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大人と子兎
しおりを挟む六十一階。此処からは、何が出るのか分からない。
「兄貴ってさ、ダンジョン攻略とか興味無いよね~」
「バルタリンドダンジョンの地図書いたのカケルさんでしょ?色んなトコでやったら百年は遊んで暮らせるよ」
「シトン、もっと遊べるわよ」「じゃあ千年」
流石に千年はどうだろう?アズのツッコミにボケ倒すシトンだが、バルタリンドの地図だけでも百年は余裕だ。なんせ愛する龍達のお陰で飯代が掛からないからな。
「とにかく、此処から先は初見なんだ。アズは常に指示に回ってくれ。前後の確認は俺がする」
「オレ達は交代しながら前衛だ。シトンがぶっ放したら前に出るよ?」
「「「うぇ~い」」」「あいよ~」
「アタイも前出た~い」
「シトンは剣拾ったらお願いね」「装備出来たらね~」「それなー」
蜘蛛と牛男のエリアで出た武器は魔装では無かったが、殆ど斧で使い難く、全て《収納》されたのだった。
通路は広く、罠が無いのは助かるが、とにかく敵が多い。そしてデカい。デカいブフリム、デカいゴーラ、牛頭馬頭、トカゲ。小さいのは鳥しか居らんが小さいと言っても翼開長が二ハーン超えている。
シトンが鉄球を放つが、当たったり受け止めてしまって範囲攻撃にならない。確実に一匹か、鳥を巻き込んで二~三匹って感じだ。
「ダニガ!前へっ!」
「「「うぇ~いっ」」」
フレンズと少年隊が交代する。大きさの差は大人と子兎だが、素早い子兎に大人は対応出来ず、次々と煙に変わって行く。コレは大人がズブいのでは無い。子兎が早くて視界に収まらないのだ。俺も経験したので大人達の気持ちが痛い程分かる。イライラするんだよな~。そして焦ってミスをする。壁を背にして背後を守ればどうなるか…。
「良しっ!ふう~~」
「「「シト姐おっつー」」」
シトンのロマン砲が炸裂する。戦い方のセオリーが決まりつつあるな。
「あンた等が居ないと分かっててもさ、確認出来無いと怖いんだからね?」
「ちゃんとお尻触ったじゃーん」
「鎧だから気付き難いんだよ」
「じゃあ今度は抱き着くかー」
「動き止めたく無いんだよぉ」
意思の疎通は大事だな。
ドロップを拾い、戦いに慣れながら先を行く。防具や装飾品は人並みサイズなのに武器は両手持ちでデカい。前一人なら取り回せるが、ダンジョンでは無理と判断し、モーニングスターは継続された。
「なんかアタイばっかり楽しててごめんね」
「シトンは夜目無いし、適材適所っしょ」
「普通に強えしへーきへーき」
「私口しか出してないから。心折れるわよ?」
「アズ姐は心の支え」「ムキムキじゃない」「い~におい~」
フォローされて凹んでら。
七十階。ボス部屋だ。
「女の子だったらどーすんの?」「「どーすんのー?」」
それホント困る。この様子だとデカい雌ゴーラとか出て来そう。覚悟を決めるか…。
「今回は、倒す。で、日を改めて謝罪する」
「よく決断したわね、良い子良い子」
俺、良い子。アズに撫でられ扉を開けた。
「良かったー」
「良かったけど、私達無理よ?」
「「空のは無~理~」」
「俺達殺れるー」「「れるれる~」」
「アタイも何とか、なる…のかな?」
俺の言葉に意見が飛び交う。七十階のボス部屋はフィールドタイプ。空があり、トカゲが飛んでいた。
「皆頑張れ。トカゲならギリギリ人が使える魔装を落とすから」
「「「うぇ~い」」」
「落としてくれたら頑張る」「オレも」
「じゃあ、ダニガとシトンは落とす事に注力して。私も翼を狙うから、当たらないでね?」
作戦が決まり、少年隊が飛び出した。ぴょんぴょんと飛び跳ねてトカゲの注目を集め、視界の外から翼を狙う。翼で飛んでる訳では無いが、痛みがあるのか意識を奪われトカゲは落ちる。そこに地上からのロマン砲が腹を裂き、ボコボコ部隊が斧持って殴り掛かる。剣の方が良いと思うが二人はグラップラーだしな。
挟み込む斧が首を撥ねる。マスク・ジ・エンドだ。
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