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可愛いお花の髪飾り
しおりを挟むその日の夜、夕飯を食べながら明日の予定を伺う。
「明日…?」
「ネーヴェの居たダンジョンに行こうと思うんだけど、予定入れちゃったか?」
「みんなとあそぶ」
「それなら仕方無いな。一人で行くか」
「おみやげ~」
お友達と遊ぶのは仕事より優先だ。しかしお土産も欲しい欲張りさんは唸るように声を絞り出した。
「お土産って、お友達のだろ?何拾ってくつもりなんだ?」
「……アクセサリー、とか」
女子好みのドロップや果物なんかが良いのだろう。ダンジョンフルーツあるのか?無いだろ?
「ネーヴェが倒すと人の子じゃ近付けないようなのが出て来ちゃうし、俺が拾えるだけ拾って来るよ」
「ん、まかした」
任された。とは言え俺が倒したドロップに、可愛いお花の髪飾り、とか、精緻なレースのバングルなんて出た事無いんだがな。良い物は出るが、デザインは雑なのだ。その最たる物が獣母の愛だろう。
明けて翌朝。バルタリンドが雨なので何とかしてくれとブチ姉妹が泣き付いて来た。湖の水位は以前溜池を作って逃げるようにしてあるし、特に問題は無い筈だが。
「男子が暴れるのです」「女子も暴れるのです」
「「片付かないのですっ」」
雨の少ないシルケでは珍しく、二日連続雨模様。それで訓練やら稽古をしてるのだと。友恋フレンズ少年隊は一人を除いて皆前衛。ドッタンバッタン大騒ぎなのは予想に難くない。お出掛けの出鼻をくじかれてしまったが、仕方無い。
「ダンジョーン!?」「「行く行くーーっ!」」
セカンドハウスで暇を持て余す冒険者達に、娯楽のネタを提供すると、餌の無い鈎に食い付く少年隊。
「オレも行く~」「退屈してんだよぉ。旦那ァ~」
フレンズの二人はダンジョンみたいな所で産まれてるから特に興奮はしてないが、殴り合いながら甘え声を出すのは止めて欲しい。
「アズが行くならアタイも行くよ?」
「指示役居ないと継戦出来無くなるんだから、行かない訳にいかないわよ」
友恋はあまり乗り気じゃないが、流れには乗るタイプ。
とにかく七人行く事になり、大急ぎで準備を始める。
「ダート様っ先にお風呂に入って来てください。荷物は見ておきますので」「ニット君も」「ガットちゃん、お風呂から上がったらおっぱいあげますからねー」
「朝より騒がしくなったのです」「暫くの我慢です」
「暫くは帰れないから、二人は施設でゆっくりしたら良いよ」
「「そうするです」」
とは言え長く留守には出来んので、通いで湯治するようだが。
「準備出来たぜっ」
「自分でも確認したのか?」
「当たり前だぜ?」「忘れたら死ぬのぜ」
人任せにしないのは良い事だ。女子達の準備が整うのを待ち、小型UFOで移動した。
「兄貴ぃ、俺もこんなの欲しいぜ~」
「これはスキルで浮かせてるから、お前達では動かせないな」
「魔法でも動くんか?」
「風魔法で行けるだろうが、イゼッタくらい使えないとな」
「ならさ、ハークならやれそ?」
「出来るだろうな。けどハークが知ると城から逃げるのに使うからダメだ。ブルランさんに怒られちまう」
ひそ…ひそひそ…
「止めろよ?王家誘拐は首飛ぶぞ?」
「「「ちぇー」」」
粗方、同じ形の乗り物を作らせようとでもしたのだろう。戦争の道具になっちゃうからダメだと諭しておいた。
「それより旦那ァ、ダンジョンって何処さー」
「コッチの方向って、ダンジョンあったっけ?大陸渡るの?」
「カケルさんが蓋したのがあるよね」
「ネーヴェ様の巣、でしたよね」
「「あそこかー」」「どこだっけ」
「キキラは知らないだろうが、一度皆と行こうとして、行けなくて蓋したダンジョンだよ」
「へー」「思い出せなーい」
「お、見えて来た…けど、あれ、何だ?」
そこに生えていたとぅるっとぅるの塔は姿を隠し、塔を中心に半径五十ハーン程もある足場が塔の高さに迄組まれていた。そしてそこに、人の営みが発生していた。執念とは恐ろしいな。
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