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城勤め

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「な、アルア様、お帰りなさいませ」

「ち、カケル様いらっしゃいませ」

「むぅ、お茶を用意致します」

 俺を刺せなかったのが悔しいのか、言葉の棘を刺しに来るメイド達。そんな事するなら此方にも考えがある。

「あ~~あ、折角ダンジョンフルーツ持って来たのにな~。も~帰ろっかなぁ~」

「「「お寛ぎ下さいませ!」」」

腰を直角に折って頭を下げるメイド共。現金なものである。

「アルアは顔見せしておいで」

「はい。ですが、カケル様は?」

「ハークかブルランさんが来る迄待つけど」

「とか言って、致すのでしょう?」

「致しません。他国の王に刃物グリグリして来るメイドにグリグリしてやるちんぽなんてありません。致すにしても、先に仕事をしてからです」

「…まあ、そう言う事でしたら」

アルアをハグして送り出す。俺がソファーに座っても、メイド達は今の言葉を聞いてからか部屋の隅に整列して待つ。仕事の時は仕事する奴等だ。

「エルシド・ゴモランッ入り申す!」

ノックがあり、部屋の外からでも聞こえた通り、エルシド・ゴモランがメイドに連れられ入室する。

「久しぶりだな」

「うむっ。カケル殿、否、陛下とお呼びすべきであった。失敬」

何で城にエルシドが?と思って聞いたら、昇進して隊長総括になっちゃったんだと。現場仕事が天職だと言っていたエルシドなので、城勤めは少し物寂しいと言う。
で、ハークの政務が終わる迄の間、場繋ぎに来たそうな。

「ハーク王はどんな仕事してんだ?」

「は。今は各都市の予算を」

「一人にやらせる仕事じゃ…ああ、それでブルランさんも駆り出されてるのか」

「左様であります」

「先に仮の認可出して、事後で確認してんだろうなぁ」

「儂には分かり兼ねまする」

見た目没なのは予めブルランさん辺りが弾いてるんだろうけど、何方にしても一人でやる仕事じゃ無いんだよな。王政の短所の一つだ。

「切り上げて昼…って感じだろうし、外にでも出るかね」

「それでは増設した鳥舎をご覧なさりますか」

「外と言ったら、コレだろ」

俺はドーンドゥールで売りそびれたトカゲ頭の剣を出す。エルシド・ゴモランは目を見開いた。

「おほっ、お供致しますぞっ」

少々お時間頂くと、部屋を出て戻って来たゴモランは腕脚頭を鎧で固め、剣を二振り携えていた。一般兵の支給品みたいなソレ等は、その場にある物をある物合わせで着けて来たように見える。胴鎧は無かったんだろうなぁ。ウキウキ顔のエルシドと、お外に向けて《転移》した。


「うほほっ!久々の外じゃあ!!」

「どんだけ軟禁されてたんだよ…」

 嬉しがり方が半端無い。両手の剣を振り回し、毒を捨てに行った時のジョンを彷彿とさせるエルシドは、ズカズカと足を踏み鳴らして森の中を闊歩する。それこそあの時のジョンと一緒で、魔物なんて近寄りゃしない。

「ゴモランさん、魔物を寄せてやるから静かにな」

「う、うむ。そうか、では頼むぞ陛…カケル殿」

内外での対応の変化に戸惑うエルシドだが、剣を構えて静態する。そんな急には来ないから、何時でも飛び掛れますなポーズは止めてくれ。《感知》で見回し…居た居た。一匹だけに《集結》を掛けた。

「鈍ってるだろうし、先ずは一匹」

「このエルシド・ゴモランッ!城勤めであっても鍛錬を欠かした事あり申さんっ!って、うおあっ!?」

森から現れた白い巨体にエルシドは驚いた。スノーライガーでもかなりデカい個体だったからだ。まだ三十ハーン程の距離はあるが、木が邪魔をして無ければ既に必殺の間合いと言っても良いだろう。《集結》を解くとエルシドの気配に呼応して唸り声を上げノシノシと、堂々と言う表現が一番しっくり来る姿で寄って来た。抱き着きたい。撫で回したい。

「殺さない事。殺されない事。危なくなった時点で負けだからね」

「む…確かに。ハーク王の御前に死体を晒す訳には行かんな」

スーッと大きく息を吸う。

「儂は!ミソプファンティア衛兵隊総括!エルシド・ゴモランであるっ!!」

楽しそうで何よりであるっ。




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