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心の声

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「カケル様ー、行ってらっしゃいませ~」「奥様達にも報告しときま~す」

 一体何を報告すると言うのか。若干、否、かなり不安に駆られるが、ハリシュの向かう先に同行した。串焼き香る露店街を通り過ぎ、場所は大通りのちょっとお高い宿。俺は直ぐにセカンドハウスのある湖に行っちゃったので一度も泊まった事無い所だ。

「お帰りなさいませ、ハリシュ様。お連れ様は、あ…」

挨拶に出て来た受付は施設の常連さんだ。

「もしかして、施設を薦めて頂けましたか?」

「ええ、其方様は良い湯ですから。店主様はお泊まりで?」

「いえ、依頼に混ざらないか、と誘われましてね。話を伺いに」

「良い仕事となりますよう、祈っておりますわ」

社交辞令を済ませ、酒場兼食堂にて待つ。昼迄時間があるとは言え、一人で円卓に座るのは気が引けるぜ。

「お客様、ご注文は如何なさいますか?」

座って何も頼まないゴミ客に、ウェイトレスは声を掛ける。

「これから話があるから、その中で注文するならその時にさせてもらうよ」

「承知しました…あの、彼処のお風呂の店主様、ですよね?」

「女将さんとの話を聞いてたのかな?」

「あ、いえ、その、ずっと気になってて…」

「湯の質は、大陸一だと自負してるよ。洗濯から乾燥迄してくれる魔道具も無料で使えるし、有料だが食事や甘味も味わえる。食料品店と提携してて、施設内で買い出しも出来るんだ」

「凄いですよね。それに」

視線が刺さる。

「女将さんと一緒にいらしてください。サービスさせてもらいますよ」

「はい…、お願いしてみます」

入口の方で女将が困った笑顔してるので、取り敢えず水だけ頼んで更に待つ。そして漸くガチャガチャと聞こえて来た。

「彼奴か」

俺だ。

「もう飲んでる…」

水をな。

「あんま強そうには見えんけど」

「それ、お前が言う?…あ」

「あ!?」

つい心の声が。

「待たんか。試合うなら話の後だ」

ハリシュが割って入り、メンチ切るチビっ娘を隠す。小さい子って直ぐキャンキャンするよな。

「力は後で見てもらうとして、先ずは参加するか否かだな。俺はカケル。金持ちだ」

俺は立ち上がり、ハリシュが連れて来た四人に名乗る。

「フッ、鞣皮鎧がよくもまあ」「守銭奴ってヤツだな」

「守銭奴なのは間違って無いな。コレの皮も自分で獲ったヤツだし、安く作れるに越した事は無いよな。で、二人のお名前は?」

聞いてもシカトしよる。体に直接聞いても良いんだぜぇ?

「カケル殿、済まない。こっちはディフェンダーのルジェ・バンドン。そっちはスカウトのタックだ。皆、話をするのに失礼過ぎだぞ?」

「…ルジェ・バンドンである」

「タック」

渋々だな。
金属鎧のバンドンは、そこそこお高そうなミスリルのフルプレート。緩衝材を付けて無いのかガチャガチャしてるし、音も貼り合わせっぽいな。だが人の造った物の中では良い方だろう。製作者の技量は確かだ。
名前だけ言って静かになったタックは俺を守銭奴扱いした方だが、お前の服の方がフルプレートより高いだろ。使い古して色褪せてはいるが、コレは役職上当然の事。敢えて汚してる迄ある。だが、魔装だ。何で魔装持ちが二人も居て使い方が分からないんだ?場数は踏んでる筈だろうに。

「ジロジロ見んな」

逡巡してたら怒られちった。

「後で俺のも見せてやるよ。で、其方のお二人は?」

「わ、私はカルーセル。ヒーラーよ」

「…お詫びします。私ケわたくしーンケーンと申します。バックアタッカーを任されております」

「お、お詫びしますっ」

慌てて詫びを入れるカルーセルとケーンケーンは魔法職。どうやら俺の魔力を視てヤバいと思った模様である。
オシャレ度を重視した緑色のコートを羽織るカルーセルは街中では浮きそうだが、森の中では溶け込みそうな色合い。
フードを外し、顔を晒して詫びたケーンケーンは山羊獣人。おっぱい四つあるタイプの人だ。








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