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只働き

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「なあカケル、ちと仕事を請けねぇか?」

 遅れて来た男が後ろに控えていた女の子に指示を出し、俺に一枚の紙ペラを受け取らせる。

「ん?サライプラマ?ダンジョンの依頼ならサライプラマに貼り出せば良いだろう?下手に潜らなきゃ十本槍とか居るだろうし」

「説明してもよろしいでしょうか」

「美人の願いとあらば」

椅子を二つ出し、一つに座る。もう一つにギルマスが座ろうとするので《収納》し、再び出して女に座るよう促した。

「カケルェ…」

「話をするモンが座る流れだろ?」

さて仕事。美人秘書の話を聞いて、メット越しに顔を歪めた。

「あ、あのさ。今、俺がどんな顔してるか想像出来る?」

「いえ。しかし彼処はダンジョンで、あの木は魔物です」

「サライプラマで食ってる冒険者の総意…じゃ絶対に無いよな?」

「依頼者はサライプラマを治める領主家ですが、一介の冒険者では口出し出来ませんよ」

「王にチクッちゃうぞ?」

「カケル様でもそれは…」

「俺、宰相の姪孫を貰ってるから。因みに俺の爵位は国王だよ」

「……」「お前、成り上がったな…」

国王相手にお前呼びとは肝が据わってるな。

「まあ、王籍なのは置いといて、サライプラマはあの木のお陰で潤ってんだ。取り下げないと大変だぞ?」

「そんな事言ってもよ、もう募集は始まってんだ。後二日しか無ぇし、王様に言った所で間に合わんだろ」

「俺が急げば良いんだろ?只働きさせやがって」

金の振込を指示すると、その場で《転移》した。場所は勿論謁見の間だ。

「誰だ貴様っ!!」「曲者だ!」「敵襲!敵襲ーっ!」

まあ、そうなるよな。だが此方も折れん。《威圧》を放って動きを止めるとメットを外し、浅く腰を折った。

「急な来訪申し訳無い。とにかく急を要するので礼を失した」

「お主…、否、貴殿はカケラント王では無いか!?」

「カケル殿か。トリントンは良くやって居りますかな?」

「宰相殿、彼女は素晴らしい働きをしてくれていますよ。一国の宰相並です」

「皆の者、動ける者は剣を収めよ。動けぬ者もな」

王の言葉に《威圧》を解いてやる。王の言う事をちゃんと聞いて、大人しく収めているな、良し良し。

「カケル殿、火急の用とは如何に」

「コレは本日、エディアルタの冒険者ギルドにて見付けた依頼書である。この依頼が成された場合、サライプラマからの税収は激減する事となる。この依頼を立ち上げたのはサライプラマの領主であり、国益を害する事案として告発する物である」

依頼書を宰相に渡し、説明する。

「カケル殿。恥ずかしながら問うが、木のモンスターを殺した所でダンジョンであるならばまた湧いて出るのでは無いか?」

「湧いて出て、倒す前と同じ姿、同じ気性なら良いがね。自分を殺した相手に優しく出来るかどうか、だ」

「人が優位に立てば良かろう」

「立てれば、ですな」

王の意見は人には無理だ。

「そのモンスターを倒せばもっと大勢の冒険者が来られるのでは無いか?」

「一人五万ヤン支払って、地下二十階に行ける者に限るが?四人で二十万。十一階で一日働いてヘマこくと足が出ると言う。二十二階で一泊する者は六十万以上稼いでから外に出るそうだ。一人当たり五万じゃやはり足が出るからな。それに、限定的ではあるが、木のモンスターからはこんな物を手に入れられる」

ダンジョンフルーツを取り出して、二人に見せてやる。デカい蜜柑な見た目の苺味だ。ちょっとケミカルな味してるので俺は少し苦手でずっと取ってあるのだ。

「それは?」「果実でしょうか」

「回復力のある果実でちんぽビンビンになる。王家には嬉しい果実だな」

「言い値で買おう」

「コレが二度と手に入らなくなる」

「…分かった。宰相、書状を」「はっ」

宰相がメイドを呼び付け、書き物セットを持って来させる合間に苺味蜜柑をカットする。毒味代わりに一口…、かき氷のシロップに、フリーズドライの苺を入れた感じ。酸味がキュッと来て、やはり苦手だ。




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