力と機動力たるや壮絶の一言であり、圧倒的な戦力差を覆す一番槍を担っていた。ジークヴァルドを先頭に戦場を縦横無尽に駆け回り、文字通り獣共を蹴散らしていく。
「決して止まるな! 我らが故郷を守るのだ!」
ジークヴァルドの鼓舞が響く。士気は上々。戦況は悪くない。
重騎兵隊が滅した眷属の数は千にも及ぼうとしていた。総数四万の眷属からすれば微々たる数に思えるが、短時間でこれだけの撃破数に達したのは驚異的と言える。
だが、良いことばかりではない。
戦場で目立つことは、狙われるリスクを背負うこと。戦果は死線の上にある。
部下を率いて駆け続けるジークヴァルドの正面。今まさに突っ込まんとしていた眷属の群の中央に、突如として黒い影が降ってきた。大地を打った強烈な衝撃は、獣達をあたかも紙片のように舞い上げ、乾いた灰と漆黒の粒子に変えた。同じく巻き上がった砂塵が混じり、煙幕となって一帯を覆い隠す。
「なんと!」
ジークヴァルドが兜の中で驚愕するが、今更進路を変えるわけにもいかない。
「かまわん。このまま突っ込めぃ!」
意気盛んな重騎兵達は、喊声をあげて灰の砂塵へと突入する。その先に何が待っているかも知らず。
砂塵の中に突っ込んだジークヴァルドは一切の油断を排していたが、翻って拍子抜けしてしまった。先程の衝撃で付近の獣は軒並み消滅し、一匹たりとも残っていない。結果、砂塵を抜けるまで彼が敵を見ることはついぞなかった。
「一体なんだったのだ……?」
嫌に静かだ。味方の喊声も、獣の足音も聞こえない。
背後の砂煙を振り返る。
そして、愕然とした。
引き連れていた五百の重騎兵がいない。誰も後をついてきていないのだ。砂塵の中にいた時間は十数秒。その間にはぐれてしまったというのか。
砂塵の中に戻るべく馬を反転させるジークヴァルド。その目が捉えたのは黒い騎兵の輪郭だ。
馬とは異なる、分厚く野太い嘶き。
闇色の獣に跨る、漆黒の鎧。
砂煙の中から悠然と歩き出でたのは、身の丈ほどの大剣を担いだ大柄な騎士であった。
平原ではデルニエールの地上部隊が数多の眷属と激戦を繰り広げていた。
デルニエール側の優勢である。
後衛術士によって強化された歩兵達は、城壁に迫っていた魔王軍を徐々に押し返していく。旧兵器による援護射撃もさることながら、個々の戦闘力と軍隊としての練度が非常に高い。今まさに、デルニエールの正規兵達が王国において屈指の強兵であることを証明していた。
とりわけ、ジークヴァルド率いる総勢五百騎の重騎兵隊は目覚ましい活躍を見せていた。専属の後衛術士によって兵士のみならず、武具や騎馬までが強化されている。その攻撃力と機動力たるや壮絶の一言であり、圧倒的な戦力差を覆す一番槍を担っていた。ジークヴァルドを先頭に戦場を縦横無尽に駆け回り、文字通り獣共を蹴散らしていく。
「決して止まるな! 我らが故郷を守るのだ!」
ジークヴァルドの鼓舞が響く。士気は上々。戦況は悪くない。
重騎兵隊が滅した眷属の数は千にも及ぼうとしていた。総数四万の眷属からすれば微々たる数に思えるが、短時間でこれだけの撃破数に達したのは驚異的と言える。
だが、良いことばかりではない。
戦場で目立つことは、狙われるリスクを背負うこと。戦果は死線の上にある。
部下を率いて駆け続けるジークヴァルドの正面。今まさに突っ込まんとしていた眷属の群の中央に、突如として黒い影が降ってきた。大地を打った強烈な衝撃は、獣達をあたかも紙片のように舞い上げ、乾いた灰と漆黒の粒子に変えた。同じく巻き上がった砂塵が混じり、煙幕となって一帯を覆い隠す。
「なんと!」
ジークヴァルドが兜の中で驚愕するが、今更進路を変えるわけにもいかない。
「かまわん。このまま突っ込めぃ!」
意気盛んな重騎兵達は、喊声をあげて灰の砂塵へと突入する。その先に何が待っているかも知らず。
砂塵の中に突っ込んだジークヴァルドは一切の油断を排していたが、翻って拍子抜けしてしまった。先程の衝撃で付近の獣は軒並み消滅し、一匹たりとも残っていない。結果、砂塵を抜けるまで彼が敵を見ることはついぞなかった。
「一体なんだったのだ……?」
嫌に静かだ。味方の喊声も、獣の足音も聞こえない。
背後の砂煙を振り返る。
そして、愕然とした。
引き連れていた五百の重騎兵がいない。誰も後をついてきていないのだ。砂塵の中にいた時間は十数秒。その間にはぐれてしまったというのか。
砂塵の中に戻るべく馬を反転させるジークヴァルド。その目が捉えたのは黒い騎兵の輪郭だ。
馬とは異なる、分厚く野太い嘶き。
闇色の獣に跨る、漆黒の鎧。
砂煙の中から悠然と歩き出でたのは、身の丈ほどの大剣を担いだ大柄な騎士であった。
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