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垢擦り

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 入浴施設の中ではラビアン達が島の昼食に使う食材を搬入していた。島で作るよりコッチの方が料理に時間を割ける為だ。島に大型焼き器のあるソーサー以外は此方で作って持って行く。

「カケ…カケル様が女を連れて来ました!中小獣人の三人です!」

ラビアン同士の際距離暗号通信はチッチと舌打ちするような発音で行われるが、今日のは直接人の言葉で厨房内に響き渡った。嫌な予感がする。

「カーーケーールーーゥ」

「あーなーたーさーまー」

予感的中。背後の死角から出て来た二人に《並列思考》をフル回転させて対応する。

「成り行きで匿う事になったが妾にはしないぞっ」

「そう言う問題では……おや、貴女、見た顔ですね。何処かの令嬢かしら?」

「あっ貴女様は…、こ、公女殿下!?」

リアはカルーセルと面識があったようで、厨房内の魔素が薄れる。風呂に入って温まりたい。

「私、マキシマリアン男爵家が三女、カルーセル・マキシマリアンで御座います。現在は家から離れ姓を失いましたが、以前に何度かお茶会にてご尊顔賜る栄誉を頂きまして御座います。先程女王陛下との謁見の折、カケル様の奥方様である旨、聞き及びまして御座いますれば、この様な再開の機会を得られるはこの上無き喜びに御座います」

長い。

「貴方様?」

短い。説教三オコンコースになりそう。

「カケル、詳しく」

「依頼を勧誘されて彼女等に話を聞いたらハイネルマールが出す密航船の護衛依頼だった」

「…誰か、ミーネ様を」「はいっ」

イゼッタに強請られて短めに答えると、リアは暫し考える素振りを見せてラビアンに指示を与える。今回の護衛依頼が流れたとしても、他の者を使って推して参る事も出来るのだ。リアの判断は正しい。
しかし、風呂所じゃ無くなって来たな…。ラビアンの誰かがミーネを呼びに行く間、カルーセル、タック、ケーンケーンの三人はリア達に連行されてった。どうか無事で居てくれ。そしてボッチなうな俺が残る。食堂に座ってても自分等の仕事に勤しんでいる為水すら出ない。魔法水飲んで目を閉じた。

「旦那様よ、寝ているのか?」

「寝てた」

 気付けば確り寝ていたようだ。直ぐ横の席にはミーネが居て、俺の手をニギニギしている。

「話は人の子等から聞いた。火の雨でも降らせたら良いか?」

「そうだな。だが世話を受けた恩もある。関係無い者は容赦してやるべきだろう」

「お人好し、と、言うのだったな」

「良い人なんだよ俺は」

「これも惚れた弱み、か。そろそろ食事の時間だ。島へ戻るぞ」

客三人も島に連行されたと言うので俺達も島へ向かった。三人共、無事で居てくれ。

 入浴施設から島へは、施設と島の厨房同士を繋ぐ直通門があり、リュネ達が増設した方の厨房に繋がっている。そこにはミネストパレスとの転移門もあり、施設でバイトする少女達は此処を経由して働きに来てくれるのだ。

「お帰りなさいませカケル様、ミーネ様」「「「お帰りなさいませー」」」

配膳の最中だったようで、ラビアン達が忙しない。ミーネも配膳を手伝うので、俺も倣い、食事となった。
匿われる三人はと言うと、ゲストだからか俺の近くに座らされてる。少しゲッソリしたオーラを纏っている者が一人居て、他二人は行儀良く食事にあり付いている。

「タック、キレイになったな」

「う…、初めてだよ。こんなに体を擦られたの…」

「私達迄服をお借りして、ありがとうございます」

「素晴らしいお湯でした」

三人は俺が寝てる間に風呂に入ったり洗濯していたらしい。タックは垢擦り洗体を施されたようでツルツルピカピカ、ケーンケーンはふわふわだ。巻き毛だったら羊になっちゃうな。

「カケル、今はごはん食べる時間」

「そうだねぇ。イゼッタは食後に何食べたい?」

「…甘いの」「カケル、私も」

「黒糖水と干し芋を用意してもらおうねぇ」

最近俺がマストにしてる干し芋の原料であるレッグルートは、育成環境が良く、リームの魔力が無くても巨大に育ってしまうのでスープの具として毎日消費されている。




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