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他人は全て敵と思えって、こう言う事なのな

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 許可も待たずに穴を覗く子供が覗いた事を後悔して絶句した。

「知り合いでも居たか?」

「…ゴーロン、おじ…さん…」

「何だって!?」

 一気に穴に詰め寄る村人達。落ちても知らんぞ?そして女子供は口々に夫や父親を呼ぶ。呼ばれた男達はうめき声を返していた。

「爺さん共は知ってたみたいだな」

「……」

 年寄り共は目を逸らし、口を閉ざす。

「まあ、若い連中が勝手にやらかしても止められませんけどねー」

 メロロアはそう言うが、止めない時点で分け前はもらってるハズなのだ。

「とりあえず、同罪?」

 だろうなぁ。

「街まで戻るの?」

 面倒だなぁ。

「戻って、幾らもらえるか、だな」

「0ですね。食費や移動、拘束時間を考えると完全な赤字ですよ」

「なら、その場で死罪だな」

「止めとくれ!こんなんでも大事な人なんだよ!?」

「父ちゃんにひどい事すんなあっ!」

 騒がしい。

「なら、生きてる奴は百叩きな?」

「そんなっ!?」

「こんな目にされて、もう充分だろ?」

「これは、襲って来たから返り討ちにしただけで罪を償ってる訳じゃない。それに今まで何人の旅人を殺って来たんだ?昨日来ただろう商隊みたいな強そうなのは見逃すクセに、俺達みたいな弱そうなのは襲ってさ。コレを許したらカモが増えるだけじゃねえか」

「そんな勝手!国が許さないよ!?」

「国も俺達もお前達を許さないよ」

「冒険者ギルドでも問題になっていましたね。南方面へ向かった駆け出し冒険者に毛の生えたようなレベルの人達が未帰還であると。橋の先でゴブリンにでも殺られたとされていましたが、ここにも原因があったようですね。あ、私冒険者ギルドの元職員ですので、街に着き次第報告させてもらいますね」

「俺達が殺すか、冒険者ギルドが殺すか、それとも国が殺すか…だな」

「あたし等が居なくなったら誰が街の食料作るんだいっ!」

「そうだよ!うち等はあンた等のおまんま作ってんだよ!?」

「俺の実家も農家だよ。農家のなり手なんて余る程居るぞ。お前等全員死んだら他の村の次男三男が喜んで耕しに来るわ!」

 村人達はそれを聞いて押し黙った。子供はともかく、大人はそれを経験しているのだから。

「ゲインさん、ここはギルドに任せましょ。ご飯食べて、片付けて、とっとと先を進むのが良いです」

「はぁ。そうだな。その内この村が俺の甥っ子達の村になってる事を祈るか」

 それからは村人等無視してテント周りを片付けた。トイレや水浴び場もしっかり更地にして、草の生えた土をかけといた。
 そして夜の内に焼いておいた薄ソーサーと水で腹を満たし、村を離れた。

「お肉食べたかったね~」

「今日は早めに昼食しよう。村の中に泊まるのも違う危険もあるし考え物だな」

「だね~」

「そう言えばなのだけど」

 アントルゼには何か思う所があるようだ。

「なんぞ?」

「大した事じゃ無いのだけど、子供が冒険譚を聞きに来なかったわね…って、そう思ったの」

「なるほど。一つの指標になるわな」

「ゲインさん、その心は?」

 アントルゼ以外はそれに気付かないようだな。娯楽のない村の子にとって、冒険者や行商人は特別な存在なのだ。

「俺なんて、冒険者が来たらずっと近くでうろついてたからな。自分の飯食ったらまた行って、そんで話とか聞いてたんだ」

「それってさ、ゲインだけ?」

「男の子はほとんどうろうろしてたぞ?」

「ゲインの村に行った時は子供うろうろしてなかったけど?」

「仕事中だからな。父さんも兄夫婦も居なかったろ?タララは行商人とか来たらうろうろしてなかったか?」

「…してたかも」

「子供心に解るのでしょうか。冒険者とその村の関係が…」

「どうかなー。親父がドヤ顔で戦利品の話とかしてなけりゃ気付かないとは思うけど。…そう考えるとうちの村では略奪とかは無かったって事か」

「良い村だったのね」

「あの…、ゲインさんの村って、皆さん行った事があるような話し方ですが…」

「お母さんに、ゲインと結婚するって言ったよ」

「マジで!?」

「騎士として雇ってもらうと言いました」

「は、はぁ…」

「私は挨拶しただけよ?」

「そりゃあ、そうですよね。いーなー、いーーなーーー。今から森を東征しませんか?」

「やだ」

「まだ冒険譚無いもんね~」

「私、騎士と妻を兼任したいです」

「私もゲインの妻になるって言って驚かそうかしら?」

「3対2です!行きましょう!」

「「「「ダメ」」」」

 4対1で却下された。

 1つ目の休憩地で水と干し肉1枚。2つ目の休憩地ではタララ2枚の他1枚の昼食を摂って、古い方の干し肉は消費し切った。敵が結構出たので少し足りない。夕飯はしっかり食べたいな。

 敵はゴブリンに、少し大きいホブゴブリンが混ざってた。が、貰えるものはほぼ一緒。魔石を獲るのは汚れるので、収納して後でやる。後は猪かボア種が出た。これは解体しないと分からない。腸を出して血抜きをしたら、首を落として収納出来た。100ナリ以上の大物だ。
 突進して来るのをタララが止めて、その隙に横からカウモアがツーハンドソードで首をグサッとして仕留めていた。やっと正しい使い方が出来たね。けどお前、殿だからな?

 午後を過ぎて、街道を移動しながら川を探す。村に行って二の轍を踏見たくないのもあるが、ゴブリンを水葬したいのだ。匂い移りする事は無いが、出来れば早めに処理したい。それに肉の加工もしたいしな。

「ゲイ~ン、川あったけど…」

「ああ、ちと細いな。けど何とかするか」

「どうするのよ?流れて行かないと思うわよ?」

「川の中に穴掘って埋める」

 草地に挟まれた街道を突っ切るように川幅が2ハーン程の細い川があり、橋がかかっていた。この先に行くとなると村に着いてしまうので、ここを野営地とする。

「草藪には入るなよ?」

「なんで…、あ、兎っぽいのがいるっぽい」

 理由を聞こうとして感知系スキルに気づいたタララ。襲う気満々なのを止める。

「お尻に頭突きを食らう事になる。角が付いてたりしたら痛いぞ?」

「鎧着てるし~」

「素早いから良い的になっちゃうぞ?後で優しく触ってやるから我慢しれ」

「それ絶対嘘だもん」

 橋の袂から川に降り、少し下流へと下る。あまり川幅が変わらないので先に進むのは諦めて野営の準備をしてしまおう。

「今日は壁を作るぞー」

「高さはどのくらいあれば良いですか?」

「3ハーンは欲しいな」

「ゲインさん、私ブロック作れないので整地でもしてますね」

 草藪に入ろうとするメロロアを泊めた。

「せっかくだから覚えとけ。便利だぞ?」

 メロロアならすぐに覚えるだろうしな。なので俺とメロロアは壁作り、カウモアは草刈りでタララは整地。アントルゼは見張りとなった。

「アントルゼ、1番重要な役目を負わせて済まないが頼むな」

「ドバドバ撃って構わないのでしょ?」

「近くにいるのだけな?デカいの来たら教えてくれ」

「死にたくないし、そうするわ」

 カウモアが刈り捨てた直径10ハーン程の草を集めてデリートウォーター。キレイに刈り取られた地面に、ロープと枝で丸く陣地を決める。陣地の中側はタララとカウモアが使うので、野営に使う荷物を下ろして行く。

「さあ、ブロックを切るぞ」

「よろしくお願いします」

 地面を四角く収納しようとすると、途中で収納出来なくなる。結果四角いブロックになる。縦横の大きさにだけ気を付ければ大体同じ大きさのブロックになる。

「な、簡単だろ?」

「うは、これはすごい」

「人に向けてやるなよ?」

「え…、まさか?いやそんな」

「生きてる木、生木でも切れるからな」

「生物は入れられないハズなのですが」

「根の付いた地面は収納出来たんだ。生きてるハズなのにだ」

「植物だから…いや、有り得ません。ですが昨日してたのは見てましたし…」

「まあ、身を守るために使おうか」

「…ですね」

 その後はすぐに収納に慣れたメロロアと、壁と壕を作ってく。高さ3ハーン、深さ2ハーンで幅2ハーン。中々良い出来だ。

「ねえ、ゲイン。飛び越えないと入れないのだけど」

「橋、作んなきゃな…」

 細い木しか生えてないので、いくつか切って、木の皮で縛ってすのこ状にしてみた。鎧着てるタララなら絶対落ちるわこれ。アントルゼも靴以外仕舞って渡ってた。ダメだなこれは。

「飛び付いて壁歩きでくっ付いたらどうですか?」

「なるほど」

「手が汚れるわ」

 結局、入口の所だけブロック一つ分埋めた。安全第一である。

「カウモア、頼んでも良いか?」

「はい、おっぱい枕ですね。承りました」

 竈の用意をしていたカウモアは欲求が溜まっているのかも知れない。

「壕の向こうを2ハーンくらいで刈り取って欲しいんだが」

「……承りました」

 俯いて行ってしまった。俺がやれば良かったかな…。それでも俺にはまだやる事がある。壁の内側にブロックを積み重ね、入口を見えないようにしてトイレと水浴び場を作った。さっき作ったすのこはせっかくだからここで使う。

「ゲイーン、テントはこの向きで良い?」

「それで良いぞ。枯れ草出すから敷いてしまおう」

「ゲイン。トイレの葉っぱは無いのかしら?」

「ツルゲネツの葉なら確保してあるよ」

「後で使うわ」

「ゲイン様、草刈り終わりました」

「ありがとな。後でおっぱい枕させてくれ」

「う…、ぐすっ、…はい」

「このぉ、お・ん・な・泣・か・せっ」

 メロロアがここぞとばかりに賑やかして来る。野営は静かにしたいのだがなぁ。

「すぐ泣くくらいが女は可愛い…ってな」

「ぶわっ」

「ええい泣くな鬱陶しい」

「ゲーイーン、ご飯作ろーよー」

 ピルで泣いたメロロアを、タララは完全にスルーした。

「ああ、干し肉も作らなきゃな」

「それは私とカウモアがやるわ。あんたは干し肉の支度をしてちょうだい。私達にはまだ出来ないから」

 アントルゼとカウモアが食事の支度を引き受けてくれるそうな。

「そうか、助かる。ほれメロロア、解体すっぞ」

「ゔぁがりばじだぁ」

 姦しい。野獣蔓延る野営地で、肉食や魔物が出たらどうすんだ。地面に枯れ草を敷き詰めた上に血抜きした猪を乗せて皮を剥ぐ。大人がやってるのを見て覚えたつもりだけど、中々難しい。メロロアが皮を引っ張り、俺が切る。片側の脚を剥いだら腹から背中へと拳を突っ込んだり刃を入れて剥がして行く。で、半分終わったらひっくり返して再び脚から。お肉がちょっと付いちゃったけど、穴が開かなくて良かった。
 骨付き肉から肉を切り出すのはメロロアがやると言う。仰向けになり腹を開いた猪の、背骨とアバラを切り離す。その手斧どこから持って来た?今度は脇にナイフを入れて肩を外す。そしてモモも同様に切り離す。バラバラになったら本格的に肉を外してく。先ずは大きいアバラから。骨に沿ってナイフを入れて引っこ抜く。これなら俺にも出来そうなのでやってみた。そうとう研がないとメロロアの切れ味には及ばないな。と刃物のせいにする。脚は骨に沿って刃を入れて骨の周りの肉を削いで外した。大きい所は取り終えて、細かい所はメロロア先輩お願いします。

「ふう。ひとまず今から食べる分はこれにしましょう」

 モモ肉だ。モモ肉だと思って肉を食った事って、そう言えば無いな。

「中々大変だよな、これ」

「捌き方はいろんな方法がありますが、脚だけ貰って後は解体師に持ってくのが楽で良いですね」

「お肉もらうわよ」

「あ、はーい。どうぞ」

 アントルゼが肉を抱えて持って行く。成長したもんだ。

 こちらも干し肉用に切り分けようか。大きい背肉をやや薄切りに切る。マジックバッグでスパスパ収納されて行く。

「ゲインさん、それ、マジックボックスですか?」

「キレイに切れるんだ。便利だろ?」

「人にやっちゃいけない理由を実感しますね…」

 薄切り肉は背肉の片側だけで大鍋とバケツに入りきれない程出来た。作り切れない分の塊には塩を刷り込んで収納する。薄切り肉の方は調味液で濡らしてバケツと大鍋に敷き詰める。これやってるだけで夕飯が揃ってしまった。

「手伝えなくて悪かった」

「こちらこそ手伝えなくて申し訳ありません」

「私達はやる事をやったのよ。詫びる必要は無いわ」

「そうだな、ありがとな」

「甘いの飲みたいわ」

 昨日は食してなかったし、今日は出すか。水飴の鍋を出したらみんな揃っていただきます。
 焼いた生肉は美味いな。厚切りで肉汁たっぷり。脂の甘さと塩味がとても良い。タララなんてさっきから一言も発してないが、肉を食う肉食獣にはちょっかい出してはいけない。

 野営中、腹一杯食べるのは良くないのだが仕方ないよな。今夜の火の番は、アントルゼとタララ、俺とカウモア、メロロアの順とした。その順番で水浴び場を使う。俺は2ハーン程の穴を掘って腸や骨を埋める。ゴブリンは入り切らないので川に穴掘るしか無い。そしてブロックで煙突を作り、底に竈を置いた。煙突の途中には使い切れなかったすのこと塊肉が安置され、煙突の出口は閉じられ、小さな穴しか開けてない。
 煙や熱で燻して乾燥させ、腐るのを防ぐのだ。この方法は村の肉屋でもたまに行われていて、時間が経って悪くなる前にしっかり干してしまおうと言う算段だ。焼けた石炭の上に干し草を乗せ、火が上がり過ぎないように蓋をする。後は交代の時間にでも様子を見るかな。臭い袋の中身でも検めよう。

「水浴びたよー」「お先に」

「ああ。カウモア、先入りなよ」

「すみません。剣の手入れをしておりますのでお先にどうぞ」

「そか、ならお先に」

 罠でした。俺がバシャバシャするのと同時に裸で突入して来やがった。

「剣の手入れが終わったので急いで来ました」

「で、俺の体で自分の体を洗ってるのか」

「お嫌、ですよね…」

「凄く嬉しいのは、見てわかるだろ?」

「私も、嬉しく思います。お背中流しますねっ」

 タオルでちゃんと擦ってくれた。

「脚も流しますね」

「自分で出来るよ…」

「立っていては洗いづらいでしょう?」

 座っても良いようにすのこ入れたんだけどな…。

 スッキリした俺は先に上がる。カウモアは体を洗う為にしばらく後に出るそうだ。

「スッキリシましたかぁ?」

「頭はスッキリ冴えるけどお湯が恋しいよ」

 これから寝るのに頭が冴えてしまうのは困るよな。

「それなら、ウォーターウォールにお湯でも混ぜてみたら?」

「焼いた石入れるのもいーかも」

 見張りの二人が案を出す。それはそれでありかも知れん。タララとアントルゼに火の番を託し、俺はテントで横になった。

「ゲイン、カウモア、起きなさい」

 交代の時間になり目覚めると、牛の顔が横にいてドキッとする。角の枕、寝やすいのかな?

「起きるぞカウモア」

「了解です…」

 タララとアントルゼがテントに入り、俺は燻してる竈の火を確認し、干し草を足して蓋を閉じた。しばらくして煙が上がり出すのを見て、焚き火替わりの簡易竈のそばに腰を下ろした。

「2人っきり、ですね」

 竈に枝を焚べるカウモアがしおらしい事を言って来るが、炎に照らされた牛の顔は、怖い。

「お湯でも沸かして飲むか」

「はい」

 ヤカンに水を入れて竈に乗せる。後は待つだけ。枝に刺した干し肉を地面に突き刺して炙り、時間が過ぎるのを待った。

 感知系スキルにはまだ反応は無い。ウサギはカサカサ動いているが、カサカサ程度なら脅威は無いだろう。人の気配も取り敢えずは感じない。だが警戒は怠らない。夜はまだまだ明けないのだから…。

 お湯が沸き、干し肉を二人で切り裂いて食べる。夜の栄養補給は夜警には欠かせない。この時ばかりはカウモアもガパッとマウスガードを開いて飲み食いしてるよ。

「何も来なくて良い夜ですね」

「野盗はいずれ殺ってもらわなきゃいけないんだが、出来れば昼間が良いよな」

「ですね…」

 それからは静かに夜食を摂り、トイレに行ったり燻した肉の状態を確認したりで交代の時間となった。

「ゲインさん、交代ですよ」

「おはよう。竈に干し草を足したら寝るよ。よろしくな」

「よろしくされます」

「それでは休みます」

 寝ると言っても熟睡は出来ない。横になるとすぐにタララが抱き着いて来るし、カウモアも俺の腕を取って胸に挟んで足を絡めて来るのだ。

「にぃ…くぅぅ…」

 タララは干し肉の匂いに反応したようだ。身動き取れないし乗っかられて苦しいけど、目を瞑り朝になるのを待った。


 その日は何事もなく朝を迎える事が出来た。熟睡には至らなかったが休む事が出来て本当に良かった。ただ、夜中に寝惚けていたのであろう、タララが俺の口を舐め回してたおかげで顔が涎でベタベタになっていた。齧られてなくてまだ良かったと言えよう。

 女達が食事を作る中、川に顔を洗いに行かせてもらった。川幅も狭く、水量も多くない川だが水はしっかり流れてるので、これならゴブリンを埋めても問題ないだろう。

 皮鎧や服を収納し、パンツ一丁となった俺が入水する。パンツも脱ぎたかったけど後で乾かせば良いし、見られると恥ずかしいからな。

 川の真ん中に着いて、大体腿の辺りの深さだ。気合いを入れて底まで潜り、目の前の土砂を根こそぎ回収。1度息継ぎしたら再度潜ってを3回程繰り返し、そこそこ深い穴が掘れた。

 ゴブリンを底に沈め、土砂を覆い被せる。金になる石は採れなかったので全て川に帰したよ。岸に上がりデリートウォーター。すぐに服を着てみんなの所に駆け帰った。

「たたただいままま…。お、お湯ある?」

「今スープを作っています。先に召し上がりますか?」

「もも、もらうよ」

 金属鎧に着替えながらカウモアのスープをいただき、体を温める。

「ゲイン、なんか良いの落ちてた?」

「いや、金目の物は何も無かったよ。探す余裕も無かったしな」

「あーねー」

「そんなにゴロゴロ見つかるなら、みんな浚い尽くしてるわよ」

「だな」「だねぇ」

 燻した肉の様子を見て良きと判断。仕舞おうとして肉食獣の視線が刺さるがスルーした。そして肉食獣が焼いてる肉の番を交代し、金属鎧に着替えに行かせた。一斉に一つの事をすると、敵が来た際誰も準備が出来てなくて困るのだ。敵のいない今だからこそ、練習は必要なのである。ちなみにメロロアは仮眠中で、食事作りは免除だ。
 そんな感じで1人ずつ着替えに行かせて食事が揃い、メロロアを起こしていただきます。

「寝起きのスープが染み入ります」

「甘、うま。はぐっ」

「そろそろ水飴も無くなるわね」

「街に行ったら食材の調達もあるし、作り増ししておこうか」

「そうね」

「出発前に干し肉作るから、タララと俺は其方に集中する。他のみんなは片付けを頼むよ」

「あ~い」「分かったわ」「「了解です」」

 食事を終えて、片付けと撤収を始める。俺とタララはテーブルに薄切りにした肉を貼り付けて25枚、俺とタララのデリートウォーターで程よい具合に仕上がった。

「まだ生肉がたっぷり残ってんよね、どーするー?」

「マジか。塩にはしてあるが明日干し肉にするか。今ある調味液に漬け込んどこう」

 タララは猪肉の総量を覚えていたようで、取り出してみると燻し肉と干し肉以上はありそうだった。取り敢えず薄切りにした肉はバケツに残る調味液を継ぎ足しして潜らせる。肉を湿らせたら調味液を捨て、バケツと大鍋に肉を山盛りにして収納した。取り出す時、零れないよう注意だ。

 仕込みと片付けが終わり、壕や穴を埋めたら出発だ。その頃には街道に村人が歩く姿が見えるようになり、川へ洗い物に向かう女達とすれ違った。

「あんた達、村に用かい?」

「いや、街に行くから先に進むよ」

「ならすぐ先の分かれ道で左に行くと良いやね。村に入ると子供等に囲まれちまうよ」

「ありがとう。そうするよ」

 女に言われた分かれ道は橋の先にあった。左側の方が轍も深いし、間違いないだろう。

「良い村みたいだね。あたいが来た時もここには止まらなかったけど」

「とにかく冒険譚をねだられなくて済むのはありがたいな」

「ゲインさんには魔獣熊討伐の話があるじゃないですか」

「1つしか無いじゃん。俺なら他には?他に無いの?ってなる」

「なるほど。ネタのレパートリーが足りないと」

「それに、猪や熊の話はウケが悪い」

「ゲインは、村の子は見慣れてるもんね~」

「そう言う事だ。水辺でサハギンに囲まれて無双した話とか、オーバーフローに駆り出される話とか。そう言うのが欲しい」

「オーバーフローは勘弁ですねぇ。ゲインさんが子供の頃、北のダンジョンで起きたんですよ?」

「北?」

「ゲインさんがチンピラ殺ったトコです」

「チンピラ言うな。冒険者に扮した野盗だろ」

「あ~、あそこね~」

「ちなみにですが、サハギンは今から向かう街の先に居ますよ?無双しに行きます?」

「自分から危険に身を投げるのはダメだろ」

「勇者キーンはしませんね」

「…タララ、泣き付いて良いか?」

「宿に着いたらおっぱい吸わしたげる」

「私も」「カウモア嬢!?」

「私も良いわよ?おっきくなるんでしょ?」「アントルゼ嬢まで?」

「冗談よ」

「ねえゲイン~。最近、アントルゼちゃんの言葉が冗談に聞こえないの」

「心が荒んでるからだな。宿に行ってゆっくり寝よう。風呂にも入ってな」

「寝るんだったら俺たぢぎゃぁっ!!」

「こいつっ!いきなぎぃっ!」

「飛びどうげっ!!ぐぁっ!」

 突然会話に入って来た野盗に容赦なく小石を射出して戦力を奪う。俺達が3人を制圧する前には既にメロロアの姿は消えていて、森の中からガサガサと帰って来た。

「おかえり」

「ただいまです。こちらは3人でした」

 俺達は全員が感知系スキルを持っているので、言葉や仕草に頼らず近い場所の敵を潰すと言う打ち合わせだけでこの程度の野盗は殺れるのだ。流石に数が多過ぎたら困るけど。

「アントルゼ、カウモア。とどめを刺してやれ」

「了解です」

「私の武器で殺れるのかしら」

「ではこれをお貸ししましょう」

 刺突剣を手渡され、フンフンと振っているアントルゼだが、多分そんなに斬れないぞ?

「これでCランク、なのよね」

「だねえ、並んじゃうねぇ」

「私は貢献度が足りないので貯まり次第Cランクですね」

「メロロアさん、私達の貢献度は足りておりますか?」

「魔獣熊を殺ってますし、ダンジョン調査もしてますから問題ないかと」

そんな事を言いながら、ブロードソードでバサッと切り捨てるカウモアに、腰だめで突進して体に穴を開けるアントルゼ。

「2人共、頑張ったな」

「今日はとびきり美味しいのが食べたいわ」

「美味い店があれば良いな」

 死んだ野盗を収納し、街道を急ぐ。貴重なランクアップ条件ではあったが、無駄な時間だ。閉門までに着かない方が問題なので、軽く走って街へと向かった。

 2つある休憩地休憩と昼食を摂り、森の街道を抜けると開けた場所に出た。遠くには木の門と木で出来た壁が見える。

「頑丈そうに見えるけど、森の中までは壁になってないみたいだな」

「馬用ですね」

「馬車はあそこ通ってたよ」

「密輸品の出入りを何とかしたいって感じか」

「ですね、違法奴隷とか隣国からの刺客とか」

「刺客かどうかは分かりませんが、後ろから来てますね」

 カウモアが反応する。俺達は移動しながら多分馬車だろう反応が近づくのを待って、道を開けた。

「護衛も無いのね」

「その割に、箱馬車ですね」

「ん?どゆこと?」

「人が乗っていて、貴族ではない…って感じかしら。家紋も入ってなかったし」

「で、その上商隊なら冒険者くらい雇いますよね。って事です」

「怪しい馬車って事?」

「さぁなぁ。俺達が買う馬車は窓があるのを買おう。窓無しで箱馬車では中が暑そうだ」

「お湯も沸かせないわね。あ、茶葉が欲しいわ!」

「街に着いたら探してみましょう」

「貴族って、本当にお茶飲むんだな…」

 だべりながら、箱馬車がかなり進むのを待って俺達も移動した。門に着いた箱馬車の周りを門番達が囲んでる。ああ、近付きたくないなぁ…。

「こんにちはー、すんませーん」

「冒険者、今俺達が何をしてるか見えるだろ?」

 少し遠巻きから職務遂行中の門番に声をかけると、イラつきながらも丁寧な返事が帰って来た。

「閉門に間に合わなくなったら此処で焼肉祭するけど、あげないよ?」

「ちっ!面倒臭ぇ…。隊長!」

「ジェシカ!冒険者の相手をしろ」「はいっ」

 ジェシカなんて女みたいな名前だな…って思ったら女の人だった。槍を構えてやる気満々だな。

「あんた達、下手なマネすると怖いよ?」

「俺達、閉門までに街に着きたいだけなんだけど?」

「ゲインさん、私が交渉しましょうか?」

「相手は女性だ、加減しろよ?」

「何する気!?」

「何もしませんって!私、スタンリーガイの冒険者ギルドのメロロアと申します」

 もうギルド関係者じゃないだろ、とは言わない。茶々には入れ時があるのだ。

「え、ギルドの人なの?ミーミンガイにはどの様な用件で?」

 少し驚いたジェシカさん。けど構えを解くのは早過ぎだよ?ウソだったらどーすんの。

「ミーミンガイのギルドに報告書の提出を依頼されています。社外秘なので中は見せられませんが」

「封蝋は確認させてもらうけど、良いわよね?」

「開けたら首が飛びますけど、どうぞ?」

 皮で出来た分厚い封筒をメロロアがマジックバッグから取り出すと、ジェシカさんは一瞬ビクッとして、封蝋を凝視した。

「確かに、スタンリーガイのギルド紋ね。少し待ってて」

 隊長の所に駆けて行くと、なにやら話して帰って来た。




現在のステータス
名前 ゲイン 15歳
ランク C/E
HP 100% MP 100%
体力 D
腕力 E
知力 E
早さ D-
命中 E-
運 D

所持スキル
走る☆☆ 走る☆☆ 走る 走る 走る
刺突☆☆ 刺突
硬化☆☆ 硬化 硬化
投擲☆☆ 投擲
急所外物理抵抗☆☆
飛躍☆ 飛躍
木登り☆
噛み付き☆☆ 噛み付き 噛み付き
肉体強化 肉体強化☆ 肉体強化☆
腕力強化☆ 腕力強化 腕力強化
脚力強化☆ 脚力強化☆ 脚力強化
知力強化☆
体力強化☆ 体力強化 体力強化
ナイフ格闘術☆ ナイフ格闘術
棒格闘術☆
短剣剣術☆ 短剣剣術☆
避ける☆
魅力☆
鎧防御術
察知
探知
マジックバッグ
マジックボックス

鑑定☆ 鑑定
魅了
威圧
壁歩き

水魔法☆ 水魔法
|├ウォーター
|├ウォッシュ
|└デリートウォーター
├ウォーターバレット
├ウォーターウォール
└ボーグ

土魔法☆
├ソイル
├サンド
└ストーン

火魔法
├エンバー
├ディマー
└デリートファイヤー

所持品
革製ヘルメット
革製肩鎧
革製胴鎧
皮手袋
皮の手甲
混合皮のズボン
皮の脚絆
水のリングE
水のネックレスE

革製リュックE
├草編みカバン
├草編みカバン2号
├紐10ハーン×9 9ハーン
└布カバン
 ├冊子
 ├筆記用具と獣皮紙
 ├奴隷取り扱い用冊子
 └木のナイフ

革製ベルトE
├ナイフ
├剣鉈
├剣鉈[硬化(大)]
├解体ナイフ
└ダガー

小石中☆500
小石大☆450
石大☆20

冒険者ギルド証 0ヤン

財布 ミスリル貨235 金貨11 銀貨8 銅貨9
首掛け皮袋 鉄貨74
箱中 997,435→980,435ヤン 
ミスリル貨 金貨85 銀貨118 銅貨124 鉄貨35 砂金1250粒
ドロップ 5372ヤン

マジックボックス
├猪(頭・肉17.5ナリ)燻10ナリ
├戦利品
├箱
|└シルクワームの反物×33
├未購入チップ各種箱
├医薬品いろいろ箱
├食料箱×2
├調理器具箱
├ランタン箱
|└油瓶×10 9.2/10ナリ
├竈、五徳
├蓋付きバケツ大
├テントセット
├マット×4
├毛布×4
├洗濯籠
|├耐水ブーツ
|└耐水ポンチョ
└宝石
鉄兜E
肩当E
胸当E
腰当E
上腕当E
ゲル手甲E
ゲル股当E
帆布のズボンE
脛当E
鉄靴E
熊皮のマント

籠入り石炭0
石炭84ナリ

ランタン
油瓶0.2/0.8ナリ
着火セット
服箱
├中古タオル
├中古タオル
├未使用タオル×2
├中古パンツE
├パンツ
├未使用パンツ×2
├ヨレヨレ村の子服セットE
├サンダル
├革靴
├街の子服Aセット
└街の子服Bセット

スキルチップ
ハシリウサギ 0/4521
ウサギS 0/1
ウサギG 0/1
ハシリトカゲ 0/3166
ハシリトカゲS 0/1
ハチ 0/2859
ハチS 0/1
カメ 0/3459
カメS 0/1
ヨロイトカゲS 0/2
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石S 0/1
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