上 下
1,487 / 1,519

目に悪い

しおりを挟む


 街のお偉方との話は表面上は纏まったと言う。島の取り合いは改築後に勝手にやってもらうとして、早速作業に取り掛かる事となった。元ダンジョンへと移動した俺とリュネに、見物人のダールッター。

「二人でどうにかなる物なのかい?」

「底の見えない穴にしたいくらいですねっ」

ダールッターの言葉に答えたリュネは、音も無くダンジョン周辺の地面を切り取った。鼻息荒いリュネに、ダールッターな声も上げられず固まるしかなかった。

「見物してても良いが、中に入ると死ぬからな?」

「そ、そうだね。私は飛べないから、此処で見守っておくよ」

リュネと二人、降りてって、横穴を塞いだり階段降り口迄の通路を掘り直す。そして階段部屋となるスペースを空けた。更に、内部はもう一回り広くするので補強の為壁を固めておいた。
階段ユニットを出して地面との高さを見る。階段ユニットの方が多少低いが、土台を付ければ問題無いだろう。

「カケルさぁん、塞ぎますよぉ~」

「あーい」

天井を煉瓦で塞がれて真っ暗。《感知》で見ながら作業を続ける。上り階段を中心に空間を広げると、リュネが煉瓦で補強してガッチリ固めてくれた。更にギルド出張所のスペースを掘り、男女別浴室や出張所の壁を建てて行く。

「明かりはどうします~?」

「使い切れなかったゲルと光の属性魔石で済ませようかと思ってる」

「クリスタル、作りましょうか?」

「削られて売られたら嫌だから安いので済ますつもりだよ」

練り練りして固めたゲルを天井と壁の上の方に貼り付けたら、リュネに白く濁る迄荒らしてもらう。その間に手持ちに無かった光の属性魔石を作る。そろそろミズゲル製品を卸さないとまた転売されそうだよな。

「光の精霊ミティオー…うっ」

お椀を準備し核に魔力を込めて、魔法を付与しようと呪文を唱えていたら突然目の前が光った。右目が…。

『手伝ってくれるのか?』

『肯定』

明滅しながらふよふよと浮く光の粒に《念話》で話し掛ける。言葉では無く意思が伝わって来た。それにしても此奴、まだ俺の体にくっ付いてたのか?その割に島民には見付からない。龍にも指摘された事が無い。

「あら。またその精霊ですかぁ」

「手伝ってくれるそうだ」

光と《念話》に気付いたリュネが飛んで来るが、そのまま通り過ぎてった。他の場所の作業の序に寄っただけだったみたい。光の精霊は仄かに光る砂粒状の魔石に潜り込むと、ビカッと光って上がって来た…目に悪いぜ…。

『ありがとう。助かったよ』

ふよふよクルクル俺の周りを明滅する精霊で右目が馬鹿になりそうだ。目を閉じて《感知》だけで作業しよう。天井と壁に張られ、表面を荒らされたクリスタルモドキに光らせた砂粒を埋め込んで行く。広場、出張所、通路、階段部屋、戻って上り階段と明るくし、最後に浴室へ向かうと更衣室と壁、浴室と浴槽が出来上がっていた。ルドエにあるシンプル浴室と同じ構造で、全て煉瓦で出来ていた。

「もうそこ迄出来てたか」

「後は、お湯と排水だけですかねぇ~」

「そっちの魔石は大きい方が良いよな」

で、取り出したのはネーヴェの元巣で獲って来た魔石。デカいブフリムのヤツ。火と水で四つ作り、浴槽の壁に貼り付けた。

「洗い用のお湯も欲しいな」

「じゃあ、こうで~」

魔石を仕込んだ壁の下ににますといが生え、魔力を流すとお湯が出て、桝に溜まって樋へと流れてく。桝から溢れたお湯は浴槽へ。

「ちょっと熱いかな?俺は適温だけど」

「調整しますので排水をお願いしまぁす」

排水用に浴槽の端に溝を、入口以外の浴室全体の端に浅い溝を掘る。床の溝は傾斜を付けるのが肝だ。傾斜の下側に穴を掘り、浄化のクリスタルモドキを一つ。盗られ無いようスリットの蓋をして、桶と椅子を雑木で練って浴室の隅に積んだ。脱衣場には棚を作り、同じ物をもう片方の浴室に作る。最後に二つの脱衣場を貫通する番台のスペースを作り、銭湯は完成した。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

特殊スキル持ちの低ランク冒険者の少年は、勇者パーティーから追い出される際に散々罵しった癖に能力が惜しくなって戻れって…頭は大丈夫か?

アノマロカリス
ファンタジー
少年テイトは特殊スキルの持ち主だった。 どんなスキルかというと…? 本人でも把握出来ない程に多いスキルなのだが、パーティーでは大して役には立たなかった。 パーティーで役立つスキルといえば、【獲得経験値数○倍】という物だった。 だが、このスキルには欠点が有り…テイトに経験値がほとんど入らない代わりに、メンバーには大量に作用するという物だった。 テイトの村で育った子供達で冒険者になり、パーティーを組んで活躍し、更にはリーダーが国王陛下に認められて勇者の称号を得た。 勇者パーティーは、活躍の場を広げて有名になる一方…レベルやランクがいつまでも低いテイトを疎ましく思っていた。 そしてリーダーは、テイトをパーティーから追い出した。 ところが…勇者パーティーはのちに後悔する事になる。 テイトのスキルの【獲得経験値数○倍】の本当の効果を… 8月5日0:30… HOTランキング3位に浮上しました。 8月5日5:00… HOTランキング2位になりました! 8月5日13:00… HOTランキング1位になりました(๑╹ω╹๑ ) 皆様の応援のおかげです(つД`)ノ

無属性魔法って地味ですか? 「派手さがない」と見捨てられた少年は最果ての領地で自由に暮らす

鈴木竜一
ファンタジー
《本作のコミカライズ企画が進行中! 詳細はもうしばらくお待ちください!》  社畜リーマンの俺は、歩道橋から転げ落ちて意識を失い、気がつくとアインレット家の末っ子でロイスという少年に転生していた。アルヴァロ王国魔法兵団の幹部を務めてきた名門アインレット家――だが、それも過去の栄光。今は爵位剥奪寸前まで落ちぶれてしまっていた。そんなアインレット家だが、兄が炎属性の、姉が水属性の優れた魔法使いになれる資質を持っていることが発覚し、両親は大喜び。これで再興できると喜ぶのだが、末っ子の俺は無属性魔法という地味で見栄えのしない属性であると診断されてしまい、その結果、父は政略結婚を画策し、俺の人生を自身の野望のために利用しようと目論む。  このまま利用され続けてたまるか、と思う俺は父のあてがった婚約者と信頼関係を築き、さらにそれまで見向きもしなかった自分の持つ無属性魔法を極め、父を言いくるめて辺境の地を領主として任命してもらうことに。そして、大陸の片隅にある辺境領地で、俺は万能な無属性魔法の力を駆使し、気ままな領地運営に挑む。――意気投合した、可愛い婚約者と一緒に。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

こちらの世界でも図太く生きていきます

柚子ライム
ファンタジー
銀座を歩いていたら異世界に!? 若返って異世界デビュー。 がんばって生きていこうと思います。 のんびり更新になる予定。 気長にお付き合いいただけると幸いです。 ★加筆修正中★ なろう様にも掲載しています。

処理中です...