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決意 ②
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次だ。兵士とにらみ合いになっている狼に似た獣の胴体に、力一杯の斬撃を浴びせた。刃は胴の真ん中で止まり、そのまま獣は活動を停止する。
こうなってくると兵士達も異変に気付く。敵の間者だと思っていたカイトが、助太刀をしてくれているのだ。一瞬の混乱を経て、彼らは冷静さを取り戻した。
これまでの経験から、カイトはあることに気付いていた。魔獣はカイトに反応しない。カイトが魔力を持たないせいかもしれない。一方的に攻撃できるのは実に都合がいい。じっくりと隙を狙い一撃すればいいのだから。
その考えの通りに、間もなく魔獣は全滅した。
後には、兵士達の荒い息遣いだけが残る。
動かなくなった魔獣の亡骸から、闇色の粒子が浮かび上がる。無数の粒子は虚空に溶け、亡骸は乾いた灰へと姿を変えた。
「……よし。案外、なんとかなるもんだな」
呟いたのはカイト。
次いで響いたのは、少女の歓声だった。
「すっごーい! ヴォーリスの群を倒しちゃうなんて、なかなか見所あるじゃない」
事の顛末を傍観していたソーニャは、心底楽しそうに拍手を送っていた。
「けどー」
その拍手が、ふと止まる。
「なんとかなるっていうのは、違うんじゃない?」
愛らしい少女の姿。声。仕草。にも拘らず、ソーニャが放つ威圧感は言語を絶する。
カイトを含め、その場の人間は見えない鎖で縛り付けられたように身動き一つできなくなった。
兵士の一人が剣を構えたまま、額に冷や汗を垂らす。
「四神将……つくづく運がないな、俺ら」
その名がどれだけの威力を持つのか、カイトには分からない。だが、この場の戦力で敵う相手でないことは理解できる。
巨人の手中で気絶するクディカに気付いたもう一人の兵士が、にわかに顔を引き攣らせた。
「あはっ。そうそう。あなた達の大将も、こんなザマだしねー」
巨人が腕を持ち上げると、クディカの体がだらりと垂れる。
「将軍……! クソッ! 乙女は我らを見放したか……」
指揮官が敗れたのだ。兵士達の戦意が削がれるのも仕方ない。彼らはじりじりと後退ると、踵を返して逃走を図る。
「ばーか」
直後、二人の兵士が死んだ。
こうなってくると兵士達も異変に気付く。敵の間者だと思っていたカイトが、助太刀をしてくれているのだ。一瞬の混乱を経て、彼らは冷静さを取り戻した。
これまでの経験から、カイトはあることに気付いていた。魔獣はカイトに反応しない。カイトが魔力を持たないせいかもしれない。一方的に攻撃できるのは実に都合がいい。じっくりと隙を狙い一撃すればいいのだから。
その考えの通りに、間もなく魔獣は全滅した。
後には、兵士達の荒い息遣いだけが残る。
動かなくなった魔獣の亡骸から、闇色の粒子が浮かび上がる。無数の粒子は虚空に溶け、亡骸は乾いた灰へと姿を変えた。
「……よし。案外、なんとかなるもんだな」
呟いたのはカイト。
次いで響いたのは、少女の歓声だった。
「すっごーい! ヴォーリスの群を倒しちゃうなんて、なかなか見所あるじゃない」
事の顛末を傍観していたソーニャは、心底楽しそうに拍手を送っていた。
「けどー」
その拍手が、ふと止まる。
「なんとかなるっていうのは、違うんじゃない?」
愛らしい少女の姿。声。仕草。にも拘らず、ソーニャが放つ威圧感は言語を絶する。
カイトを含め、その場の人間は見えない鎖で縛り付けられたように身動き一つできなくなった。
兵士の一人が剣を構えたまま、額に冷や汗を垂らす。
「四神将……つくづく運がないな、俺ら」
その名がどれだけの威力を持つのか、カイトには分からない。だが、この場の戦力で敵う相手でないことは理解できる。
巨人の手中で気絶するクディカに気付いたもう一人の兵士が、にわかに顔を引き攣らせた。
「あはっ。そうそう。あなた達の大将も、こんなザマだしねー」
巨人が腕を持ち上げると、クディカの体がだらりと垂れる。
「将軍……! クソッ! 乙女は我らを見放したか……」
指揮官が敗れたのだ。兵士達の戦意が削がれるのも仕方ない。彼らはじりじりと後退ると、踵を返して逃走を図る。
「ばーか」
直後、二人の兵士が死んだ。
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