1,465 / 1,519
依存
しおりを挟む今日進めたのは十階分、しかもハズレルートを幾つか端折ってだ。見付けてしまった所は全部調査したが、それ以外はスルー。加減しているのもあるが、穴を掘るのに時間が取られるので一日の進みが十階層程度となってしまうのは仕方の無い事だろう。現在三十階、残り七十階。現在二日目で行きで七日。帰りは急いで五日として十四日。遅れが怖くなる気持ちも分かる。
「カケルよ、お前スープはどんだけ持って来たんだ?俺はもうそれが無いと飯を食った気がしねぇ」
装備の整備を終えたバシットがスープの前にドカッと座り湯気を吸う。遠征中に温かい物を食う習慣が無かっただけに依存度は高そうだ。
「食べ盛り六人が日に二食として…そうだな。後五日分はあるな」
「なん…だと…」「宿屋の飯並のスープが…」「戻るか。スープを作って出直しだろう?」
「落ち着け。材料はあるから問題無い」
此処は依存者だらけだ。若しくは女達が何か混ぜたか?全員の整備が終わったので飯を食う。女達が愛情込めて作ったスープは後五日分。有難く食え。
食後、高鼾の馬鹿を放って少しだけ先の事を話し合う。調査の優先度を、最奥に行くと言う事に重きを置く方針としたのだ。空洞に出ても何も無く、ダンジョンで無くなった事も確認出来た。となれば後は最奥を確認するだけとなった訳で、五人はその案を了承。バシットは起きてから説明すれば良いとのバルディの判断となり、夜警しながら寝た。
「皆が話し合ってそう決めたのなら俺は従う迄だ。コイツが飲めなくなるのも困るしな」
スープ片手にサラりと言うバシット。決断が早い。食事を平らげ片付けると、穴掘りを進めて行った。
「空洞だが、敵の気配は無いな。カケルはどうだ?」
「同意だ。死んでるのも無いな」
「お前そこ迄分かるのか」
バルディの質問に答えると少し驚かれるが、それだと死霊系の敵に気付けないのでは無いか?俺遭った事無いけど。バルディ曰く、死霊系のモンスターは墓場や死体の近くに湧いて出ると言う。そう言や墓場ってイゼッタの家族の所しか行った事無かったわ。そんな感じで見付けてしまった空洞も索敵だけでスルーする事になり、進行速度が少し上がり、今日はちょっと残業して二十階分降りる事が出来た。
「三日で半分なら余裕が出るね」
「話は後だ。先ずは飯飯っ」「食ったら直ぐに寝ちまうだろうが」
ダールッターの言葉を遮ってスープを強請る馬鹿を突っ込むバルディ。もう慣れたモノだ。敵も無く、唯潜るだけの仕事だが、何だか冒険してるみたいで、ちょっと楽しいな。
その後一日半を掛けて八十階に到達。ボス部屋を掘り進んで下へ向かうが、やはり嫌な感じはしなかった。してたら普通の冒険者ならおかしくなっているだろうし。
「よくもまあ、こんな大部屋に詰め物したモンだ」
「だな。ダンジョン潰す気満々、と言った所か」
「それだけ執念があったのだろうな」
装備を外し、整備を始めるバシットに、同調するツッコミ担当。そこへ照明係が乗っかった。
「執念か。何に関しての執念だろうね」
ギルマスは動機を考えつつ、皆にも予想を求めた。
「ダンジョンに親でも殺されたか?」
鎧を脱いだアーチヴがお決まりの台詞を放つ。親でも妻子でも仲間でも、大事な誰かに対する思いは強い。
「俺達にはよくある事だな。街を潰すのが目的かも知れんぞ?」
最初に出たのが正解なので、他は捻らなければならない。バシットは捻った結果、陰謀論を導き出した。
「街を担う者の一人として、恨まれるような事はしてない…と思いたいね」
「勿体無いな。この街の女は若くても積極的だし」
「何が積極的何だ?」
「どう積極的なのだ?」
「何処で積極的なのか」
「幾らで積極的なのだ?」
「誰が積極的なんだい?」
グイグイ来るなぁ。断欲生活も長くなって来たし、そろそろ金玉パンパンなのだろう。勿論俺もパンパンなのだが。
0
お気に入りに追加
134
あなたにおすすめの小説
魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~
月見酒
ファンタジー
俺の名前は鬼瓦仁(おにがわらじん)。どこにでもある普通の家庭で育ち、漫画、アニメ、ゲームが大好きな会社員。今年で32歳の俺は交通事故で死んだ。
そして気がつくと白い空間に居た。そこで創造の女神と名乗る女を怒らせてしまうが、どうにか幾つかのスキルを貰う事に成功した。
しかし転生した場所は高原でも野原でも森の中でもなく、なにも無い荒野のど真ん中に異世界転生していた。
「ここはどこだよ!」
夢であった異世界転生。無双してハーレム作って大富豪になって一生遊んで暮らせる!って思っていたのに荒野にとばされる始末。
あげくにステータスを見ると魔力は皆無。
仕方なくアイテムボックスを探ると入っていたのは何故か石ころだけ。
「え、なに、俺の所持品石ころだけなの? てか、なんで石ころ?」
それどころか、創造の女神ののせいで武器すら持てない始末。もうこれ詰んでね?最初からゲームオーバーじゃね?
それから五年後。
どうにか化物たちが群雄割拠する無人島から脱出することに成功した俺だったが、空腹で倒れてしまったところを一人の少女に助けてもらう。
魔力無し、チート能力無し、武器も使えない、だけど最強!!!
見た目は青年、中身はおっさんの自由気ままな物語が今、始まる!
「いや、俺はあの最低女神に直で文句を言いたいだけなんだが……」
================================
月見酒です。
正直、タイトルがこれだ!ってのが思い付きません。なにか良いのがあれば感想に下さい。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。
町島航太
ファンタジー
かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。
しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。
失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。
だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。
目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~
白い彗星
ファンタジー
十年という年月が、彼の中から奪われた。
目覚めた少年、達志が目にしたのは、自分が今までに見たことのない世界。見知らぬ景色、人ならざる者……まるで、ファンタジーの中の異世界のような世界が、あった。
今流行りの『異世界召喚』!? そう予想するが、衝撃の真実が明かされる!
なんと達志は十年もの間眠り続け、その間に世界は魔法ありきのファンタジー世界になっていた!?
非日常が日常となった世界で、現実を生きていくことに。
大人になった幼なじみ、新しい仲間、そして……
十年もの時間が流れた世界で、世界に取り残された達志。しかし彼は、それでも動き出した時間を手に、己の足を進めていく。
エブリスタで投稿していたものを、中身を手直しして投稿しなおしていきます!
エブリスタ、小説家になろう、ノベルピア、カクヨムでも、投稿してます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる