1,467 / 1,519
皆が垂れ流したモノの匂い
しおりを挟む「ふぅ。何だよ?まさか此処の詰め物全部取れとか言わんよな?」
立ち止まり、視線をくれる皆に問い掛ける。
「する必要が出ればやらんとな。だが先ずは階段から、だな」
バシットの指示で掘り進む。真っ直ぐ掘ってダンジョンの壁に突き当たったら左右何方かに掘れば階段があるだろう…との判断だ。階段があれば、更に下があると言う事。道の先が途切れる迄俺達の調査は終わらないのだ。
突き当たり、左に進んで発見した。そこに階段は見えず、光届かぬ真っ黒な穴。転移門だ。ダンジョンで無くなってもこれだけは在り続けている。
「転移門?初めて見たが…」
「私も初めてだよ。切り取って持って帰れないモノか…」
魔法職の二人は直ぐにこれが転移門だと気付いた。俺もリュネの転移門以外では初めてだったんだよな。ギルマスは転移門を移設しようと考えているが、移設しても行先は地下なんだよなぁ。
「俺が先だな」
バシットが名乗りを上げる。先が見えない状況では盾役が人身御供にされるのはままある事。索敵も必要なので俺も同行する。中の安全を確認したら皆を呼び集める事となった。
「カケルッ、何処だ。暗いぞっ」
俺が入るとバシットは真っ暗な中で焦りつつも、盾を構えてじっと耐えていた。
「今来た。穴を掘るからバルディと交代してくれ」
階段に詰まった瓦礫を除去しながら、風の属性魔石を持つバルディを待つ。此処は酸素が薄い。階段を降りたらどうなるか分からんぞ…。階下迄穴を伸ばす前にバルディと風が来た。
「…暑いな此処は」
「少し風を強く出来るか?此処には風の精霊が全く居ない様なんだ」
「魔力を込めて消したら、強めに込めるんだったな」
「人に向けないようにな」
バルディが風の棒を消し、再び起動する。正面から受けると目を開けるのが辛いくらいの風が出た。穴が階下を捉えたら、上で待つ皆を呼んで来る。
「此処は自然の傾斜なのだな」
パントルは明るく照らされた坂道を見て、ダンジョンの構造が変わった事を察した。詰め物の材質が変わったからだろう。百階迄の瓦礫は土が多かったが、此処は岩石が多いのだ。
「ん?そう言えば。さっきは見えなかったから分からんかったが」「入口から傾斜だっただろ」
バルディのツッコミが弱い。酸素の少ない所に居たせいだな。天然洞窟はコレがあるから危険だ。俺は《皮膚呼吸》があるから皆よりはマシだ。何より皆が垂れ流したモノの匂いを嗅がなくて済む。
「百一階。何処迄あるのか分からなくなってしまったな」
「それに瓦礫と通路との差が分から無くなったが、カケルはどうやって見分けたんだ?」
アーチヴとダールッターが寄って来て、それぞれの感想を述べる。
「硬い場所迄掘っただけだ。此処は平面だしこの瓦礫の材料にしたのだろうね」
「成程な」「真っ暗なのに凄いな」
《魔力視》と《暗視》も使えると教えてやったら感心してた。《感知》で事足りるからあまり使ってないけれど。
平面に削れた床を目印に穴掘りを進めて行く。削られた石膏や明礬が明かりを反射して少しキレイだ。そして愛する者を痛め付けた跡地を通り過ぎ、壊されて跡形も無い隠し扉を進むと、天然洞窟から再び遺跡型の通路に変わる。
「足音が変わったか」
「ああ。床が変わったな」
「カケル、少し広めに空間を取ってくれないか?」
ダールッターの提案に乗って、通路全体が露出するくらいの広さを取って進み、破壊されたドアを発見する。少し掘り進めて通路では無い事を確認すると、壁沿いに空間を広げながら行き止まりの部屋であるのを確認した。
「コレは、ダンジョンコアの台座…だね」
部屋全体を空間にしていると、ダールッターは瓦礫の中からダンジョンコアの台座だった物を発見した。
「なら、此処が最奥って事だな」
「そうだね。ホッとしたが、残念だよ。冒険者の頃は此処に来るのを目標にしてたからねぇ」
「来れただけでも良いじゃ無えか」
「ハハ、私ならコアを破壊なんてしないけどね」
盾を仕舞ってお椀を出すバシットに、ダールッターは心境を吐露する。
0
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
キャンピングカーで往く異世界徒然紀行
タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》
【書籍化!】
コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。
早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。
そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。
道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが…
※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜
※カクヨム様でも投稿をしております
左遷されたオッサン、移動販売車と異世界転生でスローライフ!?~貧乏孤児院の救世主!
武蔵野純平
ファンタジー
大手企業に勤める平凡なアラフォー会社員の米櫃亮二は、セクハラ上司に諫言し左遷されてしまう。左遷先の仕事は、移動販売スーパーの運転手だった。ある日、事故が起きてしまい米櫃亮二は、移動販売車ごと異世界に転生してしまう。転生すると亮二と移動販売車に不思議な力が与えられていた。亮二は転生先で出会った孤児たちを救おうと、貧乏孤児院を宿屋に改装し旅館経営を始める。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる