上 下
1,466 / 1,519

お茶漬けサラサラ

しおりを挟む


 ダンジョンで無くなったこの洞窟でも、ダンジョンの頃から居たモンスターは存在する。ミズゲルだ。ミズゲルとは言ったが、正確にはミズゲルでは無いと思う。水棲じゃ無いしな。穴を掘り抜き、見付けてしまったハズレルートにはコイツ等が居て、逐一潰して行く事になった。

「このランクでゲルを相手にするとはな」

盾の縁をミズゲルに突き刺しバシットは愚痴る。外のと比べて愚痴る程弱くは無いのだが、Aランク冒険者達にとっては敵にもならない。

「水魔法はとことん相性が悪いのだ。済まない」

Cランクのパントルは此処では専ら照明係。適材適所だから問題無い。
そして水面状に固まった明礬。コレにも一度足止めを食らった。都市復興を目論むダールッターが、水晶なら金になるのではと考えたのだ。だがコレは水晶では無い。パントルが水晶との違いを説明してくれなかったらもっと粘られていただろう。残念がるギルマスに、焼いて野菜と一緒に塩漬けすると色味が良くなると教えてやった。糠漬けでお茶漬けサラサラしたいぜ。

 ダンジョン内部の丁寧な探索と魔物の排除をして、九十階のボス部屋で本日の業務は終了となる。進みが遅く、モンスターを殲滅したがミズゲル?の核が獲れただけ。それでも体を動かせた前衛達は満更でも無い顔で装備を整備する。

「私も派手に暴れたいモノだな」「確かに。だが役割は全うするのがパーティーと言う物」

パントルの愚痴にダールッターは共感し、反論する。パントルも元軍属、分かっているのだろう。意見する事は無かった。

「その点お前は便利だな。前も後ろもこなせるんだから」

「だな。カケル、お前剣も扱えるんだろ?」

バルディが俺に話を振って来た。剣を鞘に収めたアーチヴも、思った事を口にする。

「剣は素人だよ。人に手持ちをくれてやる程度だし。今の得物は投石と棍棒と、後はダガーくらいだな。よく剣が使えると思ったな」

「投石の時の腕の振りが常人とは思えなかったのでな。そうか、棍棒を振り回していたか」

普通の人と同じ様に投げても球威が全く違う。野球あるある。バッティングも然りだ。

「コッチも整備終わったぞ。飯飯っ」

盾を仕舞ったバシットが、お椀とスプーンに持ち替えて寄って来る。俺のを借りパクしているのだが、気に入ってる様だし、くれてやるか。スープをよそって、飯だ飯飯。

「この分だと、明日は百階だな」

「んぐ、百階で終わるのか?」

「大体のダンジョンは百階前後で最奥だと言われているね。記録自体少ないが」

バルディの呟きを相棒が問う。それに答えたのはダールッター。

「むぐ、そんなに、はぐっ…少ないのか」「喋るなら食うな」

「最近では、カケルの言っていたバルタリンドだな。報告が無いのもあるかも知れんがね」

「俺を見られてもなぁ」

「此処の最深階に到達したパーティーがね、君の名を出していたのだよ」

「?…ああ、人妻乙女か」

それで合点がいった。詰め物されてなかった頃の深層の情報を持ってたのは彼女達が報告したからか。

「女か?」「女だろ」「女、か…」「早く終わらせねばな」

パントルの一言で、男達は何かを決心したようだった。

 寝て、夜警して、寝て起きる。そして朝飯を摂り、皆気合いを入れる。今日で最奥に行く事を肌で感じ取っているからだろう。慢心せず、ハズレルートの確認もしながら下へと進み、干し肉を齧る頃合には百階のボス部屋に辿り着いていた。

「この斜面は階段か!?」

「扉も破壊されているみたいだぞ?」

前を行くパントルとバルディは、それぞれが見た物に対し感想を述べる。両翼五ハーン程の幅でしか道を広げられないが、斜面に崩れた瓦礫、そして倒れた扉を見ればそう考えるのが普通だろう。

「ダンジョンコアを破壊した後、辺りを壊し、土を詰めながらながら上がって来たみたいだな」

ダールッターの予測は正しい。皆口を閉ざし掘り進んでる俺に視線を送る。早く掘れってか?





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

引退したオジサン勇者に子供ができました。いきなり「パパ」と言われても!?

リオール
ファンタジー
俺は魔王を倒し世界を救った最強の勇者。 誰もが俺に憧れ崇拝し、金はもちろん女にも困らない。これぞ最高の余生! まだまだ30代、人生これから。謳歌しなくて何が人生か! ──なんて思っていたのも今は昔。 40代とスッカリ年食ってオッサンになった俺は、すっかり田舎の農民になっていた。 このまま平穏に田畑を耕して生きていこうと思っていたのに……そんな俺の目論見を崩すかのように、いきなりやって来た女の子。 その子が俺のことを「パパ」と呼んで!? ちょっと待ってくれ、俺はまだ父親になるつもりはない。 頼むから付きまとうな、パパと呼ぶな、俺の人生を邪魔するな! これは魔王を倒した後、悠々自適にお気楽ライフを送っている勇者の人生が一変するお話。 その子供は、はたして勇者にとって救世主となるのか? そして本当に勇者の子供なのだろうか?

もふもふで始めるVRMMO生活 ~寄り道しながらマイペースに楽しみます~

ゆるり
ファンタジー
ようやくこの日がやってきた。自由度が最高と噂されてたフルダイブ型VRMMOのサービス開始日だよ。 最初の種族選択でガチャをしたらびっくり。希少種のもふもふが当たったみたい。 この幸運に全力で乗っかって、マイペースにゲームを楽しもう! ……もぐもぐ。この世界、ご飯美味しすぎでは? *** ゲーム生活をのんびり楽しむ話。 バトルもありますが、基本はスローライフ。 主人公は羽のあるうさぎになって、愛嬌を振りまきながら、あっちへこっちへフラフラと、異世界のようなゲーム世界を満喫します。 カクヨム様にて先行公開しております。

貴方にとって、私は2番目だった。ただ、それだけの話。

天災
恋愛
 ただ、それだけの話。

【完結】8私だけ本当の家族じゃないと、妹の身代わりで、辺境伯に嫁ぐことになった

華蓮
恋愛
次期辺境伯は、妹アリーサに求婚した。 でも、アリーサは、辺境伯に嫁ぎたいと父に頼み込んで、代わりに姉サマリーを、嫁がせた。  辺境伯に行くと、、、、、

亜人至上主義の魔物使い

栗原愁
ファンタジー
人生に疲れた高校生――天羽紫音は人生の終止符を打つために学校の屋上に忍び込み、自殺を図ろうと飛び降りる。 しかし、目を開けるとそこはさっきまでの光景とはガラリと変わって森の中。すぐに状況を把握できず、森の中を彷徨っていると空からドラゴンが現れ、襲われる事態に出くわしてしまう。 もうダメかもしれないと、改めて人生に終わりを迎えようと覚悟したとき紫音の未知の能力が発揮され、見事ドラゴンを倒すことに成功する。 倒したドラゴンは、人間の姿に変身することができる竜人族と呼ばれる種族だった。 竜人族の少女――フィリアより、この世界は数百年前に人間と亜人種との戦争が行われ、死闘の末、人間側が勝利した世界だと知ることになる。 その大戦以降、人間たちは亜人種を奴隷にするために異種族狩りというものが頻繁に行われ、亜人種たちが迫害を受けていた。 フィリアは、そのような被害にあっている亜人種たちを集め、いつしか多種多様な種族たちが住む国を創ろうとしていた。 彼女の目的と覚醒した自分の能力に興味を持った紫音はこの世界で生きていくことを決める。 この物語は、限定的な能力に目覚め、異世界に迷い込んだ少年と竜の少女による、世界を巻き込みながら亜人種たちの国を建国するまでの物語である。

「僕は病弱なので面倒な政務は全部やってね」と言う婚約者にビンタくらわした私が聖女です

リオール
恋愛
これは聖女が阿呆な婚約者(王太子)との婚約を解消して、惚れた大魔法使い(見た目若いイケメン…年齢は桁が違う)と結ばれるために奮闘する話。 でも周囲は認めてくれないし、婚約者はどこまでも阿呆だし、好きな人は塩対応だし、婚約者はやっぱり阿呆だし(二度言う) はたして聖女は自身の望みを叶えられるのだろうか? それとも聖女として辛い道を選ぶのか? ※筆者注※ 基本、コメディな雰囲気なので、苦手な方はご注意ください。 (たまにシリアスが入ります) 勢いで書き始めて、駆け足で終わってます(汗

処理中です...