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目に悪い

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 街のお偉方との話は表面上は纏まったと言う。島の取り合いは改築後に勝手にやってもらうとして、早速作業に取り掛かる事となった。元ダンジョンへと移動した俺とリュネに、見物人のダールッター。

「二人でどうにかなる物なのかい?」

「底の見えない穴にしたいくらいですねっ」

ダールッターの言葉に答えたリュネは、音も無くダンジョン周辺の地面を切り取った。鼻息荒いリュネに、ダールッターな声も上げられず固まるしかなかった。

「見物してても良いが、中に入ると死ぬからな?」

「そ、そうだね。私は飛べないから、此処で見守っておくよ」

リュネと二人、降りてって、横穴を塞いだり階段降り口迄の通路を掘り直す。そして階段部屋となるスペースを空けた。更に、内部はもう一回り広くするので補強の為壁を固めておいた。
階段ユニットを出して地面との高さを見る。階段ユニットの方が多少低いが、土台を付ければ問題無いだろう。

「カケルさぁん、塞ぎますよぉ~」

「あーい」

天井を煉瓦で塞がれて真っ暗。《感知》で見ながら作業を続ける。上り階段を中心に空間を広げると、リュネが煉瓦で補強してガッチリ固めてくれた。更にギルド出張所のスペースを掘り、男女別浴室や出張所の壁を建てて行く。

「明かりはどうします~?」

「使い切れなかったゲルと光の属性魔石で済ませようかと思ってる」

「クリスタル、作りましょうか?」

「削られて売られたら嫌だから安いので済ますつもりだよ」

練り練りして固めたゲルを天井と壁の上の方に貼り付けたら、リュネに白く濁る迄荒らしてもらう。その間に手持ちに無かった光の属性魔石を作る。そろそろミズゲル製品を卸さないとまた転売されそうだよな。

「光の精霊ミティオー…うっ」

お椀を準備し核に魔力を込めて、魔法を付与しようと呪文を唱えていたら突然目の前が光った。右目が…。

『手伝ってくれるのか?』

『肯定』

明滅しながらふよふよと浮く光の粒に《念話》で話し掛ける。言葉では無く意思が伝わって来た。それにしても此奴、まだ俺の体にくっ付いてたのか?その割に島民には見付からない。龍にも指摘された事が無い。

「あら。またその精霊ですかぁ」

「手伝ってくれるそうだ」

光と《念話》に気付いたリュネが飛んで来るが、そのまま通り過ぎてった。他の場所の作業の序に寄っただけだったみたい。光の精霊は仄かに光る砂粒状の魔石に潜り込むと、ビカッと光って上がって来た…目に悪いぜ…。

『ありがとう。助かったよ』

ふよふよクルクル俺の周りを明滅する精霊で右目が馬鹿になりそうだ。目を閉じて《感知》だけで作業しよう。天井と壁に張られ、表面を荒らされたクリスタルモドキに光らせた砂粒を埋め込んで行く。広場、出張所、通路、階段部屋、戻って上り階段と明るくし、最後に浴室へ向かうと更衣室と壁、浴室と浴槽が出来上がっていた。ルドエにあるシンプル浴室と同じ構造で、全て煉瓦で出来ていた。

「もうそこ迄出来てたか」

「後は、お湯と排水だけですかねぇ~」

「そっちの魔石は大きい方が良いよな」

で、取り出したのはネーヴェの元巣で獲って来た魔石。デカいブフリムのヤツ。火と水で四つ作り、浴槽の壁に貼り付けた。

「洗い用のお湯も欲しいな」

「じゃあ、こうで~」

魔石を仕込んだ壁の下ににますといが生え、魔力を流すとお湯が出て、桝に溜まって樋へと流れてく。桝から溢れたお湯は浴槽へ。

「ちょっと熱いかな?俺は適温だけど」

「調整しますので排水をお願いしまぁす」

排水用に浴槽の端に溝を、入口以外の浴室全体の端に浅い溝を掘る。床の溝は傾斜を付けるのが肝だ。傾斜の下側に穴を掘り、浄化のクリスタルモドキを一つ。盗られ無いようスリットの蓋をして、桶と椅子を雑木で練って浴室の隅に積んだ。脱衣場には棚を作り、同じ物をもう片方の浴室に作る。最後に二つの脱衣場を貫通する番台のスペースを作り、銭湯は完成した。



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