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メロロアが退職するまで暇なのだ。
しおりを挟む初めての鉄製武器を手に入れて、マウスガードを閉じてニヤついているアントルゼだが、そのままではただの使いづらいスコップだ。工具を武器にするために、髭もじゃ親父の中古武器屋にやって来た。
「こんにちはー、客だよー」
「…鉈があるじゃろ」
髭もじゃ親父は今日もカウンターの奥で寝てるようだ。接客する気は無いらしい。
「店主、見つけて来たわ」
「…見せてみろ」
女の言葉には反応するようで、カウンターの奥からむっくり起き上がると、ずんぐりした手を伸ばす。アントルゼが渡した得物をふんふん言って見回した。
「お嬢ちゃんがこれを選んだか」
「一目でコレと思ったわ」
「柄が腐っとる。3000じゃ。夕方に来い」
それまで時間を潰さねばならないようだ。店を追い出され、路頭に迷う。
「昼飯にはまだ早いしなぁ」
「服でも見に行きましょ。オーダーメイドは出来なくなっちゃったけど、下着買うんでしょ?」
「雑貨屋行くか」
「坊や、下着は下着屋で買うものよ?」
店先で待ち構えていたニアさん。俺達が店の前を横切るのを見られてしまったようだ。
「下着屋って大通りの反対側の店でしょ?行ったら変態スケベ認定されたよ」
「アソコは女物専門よ。けどそうね、注意しておくわ」
注意されても不快な目にあった事実は変わらないのだがな。俺達が行った女性専門な店の他に、男女用の店もあって、ニアさんおすすめの店を教えてもらえた。頼りになるお姉さんだ。
「良いのが買えたら見せに来なさい。裾上げしてあげるわ」
パンツを裾上げしたら布が無くなっちゃうじゃないか。
「ゲイン、冗談よそれ」
やはり冗談だったようだ。苦笑いのニアさんと別れて通りを北へ一本入り西へ。集合住宅の1階を店舗にしてる店がちらほらある中にその店はあった。主婦の人が男物のパンツ広げて品定めしてる。ここだな。
この店は、壁の半分近くを入口にして、中がよく見える。手前の方に棚があり、主婦が品定めしていたのはここだ。奥の方には女物を置いているようで、仕切りがあって覗きづらい感じになっていた。男女のスペースの間には、タオルやカバンのような雑貨も少し置いてある。
「俺はこの辺にいるから、みんなは好きにしててくれ」
「あーい」「分かったわ」「了解しました」
男の買い物なんて大した時間かからない。店員に聞きながらもパンツとタオルを2枚ずつ買って終了。8000ヤン也。布地は高い。加工品は高い。即ち、服は高いのだ。
「ゲイン、買い物は終わったの?」
「男の買い物は早いんだ。アントルゼは終わったのか?」
「出来合いの物で事足りたわ。あの二人は勝負だ何だで下着とにらめっこしてるけどね」
「そうか。2人共、早くしないとアントルゼとイチャイチャすんぞ~?あーアントルゼの触覚はいつ見ても可愛いなー」
「可愛いのは触覚だけじゃないのよ?うふふー」
「ゲーイーン」「私も愛でてください」
棒読みでイチャイチャすると仕切りの壁から顔だけ出して威嚇する熊と牛。待つ方の身になってくれ。それでもしばらく時間がかかり、ようやく下着が決まったようだ。会計を済ませて店を出る。
「良い物が買えました」
「ゲインをメロメロにしたげっかんね」
「何度も言うが、下着なんかより中身だろ」
「何度聞いてもゲスに聞こえるわ」
「ゲインって、エッチな癖にお堅いよね~」
「では着けません」
じゃあなんで買ったのか…。
「スケベなのは否定しないよ、男だし。それでも時と場所は考えてるつもりだ」
「あんたの良い所よ。2人も見習いなさいな」
「あ~い」「善処します」
買い物も終わったし、夕方までやる事がない。酒場で管をまくつもりはないが、飯を買って散歩でもしたい気分だ。
「昼飯と、午後の予定を決めたいが、どうしたい?」
「食事処行こうよ」
「食事処?料理屋か。たまには良いかもな。で、どこにあるんだ?」
料理屋は宿をやらず、食事だけ提供している店だ。酒もあるが夜をメインに提供する辺りが酒場と違う。ちなみにお高いらしい。金のある商人が商談する時に使ったりするのだと父さんに聞いた事がある。
「あそこ!」
「ダメね」「同意見です」
元貴族に即答でダメ出しされた店は、見た目から敷居が高い感じの店だった。少なくとも中古の皮鎧で入って行く勇気は無い。
「なんでよ~?」
「美味しそうな匂いしないじゃない」
「外観の割に人の気配がありません」
「タララ、お高い物を萎縮して食べるより肉串10本くらい買って外で食べようぜ?」
「肉串…、美味しいもんね…。ジュルッ本…うひひ」
みんなで10本くらいだからな?大通りに戻って露店街へ向かい、串焼き12本お買い上げ。3600ヤン也。そこから歩いて南門へと向かった。
「川行くの?」
「そこまで行かないよ。南は橋の手前でゴブリンが止まってるから畑の辺りは安全だろ?」
「私、石が欲しいわ」「でしたら私も」
「ならそれは明日の予定にしようか。今からだと夕方に間に合うか分からんしな」
「ん?走れば間に合うんじゃないの?」
「何も無ければな。何かあって、閉め出された後では困るのさ」
「な~るほどね~」
門を抜け、畑を眺めながらしばらく行くと農民達が休むのに使う立木がある。今は収穫が終わって誰も居ないので占有させてもらおう。
「風がなくて暑いわね」
「木陰があって良かったですね」
テントを出して、グランドを取り出し敷いて使う。早速タララは横になる。重石を置いて、箱と板でテーブルを作ったら、やかんに水とコップ、皿に串焼きを乗せていただきます。
「スープは要るか?」
「今日は要らないわ。作る時間もないでしょう?」
「ゲインがアントルゼちゃんに優しい…」
「がっついてるからそう見えるだけよ?」
ジト目のタララをアントルゼがいなす。いつもスープを欲しがるので聞いてみただけなんだがな。
「ゲイン様はさぞモテたのでしょうね」
「まさか。親の仕返しが怖くて虐めたりした事は無いがケンカとかは結構してたぞ?モテてはないだろー」
「おっぱい揉んでたのに?」
「村の姉や大人が抱き着いて来るのは挨拶だしなぁ」
「ゲイン様は鈍感なのかも知れません」
「そうね」
「そうか?」
村の姉とは、実の姉以外の村の歳上女性を指す。主に未婚。ミカさんやアロイさん達の事だ。
「少なくとも私はゲイン様以外に揉ませたくはありませんよ?」
「あたいだって!」
「そうかー。子供に抱き着いて若さを吸収するのは普通の事だと思ってた」
「抱き着かれ過ぎた結果が今のあんたなのね」
「良い大人になったろ?」
「私の若さを分けてあげるわ」
「だーめー。ゲインが歳下になっちゃうー」
「その時は私がいただきます」
「う~しぃ~」
話をしながら飯を食い、食後をまったり過ごして午後となる。街へと帰って行く冒険者達がチラホラ現れ出したので、片付けをして俺達も帰ろう。
「ゲイン~」
「なんぞ?」
門を潜ってすぐの事、タララが俺を呼び止める。一度宿に戻りたいのだそうな。
「どうせ道すがらだし構わんよ?丁度トイレ行きたかったし、宿で少し休んでから行こうか」
「優しいわね」「モテますね」
事実を述べただけなのだが。宿に着き、俺は一人、部屋で待つ。女達は連れションだそうだ。俺もしたいのだがもう少しの我慢だ。
みんなスッキリした所で中古武器屋におもむくと、髭もじゃ親父が起きていた。
「待っとったぞ?」
「外に出てたんだ」
「店主、早速見せてもらおうかしら」
「うむ、持ってみい」
スチャっと横持ちにしたツルハシスコップをアントルゼに持たせると、カウンターに戻って行った。流石に寝ないか。
「少し重くなったわね」
「性が抜けてスカスカだったからの。それが本来の重さじゃ。研いであるから気を付けて振れ」
縦横突きと振り回し、どうやら問題無いようだ。カウモアは何か気付いたようだが俺には分からなかったよ。
「研いであるのは横だけでしょうか?」
「ん、気付いたか。先端は研ぎ過ぎると欠けるからの。いざって時にそうなっては目も当てられん」
「敢えて刺突はさせたくないって事かしら」
「刺さり過ぎると抜けなくなるぞ?」
「なるほどね」
「使ったら必ず持って来い」
了承し、金を払って店を出る。夕飯にはまだ早いな。
「もう外に出たくないし、先に風呂に行こうか?」
異論なく、公共浴場へと向かいたっぷり元を取る程温まった。
「みんなお風呂好き過ぎ~」
アントルゼ達に窘められ、タララにしたらだいぶ長湯をさせられたらしい。
「長湯したんだな、えらいえらい」
「私達を褒めなさいよ」
「アントルゼもカウモアも頑張ったな、よーしよしよし」
アリの頭をぺたぺた撫でてやると牛が角で突いて来る。ぺたぺた撫でてやる。
「ゲインー、あたいもー」
「タララは後でな」
宿に戻って食堂へ。みんな思い思いの食事にありつく。俺は焼き魚とキノコスープにソーサー。タララは焼肉2つとマタルスープにソーサー。アントルゼとカウモアは焼肉と豆スープにソーサー。3100ヤン也。
「エールくらい飲んでも良いんだぞ?」
出かける用事も無いので勧めてみたが、タララはソーサーの方が良いと言う。カウモアは護衛する可能性もあるため素面で居たいそうだ。
「飲むならワインが良いわね。水で薄めてだけど」
「ワインってブドウで作る奴か。ブドウはこの辺りじゃどこも作ってないよな」
「国を跨いで輸入してるのよね。お金のありがたみが分かるととても飲めたもんじゃないわ」
「酒は時間的な手間がかかるらしいし、仕方ないよな」
「では私はエールで!」
「「うえっ!」」
俺とアントルゼの間からにゅっと現れた人物に2人して変な声出してしまった。
「定時で帰宅しましたよー。皆さんお疲れ様です」
ギルド帰りのメロロアだ。
「荷物や住処のあれやこれやはしなくて良いのか?」
「荷物はいつもここに入れてますし、部屋の掃除は毎日してましたからね」
「女子力高いじゃない…」
「知ってますか?一人暮らしだからってズボラで居ると干物になっちゃうんですよ?いついかなる時も万全の体制で寿退社できるように努めるのが出来る女ってヤツなのです!」
ギルド職員は影の努力を怠らないのだな。美人揃いで花形な職業ではあるが、それだけでは嫁の貰い手がないと言う事か。
エールと焼肉の追加注文がテーブルに並ぶとメロロアが音頭を取る。
「私の円満退社と冒険者登録、そしてゲインさんのパーティーへの参加を祝してーカンパーイ」
「「かんぱ~い」」「乾杯」「はいはいかんぱい」
「…って、パーティー参加したのはともかく、登録?」
「元冒険者じゃ無かったのね」
「ぷふー。そう言う人も多いですけどね、多くは無いですよ?元Aランクとか言うと、15で登録して10年とかかかるんですから、ギルド入るより結婚が先でしょ」
「メロロアさんっていくつなの?25?」
「ゲインさぁんタララさんがいじめるう」
「歳上だとは思うけど、聞いておいた方が良いかも知れないな」
「ゲインさんまで!」
「あんたにしてはデリカシーに欠けてるけど、何か理由があるのよね?」
「そりゃあ、子供産めない歳になったら可哀想だし」
「頂けるんですね?」
「良い男紹介しても「ここにしか居ません!」…あ、そう…」
「ゲインって意外に押しに弱いよね~」
「仕事じゃない時は特にね」
「見習いたいと思います」
何を見習うと言うのか。メロロアは今夜からでも…等とほざきながらエールをぐびぐび飲っている。
「俺達、鉱山都市グェッテルラントに行くつもりなんだ。身重にはキツい旅路だろうから、ここに残って貰わなきゃいけない。それでも良いなら、しようか」
「選択肢が無いじゃないですかヤダー」
「グェッテルラントに着いたらよろしくお願いします」
カウモアが深々と頭を下げる。思わずタララを見てしまった。
「…うん。家建てよ?そこでみんなで暮らすの」
タララは何かを覚悟したような表情で口を開く。確かに、家を建てるとなると金もかかるし覚悟がいるな。
「頑張って稼いで、良い家建てような」
「明日、掘りに行こ?」
タララは小さな声で囁いた。掘りに行く。この流れで考えるなら鉱石掘りでは無く川浚えの事だろう。すなわち砂金掘りだ。俺も小さく了承した。
「タララさんばーっかりイチャイチャしてずぅるーうぃ~」
ジョッキが増えてる?飲んでも飲まれてはいけない。それが酒だ。
食事を終えて、長居せず、部屋に戻って来た俺達は部屋着に着替えて思い思いのベッドに横たわる。
「ベッド狭いから他のに移ってくれよ」
「ちょっとだけ~」「ベッドを寄せますね」
二つ横並びになったベッドの間に押しやられ、両サイドからの圧を受ける。風呂に行ったメロロアが帰って来たらどうなる事やら。
「ねえ~ゲイン~。今日は無駄にいっぱい洗ったの」
「そうかそうか。女の子の良い匂いがするぞー」
「私はいつもキレイにしております」
「そうかそうか。女の子の良い匂いがするぞー」
「思考を止めたわね」
2人の頭が肩に乗り、洗髪剤とか言う男湯には無い代物で洗われた髪から花の香りがする。
「ゲイン、メロメロになっちゃった?」
「良い匂いだぞー。男湯には無いからなー」
「今夜は寝かさないよ?」
「いや、寝ようぜ?明日は川浚えするんだろ?添い寝しても良いから布団をよこせ」
「川浚え?土木工事かしら」
「マジックバッグを使った一獲千金だよ。明日は体力使うから朝飯はしっかり食っとけよ?」
「精神もすり減るよー」
「そう。私は寝るからいかがわしい事して起こさないでよね。おやすみ」
「おやすみ~あたい等も寝よ~」
「おやすみなさいませ」
「おやすみなさいませじゃないですよ!私の場所がないじゃないですか!?」
鍵、かけてあったんだがな。湯上りのメロロアが部屋に侵入していた。
「ベッドはいっぱいあるから好きなの使ってくれ」
「ちなみにこのベッドは3人用です」
「メロロアさんの場所無いから」
「いいえ、まだあります!」
俺の上に寝そべって来やがった。息苦しい…。
「メロロア、今夜は静かに寝てくれ。明日は少し外に出るからさ。後明かり消して」
「いけずぅ…」
俺の上から退いて灯りを消すメロロアは、少しうろうろしたと思ったら俺の唇を奪ってどこかのベッドに潜り込んだ。
「メロロアさんばっかりキスしてな~い?」
「遺憾ですね」
「避けられなかったのはお前等のせいだからな?」
「いーもん」
思い切り体に抱き着かれた。柔らかいなぁ…。
「お供します」
左右から柔らかいのが当たって、今夜はよく眠れそうだ。
両手両脚を2匹の大蛇に締め付けられる夢を見た翌朝。目を開けるとアントルゼがベッドの足元に座ってた。
「起きたのね」
「起きた…。何してんだ?」
「ゲイン、また硬くなってるわね」
「あまり触れないでくれるとありがたい…」
「触れてないわよ、見てるだけ」
布団から盛り上がるアイツを飽きる事無く見ていたようだ。
「ゲインさぁ~ん、おはようございますぅ~…って、何してんです?」
「見てたのよ」「!…ほほう、これはこれは…」
「触れてはダメよ?朝は特に、そう言う決まりなの」
「それで見ていたと…。眼福です。今日の仕事も頑張れます」
「そろそろ2人を起こしてくれ、おしっこしたい」
「私はお先に仕事に向かいます。買取り金にはまだ余裕がありますので高額でなければお持ちくださいね」
「高額になるから寄らないよ」
「聞かなかった事にしておきます。では…ちゅ。行ってきます」
「しれっとキスしてったわね」
「またっ!」「やられたっ!」
ガバッと起きた2人がドアの方を見やるが、メロロアは既に消えていた。その隙にマントを羽織ってトイレ行こう…。アントルゼもマスクを被って着いて来た。
「ねえゲイン、水のアクセ貸して」
「飲むのか?」「手を洗いたいの」
「落とさないようにな」
「やめてよね、本当になったら困るじゃないの」
アクセを着けたアントルゼが個室に消えて行く。間合いを取って待っていると、しばらくして帰って来た。
「落としたか?」
「落とさないわよ!無駄に集中しちゃったわ」
帰って来たアクセを着け直し、俺も個室へ。アントルゼは先に戻ってなされ。
スッキリして部屋に戻り、皮鎧に着替えて朝食に向かう。焼き魚は油がサラッとしてて朝飯に丁度良いな。味が濃いのでソーサーにも合う。
「ゲイン、それ、美味しいの?」
「すごく美味い」
「お酒飲みながら食べてたわよね、私も夕飯に頼んでみようかしら」
「あたいもそーするー」
食事を済ませ、準備が出来たら出発だ。南門から街道を走り、木の門にやって来た。
「今日もやってるねぇ~」
橋の先では有象無象同士がボコボコやり合っている。アレで儲けが出るのかどうか…、気にしても仕方ないか。
「おはようございます。今日も馬鹿騒ぎですね」
「ゲインか。今日もこんなだが、狩りにでもしに来たのか?」
「今日も小石拾いですよ。投擲が便利過ぎて近接が疎かになりそうです」
「訓練はしておくに限るぞ」
「そうですね。練習します」
久しぶりに隊長さんが居たので挨拶がてらに少し話し、川へと降りて下流に向かう。
「ここの石を使ってたのね」
「先ずは練習。小石中と大を、枠一つが埋まるくらい拾ってみろ」
「それ以外は捨てても良いのよね?」
「捨てるかどうかは自分で決めるんだ」
「はて、どう言う事でしょう?」
「拾ってみれば分かるさ。俺は焚き火を熾すから、できるだけ早く拾いきれー」
アントルゼは足でぺたぺた踏み付けながら、カウモアはしゃがんで手で持ち吟味しながら小石を拾う。
「タララ、見本を見せてやれ」
「あいよ~」
五体投地でゴロゴロ転がり地面の石を消して行く。
「まさかそんなに雑な感じでやるなんて、思ってもなかったわ」
「捨てるとは、そう言う事でしたか」
2人並んで寝そべって、転がりながら収納して行く。俺は石で竈を作り、やかんにお湯を沸かす。
「要らないのは凹みに捨てると良いよー」
「砂やらゴミやらでいっぱ…え?」
「どうしましたか?」
「あの翡翠も、ここで採れたのね…」
小声のアントルゼにカウモアが反応し、自身の持ち物を確認して目を見開いた。
「一財産出来ますね…」
「意外と安いんだけどな。量出すと値崩れするし。それに、今回の目標はそれじゃない」
「察したわ。こんな所にあるのね」
「俺は火と荷物の番してるから、水遊びでもしておいで。タララ、潜り方教えてやってくれい」
「あーい。みんな、なるべく濡れても良い格好になって~」
タララは上半身の皮鎧を収納し、素早くシャツに着替えるが、ブラ丸見えだったぞ?カウモアはゆっくりと、ブラを見せるように脱ぐ。
「時間は有限だ。分かるな?」
「了解しました」
「それと、上流から覗かれても知らんからな」
「そ、そうでしたね、迂闊でした」
アントルゼは茂みに隠れてシャツに着替えたようだ。具足も外してサンダルになったな。
「急に入ると死ぬほど冷たいから気を付けてねー」
「死にかけても上がって来いよ?」
「善処す…あ、諦めて良い?」
「ゲイン様は、この冷たい水で体を洗っていたのですか?」
「冬の時期以外はなー。けど洗濯や料理の洗い物は冬でもやるぞ」
「水に慣れたら潜るよー?できるだけ底にへばり付いてね!」
ざぶんと潜ったタララが息の続く限り川底を浚う。
「ぶはっ!はっふっはっ、みん、なもっ、早く!」
「や、やるわよ!?」
自分に言い聞かせるように気合いを入れたアントルゼが川の中に姿を消した。が、直ぐに顔を出す。
「さささささぶいばよよよよよよ」
「さ、さすがに、タララ様程には、も、潜れませんね」
これはスープでも作っておくべきか?アントルゼはともかく、カウモアまで泣き言を言っている。俺はやかんを降ろして鍋を出し、沸いたお湯を使ってスープを作り始めた。
泣き言を言うくらいの冷たさだが、何度か潜ると慣れたようで口数も減って行く。程なくして3人が水から上がって来た。
「早く火に当たれ。デリートウォーター」
「しししししぬかとおもももももたわよ!」
「新手の拷問ですね…」
「これ飲んで暖まれ。で、良い物は拾えたかな?」
3人にスープを供して休憩と戦果の確認。マントを羽織った3人はスープをすすりながら戦利品を確認して行く…。
「信じ、られないわね…」
お目当ての物は拾えたようだ。
昼食の後はアリと牛は休憩兼焚き火番となり、交代した俺が入水する。タララは少しお昼寝するのだと。
流れる川に肩まで浸かり、体を慣らす。子供の頃から川で体を洗ってると言っても早々慣れるモンじゃない。限界まで我慢するだけだ。彼女等の入ってない辺りにアタリを付けて、川底を這って収納する。
見えてる場所の、大きい石はただの石。奥が見えない砂利や砂の中に求める物はあるはずだ。片っ端から収納し、岸に近寄り水面に顔を出す。
「ぷふ~……」
「上がるんなら上がりなさいよ、びっくりするじゃない!」
「んあ、ゲインー、取れたー?」
水から上がると再び入る時に寒い思いをするから上がりたくないだけなのだが、アントルゼを驚かせてしまったようで、寝そべってたタララも目を開けた。
「まだ選別してない」
その場で中身を確認し、要らない物を川底に返して行く。ほとんどが砂や砂利の中、多少の翡翠と水晶が残る。目当て以外の金属や石炭は今回はお帰りいただいた。砂金もあったけど、ほんのちょっとだったよ。今度は3人の居た所より上流にするか。浅瀬の中を這いつくばって移動して、再び川底を浚ってく。
「ぶふっ、やっぱキッツいな」
「上がっといで~」「お湯飲んでください」
要らない物を川底に返し、這う這うの体で岸に上がる。
「デリートウォーター…。焚き火が無かったら死んでしまうな」
「おかえり~」
「ささ、お湯をどうぞ」
「どうだった?」
「ズズ…。思ったよりは無かったな。他のはそこそこ採れたけど、深く掘るか、上流に行くしかないだろうと思った。タララなら塊で採れそうだがな」
「あたいだって塊採ってないからね?」
「ねえゲイン、もしかして、ギルマスがこっそり拾ってっちゃったんじゃない?」
「はは、想像すると笑えるから許してやろう」
休憩して、タララと一緒にもう一度川に入る。少し深く掘って見たものの、内容は芳しくなかった。お湯飲んで温まったら鎧を着けて、今日はもう上がる事にした。門番さんに挨拶して街道を戻って行った。
宿より先に風呂が良い!…と言う事で、夕方にはまだ早いが先に公共浴場へ向かう。温かい風呂は最高だな。早風呂のタララも流石に長湯したようだった。
「空いてて良かったわ」「羽を伸ばせましたね」
「ゲイン聞いて!洗髪剤で尻尾洗ったらサラサラなの!」
「それは良かったな」
「私の髪もツヤツヤなのよ?」
「それは良かったな」
男湯にはそんな物無い。誰が使ったか分からないヘチマが数本あるだけだ。使いたくもない。
暗くなる前に宿に帰り、部屋で戦利品を検める。
砂金 1250粒
翡翠中 品質高 265個
翡翠中 品質中 127個
翡翠小 品質高 311個
翡翠小 品質中 160個
水晶 品質高 25個
水晶 品質中 301個
水晶 品質低 684個
紅水晶 品質高 98個
紅水晶 品質中 451個
紅水晶 品質低 707個
4人で潜ってこれだけ採れた。品質の見極めはアントルゼに任せたが、俺の鑑定も同意見だったので多分間違いないだろう。ちなみに、燦然と輝く砂金の半分近くはタララが集めた。
「拾ったは良いけど、売れないね~」
「いざと言う時に換金したら良いのさ」
「いざと言う時には投げられるわね」
「高価な石つぶてですね」
「誰か箱に余りはないかな?売っ払ったのが悔やまれるぜ」
「あたいなーい」「私も荷物を仕舞ってある箱だけよ」「同じく」
「焼けちまったし仕方ないよな。砂金だけはお釣り袋に入れて中箱に入れとくよ」
他の石は全部まとめて収納した。多少容量を圧迫するが、箱を入手するまで我慢しよう。
「箱なんて買ったら良いのに」
「そう思うよな。けどさ、店や露店で売ってるの、見た事あるか?俺は蓋が壊れたヤツを一度買ったっきりで、それからは1度も見てないんだ」
「人気商品なのかもねー」
「分解して、より価値のある物を取り出す…?」
「鉄と板切れにしかならなそうよね?」
アントルゼが自分の箱を取り出して眺めているが、俺も鉄と木っ端にしかならないと思う。
宝箱
ダンジョン産の宝箱。鍵穴はあるが鍵は存在しない。
鑑定の結果もこんなもんである。1000ヤン程度で買える家具だし、テーブルの値段を鑑みると本当に売れ線なのかも知れないな。
戦利品を片付けてベッドに横になると、すぐにベッドが寄せられて、左右から2人に挟まれる。部屋のレイアウトが日に日に変わって行く。メロロアが帰って来るまで仮眠しよう。肩に乗る2人の頭から洗髪剤の良い匂いがして来る…、川遊びして少し疲れたようだな…zzz
気付いたらメロロアとアンテルゼに眺められていた。
「おはよう。今度は腫れてないわよ」
「おはようございます、ゲインさん。硬くして差し上げましょうか?」
「おはよう。瞬間移動できるスキルが欲しい。動けない」
「よいではないですか。ハーレムですよ?ハーレム」
「ちゃんと順番は決めなさいよね?」
「順番?」
「正室に側室って事よ」
「なるほど分からん」
「ゲインさんは貴族じゃないから分かりませんよ。1番目の奥さん、2番目の奥さんって意味です。私は3番でも4番でも構いませんよ」
「平民って妻をたくさん持って良いのか?」
「基本的にはダメですね。かと言ってハーレム作ってる人が居ないわけじゃないです。妾として家に住まわせるんですよ」
「その辺りは平民も貴族も変わらないみたいね」
「お貴族様は同意が無くても妾にしたりしますけどね」
「やっぱ貴族って最低だな。そろそろ起きたいから話してくれ、1番2番」
「あいっ」「ただちに」
やっぱり起きてやがったか。
現在のステータス
名前 ゲイン 15歳
ランク C/E
HP 100% MP 88%
体力 D
腕力 E
知力 E
早さ D-
命中 E-
運 D
所持スキル
走る☆☆ 走る☆☆ 走る 走る 走る
刺突☆☆ 刺突
硬化☆☆ 硬化 硬化
投擲☆☆ 投擲
急所外物理抵抗☆☆
飛躍☆ 飛躍
木登り☆
噛み付き☆☆ 噛み付き 噛み付き
肉体強化 肉体強化☆
腕力強化☆ 腕力強化 腕力強化
脚力強化☆ 脚力強化☆ 脚力強化
知力強化☆
体力強化☆ 体力強化 体力強化
ナイフ格闘術☆ ナイフ格闘術
棒格闘術☆
短剣剣術☆ 短剣剣術☆
避ける☆
魅力☆
鎧防御術
察知
探知
マジックバッグ
マジックボックス
鑑定☆ 鑑定
魅了
威圧
壁歩き
水魔法☆ 水魔法
|├ウォーター
|├ウォッシュ
|└デリートウォーター
├ウォーターバレット
├ウォーターウォール
└ボーグ
土魔法☆
├ソイル
├サンド
└ストーン
火魔法
├エンバー
├ディマー
└デリートファイヤー
所持品
革製ヘルメットE
革製肩鎧E
革製胴鎧E
皮手袋E
皮の手甲E
混合皮のズボンE
皮の脚絆E
水のリングE
水のネックレスE
革製リュック
├草編みカバン
├草編みカバン2号
├紐10ハーン×9 9ハーン
└布カバン
├冊子
├筆記用具と獣皮紙
├奴隷取り扱い用冊子
└木のナイフ
革製ベルトE
├ナイフE
├剣鉈E
├剣鉈[硬化(大)]E
├解体ナイフE
└ダガーE
小石中☆500
小石大☆450
石大☆20
冒険者ギルド証 9,835,000→0ヤン
財布 ミスリル貨238 金貨15 銀貨16 銅貨14
首掛け皮袋 鉄貨74
箱中 681,835ヤン
ミスリル貨2 金貨31 銀貨155 銅貨168 鉄貨35 砂金1250粒
マジックボックス
├箱
|└シルクワームの反物×33
├未購入チップ各種箱
├医薬品いろいろ箱
├食料箱×2
├調理器具箱
├ランタン箱
|└油瓶×10 9.5/10ナリ
├竈、五徳
├蓋付きバケツ大
├テントセット
├マット×4
├毛布×4
├洗濯籠
|├耐水ブーツ
|└耐水ポンチョ
└宝石
鉄兜
肩当
胸当
腰当
上腕当
ゲル手甲
ゲル股当
帆布のズボン
脛当
鉄靴
熊皮のマント
籠入り石炭0
石炭86ナリ
ランタン
油瓶0.4/0.8ナリ
着火セット
服箱
├中古タオル
├中古タオル
├未使用タオル×2
├中古パンツ
|パンツE
├未使用パンツ×2
├ヨレヨレ村の子服セット
├サンダル
├革靴
|街の子服AセットE
└街の子服Bセット
スキルチップ
ハシリウサギ 0/4521
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ハシリトカゲS 0/1
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短剣S 0/100
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