上 下
1,451 / 1,519

こっちにおいで

しおりを挟む


「よう兄さん、羽振り良さそうなモンぶら下げて。もう店は決まったのかい?まだならウチがオススメだよ」

 客引きの流れるような売り文句に立ち止まると、餌に群がる獣のように客引き達が集まった。

「お前、店はソコか?」

「へへっ、良い店でしょう?」

「お前のは?」

「ウチはあの、赤く光るランタンが目印でさ」

客引き共の店を聞き、中を《感知》で見る。

「此処は女一人きりか。で、そっちは二人。その奥のも一人。路地の中のは三人か。全員病気持ちじゃあ客も付かんよな」

「へへっ、それだけ売れてるって事でさ」

「そうだぜ。それにウチは一人じゃあ無えですぜ」

「たまたま非番ってだけさあ。呼べばいっくらでも来っから」

「早く河岸を変えた方が良いな。此処のダンジョン、死んでるから」

「兄さん、この街はダンジョン潜る為に来たんだろ?稼げなかったからってクヨクヨすんなって」

「パーッと行きやしょうや」

「…パーッと、ねぇ」

「そうそう、パーッとパーッと」

「お前等の囲ってる女、全員連れて来い。休んでる奴、立ちんぼも、全員だ」

「「「…はい」」」

「それと場所も用意しろ。広い場所だ」

「「「…はい」」」

客引き共に《洗脳》を施し解散させる。億劫だが待つか…。椅子が欲しいぜ。

「兄さん、あンたかい。ウチ等の女ぁ、かっ攫おうって野郎は」

暫く待って、女と一緒に男も来た。無駄に筋肉を付けた用心棒と、無駄に贅肉を付けた店長?男もそうだが女もニヤニヤしてるのは、娯楽に飢えてるのだろうか。

「俺に預けりゃ女達の病気を治してやんぞ?お前等のは治療院で治せ」

「冒険者だからって何でも出来ると思うなや」

「なら、試してやろうか」

筋肉ダルマを指でちょいちょい、こっちにおいでとしてやると、ソイツの首をスパッとした。血を流し過ぎると回復に時間が掛かるので、血は大事に《収納》しておく。
少量の血を流し転がったダルマの首にギャラリー達は固まった。

「コレを治せば俺の力が分かるよな?」

「て、てめぇ…」

「治療費はサービスだ。見とけよ見とけよ~」

《収納》の平面で血の出てない胴体から《収納》を外し、空かさず《治癒》を掛ける。ピューっと少し零れてしまったがそのくらいは問題無い。肉がモリモリ盛り上がり、ダルマの形になって行く。凡そ三リットで形になったら、《収納》されてる血を心臓に送り込んだ。

「良し。どや?」

「だ、旦那…」

「お…俺の、首が…何で、ソコに…」

「あンた!歯があるよっあンたぁ!」

歯の治療はサービスじゃ無かったんだが、治ってしまったモノは仕方無いな。ボディの付いたダルマに群がる女達は肌がキレイだとか歯が生えてるだとかと楽しんでもらえたみたいだ。

「三日後に依頼があるんでな。後二日。治して欲しい女は俺んトコ来たら治してやる。首を落としたりはしないから安心しろ。後金も要らん」

「オーナー、あたし、やるよ」「アタイもっ、歯が生えるなら何でもすんよ!?」

「店長さん、ダメだなんて言わないでね」「このままじゃ、稼げないしさ」

女達のお願いに、店長共は何も言えない。断れば飛んでしまい兼ねん勢いだからだ。

「広い場所は何処だ?案内しろ」

「…はい」

客引きの一人に先導させ、ゾロゾロとその場所へ向かう。そこは倉庫。嘗ては荷物で一杯であっただろうその場所は、今では片隅に積まれる程度になっていた。

「今日から二日、此処に住むから知り合い誘って来てくれ」

女達の元気な返事を聞いて見送ると、残るは男だらけ。

「兄さん、何が目的だい…」

脂肪ダルマの一人が臭い口を開く。

「目的?分かるだろ?」

皆の視線が一点に向かう。見られるなら女の子が良いな。視線が釘付けの男共は言葉の意味を理解してないみたいだ。

「俺はバルタリンドで風呂屋やってんだ。バルタリンドには近づかんでくれ。今回の治療は挨拶とお願いって所だな」

店長共は頭を捻る。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

処理中です...