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しおりを挟む「でさ、お前さん。オレ等もコッチに住んじゃダメかい?」
「広過ぎて寂しくなっちゃうしさ」
ワーリンが提案しキキラが続く。シトンとアズ、セカンドハウスに住む者の総意であるようだ。
「ダメなもんか。入浴施設への直通門もあるし、冒険者するなら此処から通えば良い」
人が住まなくなって魔物が湧いたり野盗の巣になったり、風化してしまう可能性があるとアズは言う。風化については殆どリュネが作ってるので気にする程では無いし、《結界》張れば人も魔物も入れまい。だが汚物を処理してくれている蟹やタマゲル達がお腹を空かせてしまう事は気掛かりだ。
「でしたら皆でセカンドハウスに住みましょうか」
そう提案したのはテイカ。引越ししてこの島を捨てると言う事では無く、そろそろ島の住居を全体的に直すべきでは?との提案だ。
「母屋も使ってないし、集合住宅は半分以上空いてるからなぁ。今の俺ならもう少しキレイに地均し出来るし、悪い提案では無いと思うが。皆はどう思う?」
一番環境が変わるであろうラビアン達は今の居住環境に慣れてしまっているが、補修の頻度が上がっている事には理解を示す。人種は新居に住んでいるが、食堂迄の距離があるので距離を詰められたら良いとの意見。雨の少ないシルケだが、降る時は降るからな。龍は自分の巣が欲しいと言うのが二人。何時も焼き部屋で寝てる二人だ。暖かくしてお菓子焼いてくれたら尚良しだと言う。
「では明日から少しずつ、セカンドハウスを住める状態にして行こう。それ迄に島の家の設計を考えるよ」
話が決まり、ブチ姉妹達セカンドハウスの住民は戻って行った。
「ずっとあるって思ってた」
イゼッタの本音が漏れる。イゼッタの叔父殿が住む城も直し直し使ってるし、貴族は長く使いたいモノなのだろうか。
「今度の家の廃物処理は魔石を使おうと思う。通路も少し暗かったし、そう言うのも見直したいな」
「…分かった」
「それなら、子供達の遊び部屋も欲しいです!崖から転がると危ないですからね!」
「お外の遊び場もご用意出来れば、と」
島の形を変える大規模改修になりそうだ。
翌日。セカンドハウスで少年隊とお世話係の見送りをした。対岸に渡り、魔動車で森の道を消えて行く彼等と、巣立ちする鳥を重ねてしまった。必ず帰って来い。そう願わずに居られない。そして本日から女達がセカンドハウスに通い、大掃除と物資の運搬に取り掛かる。とは言え島にある物を片っ端から持って行く訳では無い。食事の殆どは入浴施設で作っているので使ってない炊事道具と洗濯機、各自の荷物程度の物。そして転移門くらいだ。寝具や消耗品は新造したり新調したりする。
「パパに言ってたっくさん仕入れてもらいますねっ!」
シーツも雑木で済ませようと思ったんだがな…。逆に雑木シーツを売り付けてやろうか。
朝の仕事を終えたら風呂場の二階で図面引き。先ずは島の地形図を三面図で描く。川や滝、沼に畑。ミスリル鉱山。分かる物を描いて行く。二ハーン刻みで等高線を引いて疲れ果て、俺は部屋から逃げ出した。
「誰か…」
皆何処かで仕事してるのだろう。誰も居ない。
「あ、ああ…かけ…さま…」
「ペルマが居たか…。おっぱい吸わせて…」
成長したのか学習したのか、片言の言葉を発せるようになったペルマが食堂で待機してたので甘える事にする。ちゅぱちゅぱ揉み揉み。疲れた手と頭と精神を癒した。
「なにしてる」「ナニしてる」
微妙にイントネーションが違うステレオが聞こえて、俺はペルマから顔を離す 。イゼッタとネーヴェだ。
「島の地図描いてたら心折れたんだ」
「見たい」「みして」
見たいと言うなら見せてやろう。俺の労力の結晶を。二人を連れて風呂場の二階へ向かう。ネーヴェは地図の事なんて丸っきり分からないだろうが、イゼッタは領主家でもあったので地図の価値は理解している筈だ。ネーヴェは大きさに、イゼッタは正確さに声を漏らした。
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