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金チップの効果は誤差じゃなさそうだ
しおりを挟む家に帰って荷造りの続きをする。居間に収納する物を並べて行くが、マットはともかく毛布は今夜使うし、ランタンも寝る時まで使う。皿やカトラリーは明日の朝使うので仕舞うのは最後だ。俺の空きは6つでタララは5。奴隷の2人は各9つだ。細かい物を纏めたいので今はとにかく箱が欲しい。
「ねえ、あんた」
「ん、なんぞ?」
荷物が少なく収納するだけで暇になった小さいヤツが声をかけて来た。甘いのでも飲みたいのか?
「あのチップ、使ったら私もあんたの事が好きになっちゃうの?」
「魅力は魅了と違うから、いきなり好きになったりはしないさ。白チップの中でもレアなヤツだから効果は高いけどな。金チップだとどれだけ上がるか判らんが…、運と魅力が上がって無駄な動きを抑えてくれる」
「そう言うもんなのね」
「魅力的な人でも好きになるのは違ったりするだろ?」
「分からなくはないわ」
「これ売って袋の銀か金を買った方が絶対お得だと思うんだが、お前ならどうする」
「マジックバッグの強さを考えると悩むわね。けどあんた言ってたじゃない。使い方次第だって」
「そうだな。金塊100ナリ拾う程度の豪運持ちに使わせるのも面白そうだよな」
「金塊と交換したら良いんじゃない?武器が増えるわよ?」
「小さいくせにめちゃくちゃ重いからな、あれ。威力はありそうだが…」
「無くしたら泣けるわね」
「アンテルゼ、そろそろお休みの時間です」
寝間着を着た大きいヤツが小さいヤツを呼びに来た。俺もそろそろ寝ておくか。
「…面倒事になった事を詫びるわ。おっぱい吸いたきゃ吸わせてあげる。だから、生き残りましょ」
寝間着をたくし上げておっぱいを晒す小さいヤツに、大きいヤツが反応した。
「なっ!アンテルゼ!私だってまだなのにっ」
「おっぱいは置いといて、みんなで生き残ろうな」
小さいヤツの頭を一撫でして自室に戻る。金の魅力は封印だな。
翌日はまだ明けきらぬ内から起き出して食事の支度に勤しむ。買い置きのソーサーとスープを温めて柔らか干し肉を炙るだけなんだがな。
ソーサーは、温めた焼き鍋2つにソーサーを5枚ずつ入れて蓋をして、火から離して放置した。スープは火にかけて温めるだけ。干し肉9枚は油を引かずに焼き鍋で焼いた。
その内に奴隷2人が起きて来たので配膳などを手伝わせ、タララも焼ける肉の匂いを嗅ぎつけてフラフラと起きて来た。
「ねむい…にく…」
「おはようタララ。ちゃんと寝てるのか?」
「寝てるけどぉ、起きたら布団がどっか行っちゃうのぉ」
宿で寝てる時はどうなってたんだ?赤ちゃんを寝かせる時の柵でも付けてやらねばならんよな。ダンジョンで寝る時は壁を高めに作ろうと思った。
食事を済ませて身支度を整え、荷物を分担して収納する。食材の箱に調理器具の箱は大きいヤツに、寝具は小さいヤツに持たせた。医薬品は誰でも使えるように分担してカバンに、ランタンは中で使うから油を補充して各自が持つ事にする。俺のランタンはちょっと勿体ないけど火を付けた状態で収納した。現地で火を付ける魔力や時間を節約したいのだ。
「皆さんおはようございます」
準備が整いさあ行くぞって所で、タイミングを見計らったようにメロロアが来た。と言うか居た。ドアを開けた横に隠れるように立ってたのですこぶるびっくりしたよ。
「何だ暗殺する気か」
「殺気も出して無いのにー」
「プロはそんなもの出さずに殺るんだろ?」
「まあ、そうなんですけどね」
てへっと笑うメロロアは普段のギルド制服とは違い、殺る気満々の青黒い皮装備だ。少しでも気を抜いたら殺られてしまうに違いない。事実、俺達が大通りに出た頃には俺の感知系スキルから消えていた。
「まだ街の中なのに冷や汗が出るわ」
「奇遇だな、俺もだ」
「そんな事無いでしょ~」「ないですよ」
声だけ聞こえる。取り敢えずは気にしないようにして西門へと向かった。
薬草などを摘みながら、急ぐ事なく移動する。ダンジョンの入口に着いてやっと姿を現したメロロアに、入った先の注意事項を説明してたら、みんなのランタンに火を分けて中に入る。
「タララ頼むぞ」
「あいよ」
カツッカツカカカカドガガゴガガガガッ!
「ひいっ」
「はみ出ても良いけど痛いからなー」
「こりゃあ凄いですね。報告は聞きましたが」
左端を1列に並んで無限発射ゾーンを推し通る。俺の前を行くメロロアが矢を拾ってまじまじ見ているが、鑑定でもしてるのか?左折に着いてブロックで発射を堰き止めて、ホッと一息。
「こりゃあ、こっちの入口は使えませんね」
「けど野盗は上手い事使ってたんだよな。罠の解除が出来るのかも知れない」
「それが見つかるまでは反対側を使うようにしましょ」
休憩はもう少し行ってから。少し歩いて一見何も無い通路で立ち止まる。
「スキルが無いとここは分かりませんね」
「下向きの階段はここだけだから、ここが正しいルートなはずだ」
4人で一斉に壁を切り出し、キレイに通路を塞いでく。
「通せんぼですか?」
「事故防止だな。1日過ごしたら埋まっちゃうみたいだから、知らずに寝泊まりすると大変な事になる」
「成程」
大部屋になった所で部屋の隅にトイレ用の縦穴を掘って休憩する。
「丸見えですよ?見たいのですか?」
「メロロアさん、ゲインって下ネタあんまり好きじゃないみたいだよ?」
「出したきゃ出しても良いぞ。その代わり臭かったらギルドでネタにする」
「はい、自重します」
「それが良いですね」
「私したいからとっとと降りてよ」
小さいヤツがしたいと言うので大きいヤツを残して階段を降りる。以前作ったトイレは、やはり跡形もなく消えていた。
我も我もとトイレを済ませ、壁を切り出し先に進む。出て来る敵をドババッと殺しながら、向かうは宝箱。我が家には必要な家具だ。中身に期待感が無くなった小さいヤツは静かなもんだが、ポーションだって当たりなんだぞ?
「ここは豪運のタララに開けてもらおうか」
「ゲイン開けたらいーじゃん」
「俺が開けるとチップが出そうだしなぁ」
「あたいが開けたら金塊だよ?」
「流石にそれはないだろ。開けれ開けれ。メロロアはミミックが出たらやっつけてくれ」
「え?まあそのくらいなら…」
中身はお金だった。金塊ではなかったが銀貨と銅貨が20枚ずつ入ってた。
「22000ヤン…ですね」
「今はポーションの方が良かったな」
「次からはアンテルゼちゃんに開けてもらお」
「お金で良いじゃない!」
「5人で4枚ずつ分けとこう」
「え、私にもくれるんですか?」
「その分働いてくれ」
「一生付いてきます!」
付きまとわれそうなので早めにギルドに返却したい。敵を屠りつつ、東側の入口に着いた。
「ここ、上がって帰るのは難儀ですねぇ」
「この上は隠し扉と矢が出る罠がある。ここも野盗にはバレてなかったようだ」
「見て来ても良いですか?」
「隠し扉を開けると飛び出すから注意な。言わなくてもわかりそうだけど」
「事前情報は大事ですよ。では直ぐに戻りますのでイチャイチャして待ってて下さい」
天井に飛び上がり、ギザギザに指をかけ軽い身のこなしで上がって行った。
「塞ぐか」
「怒るよきっと」
「何食わぬ顔で後ろに立たれそうよね」
「イチャイチャしてドン引きさせるのも一興かと」
「止めとけ。しれっと混ざって来るだけだ」
「そうね、構わないのが一番ね」
床に座って待つ事しばし。天井から顔だけ出すメロロアに小石を飛ばしてやった。…なぜあの体勢で避けられるんだ?
「酷いじゃないですかー!」
「声かけろよ。びっくりするだろ?それとも何か?俺達を驚かせて楽しみたかったのか?お前は真面目に依頼してる冒険者にそう言う仕打ちをするのか。戻ったら報告させてもらうからな」
「わっ、分かりました。申し訳ございませんでした!しっかり仕事するので許して下さい~」
「一番効いたわね」「だねー」
メロロアを凹ましたので小石を拾って先に進む。階段前の敵をドババッとして、下へ降りる。前回見た木の扉だ。今回も感知系スキルに罠を感じない。それでも慎重に、盾をかざして扉を開けた。
「うわぁ…」
「分かるか」
「ゲインさん達はどうやってここ抜ける気ですか?」
「道は俺の後ろにできる」
「はぁ」
ここには敵は居ない、と言うか居たら勝手に死ぬので俺が先頭を行く。通路の左側のブロックを切り出し道を作り、持ちきれなくなったら前方に射出する。壁に当たったブロックが罠のスイッチを押し潰し、破壊し、暴発させた。射出する矢に下から突き出る槍。そして落とし穴と吊り天井のセット。全て空振りに終わった。
「メロロア。普通の冒険者ならどう進む?」
「進んだ先に女神様がいたら良いですね」
「それって死んでない?」
「ほとんどはそうなるでしょうね。私なら、壁に杭を打って、足場と手摺りを確保しながら行くでしょうか…。取り敢えずCランクじゃキツいですね」
100ハーンの道のりを抜けると、その先は丁字路だ。
「いるねぇ」「居ますね」
「コボルドか?」
「だね」
左右に10ずつ、計20匹か。
「タララは真ん中、左右にお前ら。灯りは俺とメロロアが持つから2人で殺ってみろ」
「私、ゴブリン殺るのも必死だったのだけど?」
「出来るだけ引き付けたら壁に見えるくらいにブロックを撃ってみろ。あの時の速さが出れば重さで勝手に死ぬ」
「わ、わかった」「アンテルゼに合わせます」
盾を横に構えるタララの左右に目一杯ブロックを収納した大小奴隷が並び、俺とメロロアは明かり取り。敵を呼び込む為に俺がブロックを射出すると、勢いよく奥の壁に当たり音を成して砕けた。
「ガルルルルルッ!」「アオーーーーン!」
「ゲインさん、やっちゃいましたね。仲間呼んでますよ?」
「どうせ倒すんだ、気にしても仕方ないさ。俺がブロックを補充する。通路を塞ぐくらいぶっ放せ」
「わかったわ」「了解!」「あたいは?」
「ランタン持って10ハーン程ゆっくり進め。抜けて来た奴はメロロアが働いてくれる」
「あいよー」「あ、はい」
のしっのしっとゆっくり進むタララと足並みを揃えて歩く奴隷達。敵もゾロゾロ。数を増やしながら寄って来る。俺はブロックを切り出して、いつでも渡せる準備をしとく。
「足で収納だ、忘れるなよ?」
「うん…」「了解です」
「足で出来たんだ…」
コボルド達が徒党を組んで、逆に戦いにくそうな程集まった。俺達を見て駆け寄って来るが、もう遅い。
「行くわよ!」「はいっ」
小さいヤツの掛け声で、18個のブロックがほぼ水平に飛んで行く。コボルドとは言えジャンプ力など高が知れている。天井まで飛べたとしても胴体をブロックが直撃して煙に変わる。最初の一斉射で32匹が煙になった。
「補充!」
「「はいっ」」
両足から地面を2個、俺が出したのを3個ずつ補充して前進するタララに追い付く。ブロックを乗り越えて来るコボルド達に追撃し、更に15匹。
「補充!」
「「はいっ」」
ブロックの裏に隠れたコボルドには上から被せるように押し潰し、更に8匹。障害物となったブロックを回収して各個撃破する事12匹。総勢67匹のコボルドを倒して感知系スキルからコボルドの気配が消えた。
「やったわね…」「やりました」
「おつかれ~」
「俺とメロロアは道を塞いで来るから回収をよろしく。休憩は階段前だ」
「あーい」「わかったわ」「了解です」
3人が道を戻り魔石やらドロップやらを拾いに行き、俺は信用ならざる用心棒を連れて丁字路へ向かい、投げまくられたブロックを使って左右の道を塞いでく。
「見事でしたねー」
「オークとかトロルには効かないだろうけどな」
「それでも充分じゃないですか。立派に食べて行けますよ」
「ダンジョン特化でな」
「攻城戦も行けますね」
「そうなると、相手も同じ事するだろうな」
「初戦のみですねー。所で、道を塞いでどうするんですか?」
「流石のメロロアでも分からなかったか」
「え?」
「正面のこの壁の奥に道があるんだ」
「マジですか?これ普通の冒険者は骨折り損ですよ。敵は雑魚ですが難易度高過ぎです」
「ドロップもしょーもないしな。まあ、これはまだ浅いから仕方ないとして」
「ゲイーン、拾って来たよー」
「お疲れ様。揃ったら中に入って休もう」
壁を切り取り通路が見えて、メロロアは感心してた。通路を進み、扉を慎重に開けて、階段と扉のある部屋に入った。
「ふへぇ。やっと休憩~」
「食事の前にトイレ用の部屋を作りたいんだが、賛成者は」
「はーい」「ん」「異論ありません」「良いですよ」
休憩したいのは山々だけど、トイレは大事だからな。入口のすぐ近くの扉を開けて、箱があるので感知系スキルでチェックする。俺は無いと見た。
「メロロア。罠かミミックか分かるか?」
「すみません。流石にミミックかどうかは開けてみないと…」
「そうだろうな。持ち上げて振ってみて、ベチャッとしてたらミミックだが、後は…」
箱の後ろから手を添えて、箱だけを収納した。今回は瓶とチップに、布袋に入った何かだけだった。
「へえ。確かに箱を消してしまえば雑魚になりますね」
「私の時よりキレイな瓶よ?もしかしてソーマ!?」
「それよりこの袋は何でしょう?」
「ゲインが開けるとやっぱりチップが出るんだね~」
他のも出たろうが。姦しい娘達に回収は任せて俺はトイレ作ろう…。穴を開けたら階段の部屋に戻った。好きなだけ垂れるが良い。
昼飯は買い置きのスープに買って来たソーサー、そして柔らか干し肉を簡易コンロで温めて食べた。お腹いっぱいにはしないのでソーサー2枚、干し肉2枚と少なめだ。
「ゲインがあたいを餓死させようとしてる」
「タララが餓死した時のためにフォーメーションを考えるか」
「ひどくない?」
「あんたが食べ過ぎなのよ」
「残ったスープは全部飲んで良いぞ」
空になった鍋に使った食器を入れて蓋してウォッシュすると、水はねもなくキレイに洗えたよ。やはり蓋をして洗うのが正解みたいだ。敵は居ないが用心のため入口だけ塞いで食休みした。
「ゲインさんのパーティーは随分ゆっくりなんですね」
メロロアが他の冒険者と比較する。
「スープ飲み切りたかったし、休憩は必要だからね。それに、ここで一度ドロップの整理をするつもりだ」
「?まだ箱2つしか開けてないですよ?」
「8つの部屋に1個ずつ箱があるんだ。全部集めてから降りる予定だ」
各部屋を周り箱を開けて行く。罠は無かったがミミックが2匹居て、箱を収納してでろ~んってなった所をメロロアが蹴り飛ばしていた。ベチャッとしてでろ~んってなり、煙に変わる。メロロアキック、恐るべし。
「やっと私も仕事した気分です」
「安っぽい瓶が多いわね」
「ポーションは瓶じゃない、中身だ」
階段の部屋に戻り、戦利品の確認と整理を行うのと同時に、メロロアに仕事してもらった。
箱×9
ミドルポーション×2
ポーション×8
アンチスタン×1
アンチポイズン×4
ミミックの魔石×2
コボルドの魔石×45
ウルフの魔石×15
ゴブリンの魔石×38
コボルドナイフ×32
ゴブリンナイフ×24
皮製マント×8
リング×8
ネックレス×2
小銭たっぷり
チップいろいろ86枚
ちょっとキレイな瓶はミドルポーションだった。これはお高そうだ。お高くて実用的な未使用マントも8枚取れた。掛け布団が厚くなるぜ。防御力さえ奪ってしまえば蹴り殺せる程度の雑魚なのだが、ミミックの魔石は結構レアみたいでコボルドより一回り大きいな。アクセサリーと小銭はギルドに戻ってしっかり検めるのだと。多いから仕方ないかな。ちなみに、布袋に入っていたのもお金だった。
ポーションは各自均等に持たせて、後は箱に詰めて行く。チップとお金は俺が保管。箱は4つずつ奴隷に持たせるが、ロープで縛って収納させたら中身が入っているのも含めて1つとカウントされたようだ。ロープ持って来て良かったぜ。残った1箱は俺の荷物を詰め直して収納したよ。
「ゲインさん、地下2階でもうウハウハですね」
「箱だけでも9000だしな、売らないけど」
「縛るだけでマジックバッグの枠を空けられるとか初めて見ましたよ」
「同じ物は100ナリまで1つの枠なんだが、縛ると種類が違ってても1つのアイテム扱いになるみたいなんだ。お金も袋に入ってれば幾ら入ってても1つのアイテムだし」
「ああ、それなら納得です。みんな知らず知らずのうちに使ってたテクなんですね」
「ゲイ~ン、早く行こ~よぉ~」
タララが拗ねてるのでとっとと行くか。階段を降りて地下3階…なハズだよな?
「これ、外なの?」
「外?階段降りたのにか?」
階段を降りて、明るくなったと思ったら目の前は森。見上げると樹冠の隙間から空が見える。
「フィールドエリアですね。こんな浅い階層で出るのも珍しいですが」
「取り敢えずダンジョンの中なのか。タララの弱点とも言えるエリアだな」
「そう言うゲインは得意なの?」
「知ってる森ならな」
「ゲイン様、闇雲に進むのは悪手ですが、進むとしたら如何すれば良いのでしょう」
「まずは情報が欲しいよな。敵の種類や強さに量。それに地形や階段の場所」
「見てきましょうか?」
メロロアなら満遍なく駆けずり回っても敵に殺られる事はないだろうが、初見でやるには安全マージンが足りない気がする。
「タララ、どっちの方向に階段がありそうか、分かるか?」
「ん?ん~…、あっちかなぁ?」
タララの示す方向に、感知系スキルを飛ばすが、見つけたのは箱と敵だった。敵を見つけて、慌てて周囲の索敵を行う。100ハーン程先にポツポツ単体のがいやがる。
「タララの行きたい方向には箱がある。多分金目の物だろう。敵はポツポツいるようだな」
「取らない手は無いわね」
「敵を減らしながら行こうか。集まるとさっきみたいには行かないからな」
進行方向を箱に向け、大きいヤツを先頭に進む。露払い、基、下草の刈払いしてもらうためだ。自然と進みはゆっくりとなるが、タララが遅いので気にならん。
「来たよ、正面」
「一旦下がります」
「フッ!フッ!」
独特の息を吐きながら走り寄るのはそれほど大きくない熊だった。先日のに比べれば子供レベルだが、世間一般ではこれが普通の大きさだと言える。
「2人はタララの後ろに隠れて周囲の警戒。俺は援護する」
一列になってじわじわ後退すると、刈られた草を踏んでノシノシ間合いを詰めて来る。熊の知能なんてこんな物だ。俺は後退しながら左右の地面を切り出す。
「行くよ!」
金棒を地面に擦りながら前に出るタララ。その左右は切り取られた凹みがある。盾を横に構えていれば回り込まれる事は無いだろう。俺はタララの後ろから、熊の顔に向かって小石中を飛ばして視界を遮り、腹に向けて石大を射出した。
腹に石をめり込ませ、頭を下げた熊にタララの追撃が振るわれる。遠心力で威力を増した金棒の一撃が熊の脳天を直撃し、突然背後から現れたメロロアの攻撃で煙と化した。
「魔石回収しましたよ」
「ゲイン様、大きい石は回収出来ましたが小石はいくつか見失いました」
石を受け取り先に進む。箱に着くまでに何度も魔獣熊に遭遇したが、どれも単発で助かった。複数相手だと全員で当たらないと手が足りなくなるし、増援に気付くのが遅れる危険もあるからな。
「金目の物なんでしょ?誰が開けるの?」
「まずは罠の確認してからな。開けるのはタララ頼む」
「お肉出る事を願ってみるね」
「魅力のチップ使うか?ドラゴンの肉が出るかも知れんぞ」
「ゲインさん、それ、使わなかったんですか?」
取り出した金チップをタララにくれてやる。
「俺のしょぼ運を伸ばすより、金塊100ナリ拾っちゃうような豪運持ちに使わせた方が良いだろ」
タララが金塊を出して来るが、そのまま仕舞わせた。俺の所持枠は余裕を持たせておきたいんだ。それに売るに売れないもん。
「やっぱり持って来てたんですね…」
「置いとけないんだもん」
もくもくと立ち上る煙を浴びて、タララが箱を開けると、中には小さな箱が入ってるだけだった。
「ミミックの赤ちゃん?」
「まさかそれはないだろ」
「良い箱ね。普通に金目の物じゃない」
金の補強が施された15ドン四方程の小箱だが、念の為感知系スキルで調べて、メロロアにも鑑定させた。
「これも売れませんねー。激ヤバです」
「やっぱりあたいが開けちゃダメな気がするよ。ゲイン開けて」
「この箱自体がギルマスがニヤニヤする案件なのか?」
「これ、本物のマジックボックスです」
マジックバッグではなく、マジックボックスか。スキルだと100種類入る激レア金チップだ。
「商人は盗られるのを嫌ってチップを使ってますが、貴族はこちらを持つのがステータスとも言われてますね」
「うちには無かったわ」
「上級貴族の上の方しか持ってないと思いますよ?」
「そんな物がこんな浅い所で取れちゃったのか…。なんかタララが輝いて見えるよ」
「それ、魅力的って事だよ。惚れた?ハグして寝たい?」
鎧のままで寝るから、ハグして寝たら押し潰されてしまうと思う。箱を持って念じると、中身を確認できるとメロロアが言うので試してみると、中にはチップが結構な枚数入ってた。
「…中身の確認もタララにやらせりゃ良かった…」
「またチップなの?」
「ああ、チップだ。階段見つけたら下に降りて確認しよう。タララよ、今度こそ階段はどっちだ?」
「えー?う~ん…、あっちかなぁ?」
「どう思う?メロロアよ」
「行ってみないと何とも…。あ、敵が固まってますね。階段の可能性はあるかもです」
「階段だったら今日はそこで1泊だな。気を付け行こう」
「あ~い」「了解です」「はあい」
「泊まりは良いけど、随分早いのね」
「寝床とかトイレとか作るし、飯も作りたいからな」
「そう言う事ね、理解したわ」
下草を切り払い、敵を屠りながら階段と思われる場所に向かう。
「ゲイン、3匹いるね」
「ああ」
森の中にぽっかりと開けた草地の中心に、石畳が敷かれ小さな建造物が建っている。入口の時と似た形だし、どうやら当たりっぽいな。
「みんな、ブロックを目一杯持っておけ」
「あいよ」「了解」「わかったわ」
みんなでブロックを切り出して、草地の入口で熊に向かってまずは一斉射。俺と大きいヤツのブロックは命中して熊をぶっ飛ばし、小さいヤツの射出したのは躱されてしまった。ソイツはすぐにこちらに気付いて走って来る。
盾を構えてノシノシ前に出るタララの目の前で、不用意に立ち上がった熊の体に盾から射出された小石の弾幕がクリーンヒットした。動きの止まった熊は、左右からのブロック斉射に挟まれて、続くメロロアの背後からの攻撃で煙になった。残る2匹も同様に、片方を足止めしてる隙にダメージを与えてメロロアがとどめを刺して戦闘を終えた。
「ふぅー、ふぅー…」
「みんなお疲れ。タララは座って階段から何か来ないか見てろ。メロロアは周囲の警戒、俺達はいろいろ回収だ」
「ゲイン様、チップです」「こっちは小石だけ」
タララの射出した小石も全て見つけだす事は出来なかった。限りある残弾、大事にしないとな。大きいヤツが拾って来たチップには熊の絵が描かれていた。効果が全く想像できない。熊のイメージなんて馬鹿でしつこくて力が強い程度しか浮かんでこないぞ。
「考えてないで使ってみたら良いじゃない」
「持ってないチップだし、それもありか」
スキル : 肉体強化
肉体強化 : 肉体に関わる能力を強化するスキル。体力、腕力、脚力、が僅かに増す。
「1枚で1500ヤン相当のレアチップだったよ」
煙を吸って効果を見ると、3つのステータスが僅かに増えると書かれていた。弱いチップは極僅かからなのでレアの中でも上位だと思われる。白チップだからと言って捨て値で売ると大損してしまうな。
「ゲーイーンま~だ~?」
この様子からすると小腹が空いたのだろう。みんなが集まった所で階段を降りる。それなりに長い階段を降りた先は再び地下通路型のダンジョンになっていて、家の居間程の広さの部屋になっていた。
「なかなか広いな。まずは罠を調べるから動かず触らずで頼む」
メロロアと2人で部屋をチェックし、ついでに扉の外も確認する。扉の向こうは通路が1本伸びていて、敵もいないし罠も感知できなかった。メロロアも同意見なのでまず間違いはないだろう。が、
「この奥、なんか居そうですね」
「エリアボスとか?早くね?」
子供頃聞いた冒険譚では、10階潜るとエリアボスと言うのが定番だった。今思えばこの近くのダンジョンは、チンピラを殺したあそこしかないのでほとんどはあそこの話だと思うのだが、あの頃は胸躍らせて聞いていたものだ。
「ゲイン様、タララ様が切なくなっておられです」
昼飯に余らせておいたソーサーを大きいヤツに持たせ、俺達は寝床作りだ。部屋の端に切り取ったブロックで壁を作り、穴を掘ってトイレを作る。流石に部屋の外や上の階には作れないので仕方ない。反対側には寝る場所にして、壁を作った。タララが転げ回らないように出入口も1段重ねる。
「ここまで作っといてなんだが、多分今夜か明日にはこの壁無くなると思う。トイレは早めに済ませないと、垂れてる途中で壁や穴が消える事になるやも知れん」
「心に刻み込むわ」
いつダンジョンが元に戻るか、調べておかないとな。
現在のステータス
名前 ゲイン 15歳
ランク C/F
HP 100% MP 92%
体力 D
腕力 E
知力 E
早さ D-
命中 E-
運 D
所持スキル
走る☆☆ 走る☆☆ 走る 走る 走る
刺突☆☆ 刺突
硬化☆☆ 硬化 硬化
投擲☆☆ 投擲
急所外物理抵抗☆☆
飛躍☆ 飛躍
木登り☆
噛み付き☆☆ 噛み付き
肉体強化
腕力強化☆ 腕力強化 腕力強化
脚力強化☆ 脚力強化☆ 脚力強化
知力強化☆
体力強化☆ 体力強化 体力強化
ナイフ格闘術☆ ナイフ格闘術
棒格闘術☆
短剣剣術☆
避ける☆
魅力☆
鎧防御術
察知
探知
マジックバッグ
魅了
威圧
水魔法☆ 水魔法
ウォーター
ウォッシュ
デリートウォーター
ウォーターバレット
ウォーターウォール
ボーグ
土魔法☆
ソイル
サンド
ストーン
火魔法
エンバー
ディマー
デリートファイヤー
所持品
鉄兜E
肩当E
胸当E
腰当E
上腕当E
脛当E
鉄靴E
皮手袋E
混合皮のズボンE
草編みカバンE
草編みカバン2号E
布カバンE
革製リュックE
木のナイフE
ナイフE
剣鉈E
解体ナイフE
ダガーE
革製ベルトE
小石中496
小石大☆450
石大☆20
冒険者ギルド証 5952269→6297594ヤン
財布 銀貨12 銅貨11
首掛け皮袋 鉄貨31
マジックボックス
各種お宝
冊子
筆記用具と獣皮紙
奴隷取り扱い用冊子
寸胴鍋
お玉
コップ
皿
カトラリー
木ベラ
石炭100ナリ
ランタン
油瓶0.5ナリ
着火セット
ロープ
中古タオル
パンツE
奴隷
エリモア
アンテルゼ
スキルチップ
ウサギ 3022/4391
ウサギS 0/1
ウサギG 0/1
ハシリトカゲ 2056/3166
ハシリトカゲS 0/1
ハチ 1742/2859
ハチS 0/1
カメ 2000/3459
カメS 0/1
ヨロイトカゲS 0/2
石 4/1861
石S 0/1
スライム 1023/2024
鳥? 213/1360
トンビS 0/4
サル 715/857
ウルフ 19/1070
ワニS 0/1
クマ 0/1
蝶 0/204
花 0/161
花G 1/1
腕 440/541
腕S 0/1
腕G 0/1
脚 549/650
脚S 0/101
脚G 0/1
頭 475/576
体 422/523
体S 0/1
体G 0/1
棒 526/627
ナイフ 128/520
ナイフS 0/1
短剣 12/232
鎧S 0/1
袋S 0/1
水滴 157/394
水滴S 0/1
立方体 175/275
火 3/4
魅了目S 0/1
威圧目S 0/1
頭三本線S 0/1
頭三本線G 0/1
未鑑定チップ 1000
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そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
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この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
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ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
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えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
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カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました
おすし
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買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。
※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。
※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・)
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【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する
影清
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英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。
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※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。
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悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
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とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
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※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
異世界で魔法使いとなった俺はネットでお買い物して世界を救う
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30歳働き盛り、独身、そろそろ身を固めたいものだが相手もいない
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転生してしまったので服チートを駆使してこの世界で得た家族と一緒に旅をしようと思います
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